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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.0-7 花のクエストは咲かずに

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…驚愕の事実はさておき、今はクエストのほうに意識を向けることにするハルたち。
 ひまわりのようなNPCの名前はゴンフラワレス。一介の植物星人型NPCのようだが、本来は違う言語を話す宇宙人の類らしい。
 それなのに何故か、他のプレイヤーたちと同じ言葉をしゃべれるのは…

「『プロテニアフラワー』の栄養剤ですか」
「ええ、そうね~ん。その花の蜜をなんやかんやして混ぜて作り上げた特製のお薬。それが喉に良い効果を与えてくれるのねぇん」
(…喉?)
(でかい唇あるけど、ヒマワリに喉?)

 ツッコミを入れたいところはあるがそれはさておき、どうやらその花の蜜が鍵らしい。
 様々な薬草と調合することで出来上がる栄養剤は、喉が常に潤って喉の渇き知らずになり、副作用として様々な言語を話せるようになるとのことだ。
 そういう類は効果に制限時間がありそうだが、驚くべきことに副作用のほうが制限時間はないという。

「それでねぇ、味も良いからいつも様々なお酒をそれで割って飲んでるけど、使い過ぎるからよく無くなりやすいのねぇん。だから、取ってきてくれないかしらなぁん?」
「素材採取系クエストか…なんか、意外にあっさりしているな」
「もっとこう、無茶苦茶な感じかと思っていたよね」

 お使い系のクエストに該当するようなものであり、物凄く難しいというわけでもなさそうだ。
 案外、楽が出来そうなものなのだが…

「それだったら、自分で取りに行けそうだけどできないの?」
「無理ねぇん。だって、その花のある場所は…」







「…ファンタズムの湖の中央の島に咲いているけど」
「湖というか、巨大な水球の中だね…」

 場所はわかった。普通の採取クエストであれば、気軽にこなせるところだろう。
 しかしここは、奇妙奇天烈摩訶不思議惑星ファンタズムであり、ただでは終わらせてくれなかったようで、難易度が上がっていた。

 クエストの鍵となるプロテニアフラワー自体は見えるが…そこに向かうまでには、どうやら目の前に浮かんでいる超巨大な水球の中を泳がなくてはいけないらしい。

「見た目が湖じゃないのに湖なのはこれいかに」
【シャゲシャゲェ】
「あ、普通の水じゃないね、コレ。見た目こそ水なんだけど、火と同じ性質を持っているよ」
「なるほど、塩湖ならぬ炎湖って感じで…いやいや、うまくないし、難易度がさらに跳ね上がっているんだけど」

 いったい何をどうやって、あの欲望変態戦隊はこのクエストをクリアしたのだろうか。
 ただ泳ぐだけならばともかく、明らかに炎上ダメージを常に受け続けるような中を進めというのは、拷問というべきだろう。

…あ、いや、もしかして変態戦隊だから可能だったとか?まさかドMなスキルでも所持していて、ダメージを受けても回復扱いになるようなものがあってもおかしくはないだろう。

「いつぞやかの、火山のところで使った火炎耐性のつくアイテムは…駄目だね。火の性質があるけど、水の概念が優先されているのか、効果はないようだって表記になるよ」

 クリアさせる気ないだろうと思うが、調べてみると攻略できる人はいるようだ。
 見る感じだと、可能な限りスリップダメージを軽減させたり、回復薬をがぶ飲みしまくったりとごり押しは多少効くらしい。


「でもなぁ…そんな方法、僕らに取れるかな?」
「うーん、厳しいかも」

 回復薬のたくわえは確かにあるが、少々心もとないところ。
 ダメージを軽減させる方法もないし、いっそ雪兵召喚を大量にしまくって、巨大な雪兵を纏って身代わりで突貫しようかと思ったが、火の性質を持つせいなのか瞬時に融解して駄目になった。

 どうしようかと悩む中…ふと、ミーちゃんが気が付いた。

「あ、そうだハル。あれ使えないかな?」
「あれって?」
「ブラックフレイムの水着」
「…」

 そういえば、先ほどのミイラオーガとの戦闘で、持っていることがミーちゃんにばれていたんだっけか。
 特に言われることはなかったけど、何でそれをここでいうのか。

「名前からして、多分前の火山で手に入れたアイテムでしょ?あそこで手に入れられたもの、確か火炎耐性がかなり高くつくから、もしかすると水球でも火炎判定がどうにか出れば、結構いけるんじゃないかなって思ったんだけど」
「いやいや、流石に無理でしょ。クリームとかも水だから判定なかったし…水着だからって、どうにもならないよね?」

 確かに、ブラックフレイムの水着も相当高い耐性を持つことが出来る。
 あそこでは確かチャイナドレスとかもあったが、こちらの水着は80%ほどカットできるものがあったが、流石に同じようなクリームが対応できないものでは、判定の対象外に…


「…嘘だろ」

…確認してみたところ、まさかの判定の対象内。
 つまり、これを着用すればダメージを最低限抑えながら、進むことが可能なことが判明してしまった。

 しかし、これは女性用の装備であり、今の僕には装備できない装備品である。

「なら、ミーちゃんがこれを着て取ってくれば…」
「いや、ハルならできるよね?黒き女神、あれって女性判定になるから、装備できるよね」
「いやいや、でも流石にこのちょっと水着は…」
「海王惑星で私、水着姿を見ていないんだよねぇ。中三病さんには見せたそうだけどね」
「うぐっ…」

 い、痛いところを…好きこのんでやったわけでもないのに、いまだに誘われなかったことを根に持っているのだろうか。
 でも、ここで動かなければ進まないし…やるしかあるまい。


「…ハイ、女神になって、とってきます」
「お願いね、ハル」

 こういう時に強く出れたらいいのだが、あいにくながらミーちゃんと口論して勝てる気はしない。
 仕方がなく、黒き女神になって着用するのであった…


「まぁ、行って取ってくるだけだから、大丈夫かな?見たところ、こういうところはサメとかピラニアが泳いで襲い掛かってくるのが定番だけど、いないようだし…」
「流石に、炎判定にもなるような水の中に住める生物がいなかったんじゃないかな?」
「どうなんだろうなぁ、ここ常識の通用しない星だし、もしかすると別の何かが…いや、考えたら絶対にフラグになるから、頭空っぽにして向かおうかな…」

…今の自分の姿を、深く考えないようにするためにもね。



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