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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.0-33 話を聞くなら年長者に

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…春たちは家に帰ってきた。
 後始末を色々つけ、後はもうゆっくりと家で過ごすだけだ。

 いや、それだけで終わってくれればよかったのだが、それでもまだすべてではない。
 何故、春がこの現実の世界で黒き女神の姿になれたのか、という大きな謎が残っているからだ。

「それを聞くために、休んでから電話をかけようと思っていたのに…」
「まさか、家の扉を開けてくぐった瞬間に、落とし穴が用意されていて落ちたと思えば…」

「「…その先に、何でいるのフロンおばあ、」」
「ん?」
「「…お姉さん!!」」
「…大丈夫ね、ええ、お久しぶりね二人とも」

 家に帰ったはずが、なぜか用意されていた落とし穴。
 そしてその落とし穴の落ちた先に設けられていた地下空間のような場所に、フロンおばあもといフロンお姉さんがお茶を飲んで座って待っていた。

 その横には留守番を任せていたはずのロロがいるのだが、明らかに物凄く距離を取っている様子。
 僕やミーちゃんは何回かあっているが、彼女のほうは初対面なはずだが…何故だろう、何かしらの事情があるようで、避けているようにも見えなくもない。

「というかそもそも、家に帰って早々に落とし穴に落とすってどういうことなの!?」
「だって春、貴方は私に何か用事があるのでしょ。だったら、さっさと来てもらったほうが良いかなと思って…直通の通路を掘ってもらったのよ」
「つながっているようで何かがずれている感じの回答なんだけど!!」


 ぶっ飛び過ぎて、意味が分からない。
 確かに、話を聞こうと考えてはいたが、まさか先回りされるとはだれが想像できただろうか。

 いや、この人ならば容易にやっていてもおかしくはないか。
 




 とにもかくにも色々とツッコミを入れつつも、これ以上言っても無駄だと二人は悟る、
 だてに昔からフロンと交流していたわけではなく、本能的ツッコミ属性に、この人超ボケ属性をまともに相手にしては心的疲労が大きすぎると判断したのだ。
 大いなる存在究極のボケに、矮小な人々微量のツッコミでは対応できない。


「さてと、それじゃさっさと本題に入ろうか…春、お前が聞きたいのは、その女神の姿になれた理由だな」
「えっと、あ、はい」

 まだ聞きたかったことを言ってもないのに、既に知られているようだ。
 いったいどこから情報収集を行ってくるのか、これだから少しだけフロンお…姉ちゃんが怖い時がある。

「その理由だが、物凄くあっさりしたものだよ」
「というと?」
「単純明快に、先祖に女神がいて、お前がそれで先祖返りしただけさ」
「へぇ、先祖に女神が…ん?」

 フロンの言葉に対して、春は一瞬思考が停止する。
 今何か、明らかにおかしなものがあったのだ。

「えっと…女神って、それ本気で言っているの?フロンおば、お姉ちゃん。この科学技術が発展した現代に、そんな眉唾物の様なものが存在できるの?」
「それを言ったら、春、隣にいるミントはどうなんだ?彼女は、真祖だろ」
「…」
「何も言えなくなるよね」

 現実ではありえないような存在にツッコミを入れたいが、思いっきりそれがそばにいる時点で否定できないという事実。
 考えたら以前、ゲームの中にいたはずの妖精女王及び宇宙人が来たことがあったし、不思議な存在というのはこの世の中、案外近いものなのかもしれない。
 目の前のフロンお姉ちゃんもまた、その類っぽい気がするしなぁ…かなりの年齢を言っているはずなのに、その容姿は昔と変わっていない。化粧で大化けしたりする話はそれなりにあるけど、そんなものとは違って本当に歳を取ることが無いように見える。

「…女神の血が流れていることは、納得することにする。でもそれだと、妹や母さんやその他おばあちゃんたちも、流れているってこと?」

 無理やりにだが、否定できない事実だとすれば諦めて受け入れるしかないだろう。
 そう思いつつも、出てきた別の疑問も口にした。

「そうなるな。まぁ、正確に言えば流れ出したのは私の愛したあの人との子供の孫…もうちょっと先だったかしら。そこで、混ざっているから一族全員がというのは違うね」
「そうなの?」
「そうだよ。本当に神の血を私も引いていれば、また違った生き方があったけれども…そうはならなかったからね」
「フロンお姉ちゃんが神の血を引いていたら…」

…それはそれで、また別の厄介事が大量に起きる気がする。

 それはさておき、かくかくしかじかと話を聞けば、どうやら神の血を引いていたとしても、全員が女神になるわけではない。
 長い年月を経ているので、本当にわずかな特殊性ぐらいしか発現しないことが多いらしいのだ。


「わかりやすく言えば、石油を簡単に掘り当てたり、怪獣のようなものが仲間になりやすかったり、あるいは人知を超えたやつらの相手をしやすかったり…他の人とは異なるようなものがちょっとだけ出るぐらいなのさ」
「石油掘り当てる時点で、ちょっとなのだろうか」
「そういえば、親戚でマッコウクジラやダイオウイカばかりを釣り上げる人や、宝くじを買えば的中しすぎて山に逃げた人もいたような…」
「そのぐらい、先祖のほうにいた女神がぶっ飛び過ぎて、薄れてもなおも強烈になりやすいのもあるのかもね」

 元となった女神が何なのか、それぞれの特殊性を考えると恐ろしい。
 しかも一代流れるだけで相当薄まるようで、他は常人と変わらないようだ。


 しかし…そこに、例外が生まれてしまった。

「その例外と言えるのが、お前だよ、春。一族の中で、基本女系の中で…生まれた、男の子。それなのに何故か、一番女神の血が色濃く…いや、女神そのものと言って良いものが、お前の中にあったのさ」
「それならの何故、最初からそんなものが出なかったの?」
「女神だからだよ。女神の文字の通り、お前がもしも女の子なら、最初から女神の力が覚醒していたのかもしれない。けれども、男の子ゆえに女神の部分が生かされず…それで、長い間、血は眠っていたはずなのさ」

 女神の血を引き、それその者だと言えるようなものだとしても、女神の枠は女神に限られるのか、発現することはなかった。
 そのまま何もなければ、何に持っていない平凡な一般人として生涯を終えただろうが…女神の血を引いていたとしても、運命の神のいたずらには抗えないというべきだったのだろうか。


「アルケディア・オンライン…特に、作られた特殊なNPCのいたずらが、その眠っていたものを起こしちまったのさ」
「NPCの…まさか、のじゃロリに与えられたスキル『女体化』か!?」
「そうなるねぇ」


 男の体のままであれば、特に何もなかったはず。
 だがしかし、オンラインの世界とは言え実際に体感できる世界にて、与えられた女の子の体。
 それゆえに、女神の血が反応し…じわりじわりと、永い眠りについていたものがゆっくりと起床したようだ。

「そのスキルに今度はセットされた神々のいたずらも入って…黒き女神へ。そして、何度も何度も使用される間に、他の力もいろいろ取り込み、目覚めていったのさ」

 黒き女神の力、それは他の力を取り込み自身の力にすることが出来る女神の力。
 ゆえに、一人でも強大な力を持つが、取り込む力があればあるほどより力を増すことができる。
 力が何度も何度も揺り動かされ、テイムモンスターたちの数も増えて充実していき、女神の目覚めは早まった。

「それに、現実の世界の方でもフィギュアの使用によってより実感しやすくなったし…あとは、肉体的な部分の目覚めも必要だっただろう」

 そういう強大な力に限って、目覚めるにはそれ相応のきっかけが必要になる。
 そもそも、のんびりぐうたら平和ボケできるこの世の中では、女神に頼るようなことも少ない。

 覚醒することが出来るきっかけがなければ、ゲームの中で多少は形成されていたとしても、表面へ浮かび上がれない。

 だが…それでも、一度でもひっかる土壌ができてしまえば、それを足掛かりにして一気に目を覚ますことが出来る。

「…ミント、お前隠しているだろ」
「っ」
「え?」

 フロンお姉ちゃんが鋭く眼光を光らせると、ミーちゃんがびくっと体を震わせる。

「な、何も隠してもいませんよ」
「嘘をつかなくても良いよ。詳細な映像は、既に獲得しているからね」
「え”」
「そうだねぇ、今正直に言わなかった罰として本邦初公開、ちょっと姿が戻ってきたところにあるけれども、衝撃的なシーンをお見せしようか」
「あ、ちょっとまって、フロンお婆ちゃん!?まさかまさかまさか!!」
「あ」


…慌て過ぎたがゆえに、うっかり口を滑らせたミーちゃん。
 NGワードを堂々と言ってしまったことに気が付き、紅色へ変化できる彼女のすべてが即座に真っ青に、青色を通り越して白色になったが、やらかしてしまった事実は変えられない。

「…そうだね、その映像ついでに他の映像恥ずかしいものもだそうか」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


―――その後に一つ、今回の件に関わる映像を見たが、その他の映像も流された方が衝撃的だった。

 あえて言うのであれば、視聴し終えた後…ミーちゃんは日光を浴びた吸血鬼のように、灰になっていたのであった。

「み、ミーちゃん!?文字通りに灰になっているけど逝ってないよねコレ!?」
「大丈夫だよ、春。このぐらいでくたばるようじゃ、この子は真祖をやっていないからね。復活する方法もあるし、意識もしっかり残っているが…そうだね、何も言わないついでに他も暴露しようか」

…鬼か、フロンお姉ちゃん。
 いや、眷属にカイニスがいるけど、それよりもさらに鬼畜かもしれない。





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