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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-73 正義も悪も、中々栄えないもので

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…偽りの愛は、真の愛に破れる。
 王道なようで、現実では中々見ることが出来ないもの。


 だがしかし、VRMMOのアルケディア・オンラインでは机上の空論ではなく、真に愛を持つのであればそれを成し遂げることが可能であり…今まさに、ストーカーであったミゾルテは、圧倒的な力の差を見せつけていたにもかかわらず、欲望戦隊の持つ愛に撃たれていた。


ズドォォォォォォォォォン!!

 その愛の一撃は重かったが、お互いに無事では済まなかったようだ。
 攻撃を終えるとともに大変人の輝きは失われて、残った物体が分裂し、元の欲望戦隊となってここに落下し、着陸に失敗して地面に穴をあける。

 ストーカー、ミゾルテの鎧の巨人は崩れ去り、彼女はどうにか地面に着陸したが…それでも、今の攻撃は相当重かったようでフラフラになっていた。


「ぐっ…ま、まさか…私の愛が…こんな、変態たちの手によって砕かれたと…」
「…ふふふ、はははははははは!!その通り!!」
「真の愛であれば、我々が先に砕け散っていただろう」
「だがしかし、貴様はその虚構の愛に溺れていたがゆえに、真実の愛に沈められた!!」
「同時にその愛は、貴様にとっての真実の愛ではないことも証明されたのだ!!」

 精神的ショックでそう叫ぶミゾルテに対して、満身創痍ながらもどうにかして立ち上がり、空元気でびしっとポーズを決めながらそう答える欲望戦隊。

 

 ほぼ勝ち目のない戦いのはずだったが、そこに勝機が一切なかったわけではない。
 ストーカーするほどの偏愛に対して、より大きな欲望を持つ彼らが上回り、敗北の可能性を覆したのだ。

…まぁ、既婚者なのはミートンだけだが、そんなことはどうでも良い。
 それ以外の面々でも愛はどのようなものであるかというのは理解しており、大変人として一体化していたからこそ、受け入れることもできた。

 ゆえに、虚構の愛しかなったミゾルテには効果抜群となり、鎧の巨人は爆散したのだ。


「そんな、私の愛が愛が愛が、こんな変態たちに負けたというの…!!そんなの、無い無いナイナイナイナイナイナイナイナイナ!!」

「うおっ、なんかこわっ!?」
「これは…うーむ、やばいものを出しちゃったか?」

 己の愛が負けたことを信じられないのだろうか。
 それとも、欲望戦隊に負けたことが受け入れがたいのだろうか。


 あるいはその両方なのか、だんだんとミゾルテの口調が荒くなり…次の瞬間。



バシュボシュン!!
「「「「そんなの、絶対にありえない!!」」」」

「「「「ふ、増えたぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」

 煙が上がったかと思えば、あっという間にミゾルテの姿が増殖していた。
 スキルを使用されたのだろうか。違う、その動作はなかった。

 同姓同名のそっくりさんが同時にログインしてきたのか。いや、彼女は一人だけしかいないはず。


 それなのにどういうわけか、周囲を取り囲むようにしてミゾルテが増殖し、迫ってくる。

「ひぃぃぃ!!綺麗なお姉さんに囲まれるならばともかく、明らかにやばい顔色をした相手がこんなにいるのは怖い!!」
「我を忘れているにしては、どういう暴走の仕方だよ!!」
「正論の一撃で精神的に吹っ切れ過ぎたのか、何かバク技でもやっているのか…うん、どう考えてもまずいな、コレ」
「負けを認めていないにしても、こんなのありかよ!!」

 ぞろぞろと増殖しつつあるミゾルテの軍団。
 各々が元のミゾルテと同じようなボロボロな姿になっているのだが、その壊れたような形相にビビらせられる欲望戦隊。
 相当なダメージを与えたはずだが、何かのタガが外れてしまったのだろうか。

「「「「ナイナイナイナイユルサナイナイナイナイユルサナイユルサナユルサナユルサナイシンジナマケテイナマケテイナイワタシハワタシハワタシハァ!!」」」」
「ストーカーどころかよりやばいヤンデレのデレ抜きになっているぞぉ!!」
「いやそれ、ただの病みまくったやばい人ぉぉぉぉぉぉ!!」

 叫ぶもこの状況、逃げることはできないだろう。
 気が付けば周囲一帯はミゾルテで出来たフィールドのようになっており、追い詰められていく。

「「「「ひぃぃぃぃぃぃ!!」」」


 ある意味、彼らがが時たま想像する、異性に囲まれる状況だろう。
 だがしかし、この状況は羨むどころか恐ろしいものしかなく、トラウマもの。

「だ、誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 思わず助けの声をあげた、その時だった。




【ブモォォォォォォォォォォォォォォォ!!】
「フォレストデストロイヤー、一斉召喚!!」

ドッゴォォォォォォォォォォォン!!
「「「「ギィィエェェェェェェェェェ!!」」」」


 空から閃光のように何かが降り立ち、周囲を取り囲んでいたミゾルテを吹き飛ばした。
 その主を見て、彼らはすぐに理解する。

「ま、マッチョン!!アティ!!」


 そこに降り立ったのは、彼らの中で最強の仲間…勇者の衣服を身に纏い、風にマントをたなびかせるマッチョン。
 そして、いくつものフィレストデストロイヤーを呼び出し、そのうちの一体の肩に乗るアティの姿。
 
 この状況下で、愛の光が消え去り、希望の光が改めて輝き始めたのであった…


「間に合ってくれたのは良いけど…タイミングが、まるで見計らって出てきたように思えるのだが」
【ブモッ、それ、誤解】
「途中までは見る気だったけど、流石の劣勢に参加しようとしたら、何故か妙な障壁があってのぅ…ようやく突破したばっかりなんじゃ…」

…彼らの言葉には偽りなし。
 とにもかくにもミゾルテはいったん吹き飛ばしたが、まだ消え去っていない…
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