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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.3-144 その手はどこに、伸びている

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…ハルたちがクエストに挑もうとしているそのころ。
 とある山奥に隠されていた研究所は今、壊滅状態になりつつあった。

「…この程度ならば問題ないけど、厄介なの作るのどこにでもいるのかな」
「いや、こんなやすやすゲテモノどもを作るのは、そんなに簡単じゃないはずだ」
「この間のコンピューターの件もそうだけど…人がそう簡単に手を出せる代物はないはずなんだよなぁ」

 爆破、切断、溶解など、ありとあらゆる手段をもって灰燼と化しつつある研究所内を進みながら、三人の人影はそう口にする。

「明らかに、外部からの手が加わっているようだ。この辺の合金の構成も、今の地球文明レベルでは、なしえないものになっているからね」
「そう考えると…もしかして、宇宙人の侵略みたいなものが始まっているの?それはそれでどこかSFな感じのロマンが…いや、攻められているのであればそれどころじゃないけど、」

 今の人類にはありえないような代物もあるようで、それ以外の何者かの干渉を疑う中、一番可能性としてあげられるのは宇宙人。
 宇宙エレベーターも建設されつつある中で、未知の存在が出てきてもおかしくはない。

 ただ、その可能性を影の中の一人が否定する。

「いや、それは無いな。宇宙人関連は、弊社の宇宙外交部門のほうで確認しているからな…いくつかの宇宙人と秘密裏の交渉はあったが、こんなことをしでかす様な輩の侵入は聞いてない」
「いつの間にそんな部門があるんだよ」
「エレベーター建設前には形になっていたかな…ここでの実験をする以上、外部からの干渉が否定できなかったから創設したが、意外と需要があったようで…エレベーター完成式典時には、その発表も同時になるだろう。完成予想も当初より早まったが、実はそのことも関係していたりする」

 既に存在していた宇宙人。
 けれどもその干渉によるものではないようで、むしろ交流をすることにより、他では手に入らないような技術が加わっているようだ。

「そうなると、後は…他の世界の干渉か。既に、列車の運行がされ始めたから、そこからつながってきてという可能性もあるな」
「それが一番あるかもね。使わずに精神面からじわりじわりと侵略するのもいたはずだし」

 何も、物理的な部分からやってくるだけではなく、思考を誘導するなどの方法で手を出してくる輩は星の数ほどいる。
 実際に効果が出るとしたら、その中からわずか程度しかないだろうが…0ではなく、たまにその誘導に引っかかってやらかす輩が出たりするのだ。

 そしてこの研究所も、その関係のものがやらかして出来上がった代物だと推測された。

「クローン技術や遺伝子組み換えまではやれるとして…それ以上に禁忌のものをやらかしているようだからね。人の倫理観はどこへ行ったと言いたくなるけど、元々人じゃない奴らの策略にはまっていたら、そりゃ人の倫理観なんぞ知ったものかってなるか」
「でもそれ、干渉がなくてもまともにやっちゃう人もいると聞くよ」
「それはそれで、人の恐ろしいところでもあるか…」


 何にしても、ここが活動することはもう二度とないだろう。
 すべてのデータやサンプル、その他余すところなく破壊され尽くし、散らばっているがれきも木々の中へ埋もれていって、静かな山奥の大自然へと変貌しつつある。

「さてと、これでここの仕事が終わるが…もう一方はどうした?」
「そっちは、自称凄腕スパイさんとその娘さんのほうで潰している途中って連絡あったよ」
「ああ、スパイとか言っているけど基本ほぼ力でごり押しのあれか…あっちはあっちで、大変そうだな」

 脅威が去ったので問題はないとは思うが、その後始末のほうが大変である。
 対策を立てねばまたちらほら出てくるのが予想できるので、考えて行くしかないだろう。

「とりあえず、ここの鎮魂をしてから合流しておくか…久しぶりに会いたいしな」
「やっちゃったのは俺たちだけどね」
「それはそれ、これはこれ」

…安らかに眠ってもらいつつ、ここでの研究成果は全て闇へ葬られていくのであった。






 そして、その話題に上がっていたもう一方の方では…

「…ふぅ、終わったわね。もう帰っていいわよ、ミント」
「終わったとけど、疲れた…本当は今日春と一緒に、アップデートされたオンラインを楽しむはずだったのになぁ」

 ガラガラと崩れたがれきから這い上がり、出てきた二人の影。
 暴れまわったのは良いのだが、最後のほうで油断してしまい、ここの自爆装置を起動されて巻き込まれたのである。

 幸いなことに、命をそうやすやすと奪われるようなことはなかったが…がれきに埋もれてしまい、這い上がってくるまで少々てこずった。

 怪我はないのだが…その代わりに、来ている衣服がぼろぼろになっていた。

「これじゃ、すぐに帰れないよ。春の前にこの姿で出たら、心配されちゃうだろうからなぁ…」
「ちょっとセクシーになっているから、これはこれでありじゃないかしら?」
「…いやいや、流石に人前にこの格好で出るわけにもいかないよ!!」
「もったいないわねぇ、この格好で向かえば、案外悩殺されてすぐに孫の目にお目にかかれそうな感じもするんだけれどねぇ…」
「いきなり色々とすっ飛ばしてないかな!?」

 様々な段階もぶっ飛ばして、突き進み過ぎな発想である。
 思わずツッコミを入れるが、密かにそれもありかなと思う自分がいるのが恐ろしかった。

「とりあえず、着替えのためにふもとの宿屋へ向かうほうが良いかしら。ちょうど、おじさんたちも仕事を終えて合流予定だしね」
「うう、早く着替えて春のところへ行きたいなぁ…」

 久しぶりに会う人たちへ合うのは楽しみでもあるが、出来ればこんな状況じゃないほうが良かった。
 今は着替えて、さっさとまともな状態に戻したいと思うのであった…

「ああ、そういえばあのお札、家に置いてきたかしら?」
「うん、おいてきたけど…それがどうかしたの?効果あるか微妙で、鈍感なままだったよ」
「あらあら、アレちょっとは軽くなるはずなんだけれども…まぁ、良いわ。効果が微妙なら、別のを交換してあげるわ。そうねぇ…今度はこの、思わず本能で1時間動いちゃうお薬を仕込むのはどうかしら?」
「本能で…いや、どうなんだろう?」

…本能で動くといっても、思い通りのもので動くとは限らない。
 危機察知、帰巣、遺伝子に刻まれた何かなど色々とあるだろうし、都合よく引けるはずもない。

 それでも、物は試しにということで、受け取ってしまうのであった…

「ああ、この媚薬とセットでやったらいいかもしれないわ!獣になればその本能で」
「明らかにやばくなりそうなんだけど!?」
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