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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-110 嘘から出たまこと

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―――イベントにおいて、脅威となりえるものはいくつかあった。
 その大多数は事前に対策を練り、潰すことはできている。

 だがしかし、それでも人の想定というのはあくまでもその人が理解できる範囲に押しとどめられるものであり、その考えを容易く凌駕するものこそがとんでもない脅威になりうる存在である。

 そのようなものを可能な限り抑えようとしても、考えを軽々と越えてくるせいで、対策にできないこともしばしある。

 だからこそ、それでもあきらめずに対策をし続け…




「…時として、その努力に報いる何かが生じることもあると聞くが…まさか、嘘で釣ったはずが嘘から出たまことになるとは」
【世の中、わからないものだ。ブモゥ】

 コスプレイベントが開かれている星から、遠く離れたとある星。
 そこでは今、ハルに協力してガセネタで欲望戦隊を引っ張ってきたアティとマッチョンが、目の前の光景に驚かされていた。


ビリビリビリビリィ!!
「あががががが!!ま、麻痺と電撃がぁぁ!!」
「し、しかし今堪えて、乗り越えねばぁ!!」
「桃源郷が、もうすぐ我がてにぃびびびびびび!!」
「毒も喰らうのはきついが、この機会を逃してあがががが!!」

 びりびりと毒と電撃を受けている欲望戦隊。
 ある意味地獄のような光景だが、受けている彼らからすればある意味ご褒美にも等しく、HPがゴリゴリ削れているはずなのにメンタルHPが回復していそうな勢いである。

 何故、そうなるのか。
 答えはすごく簡単なことで…彼らに通電する毒液を纏った触手で攻撃しているのが…

【プヤヤ~♪】
【プ~♪】
「「「「喜んでくれるのであれば、ご褒美です!!」」」」

「絵面が酷い」
【毒クラゲモンスター…ポイズンジェリーの進化系、『ロリズンジェリー』…幼子の姿をしたクラゲのモンスターの群れに、まさかここで遭遇するとは…】

 恍惚とした表情を浮かべる欲望戦隊に対して、物凄く呆れたような表情で二人は言う。

 そう、現在進行形で彼らに攻撃をじわりじわりと与えているのは、別名『毒妖女』とも呼ばれる、小さな女の子のような外見をしたクラゲのモンスターこと『ロリズンジェリー』。
 倒した際のドロップアイテムが、耐性を貫通してどんな相手も麻痺か毒にすることが出来る『バッドジェリー』という、人によってはかなり需要がありそうなものを生み出す者たち。

 だが、頭にクラゲの帽子をかぶった幼女ともいえるような相手の姿に、変態共は手を出すという選択を選ぶことが出来ず、なすがまま蹂躙されているのである。
 いや、ただやれれているわけではない。
 ダメージ受けているのはわかっているので、彼らは手持ちのありったけの回復薬を使用し、持ちこたえているのである。

 そこまでして我慢する理由というのは…彼らが、彼女たちをテイムする選択をしたからだ。

 ロリズンジェリーたちのテイム条件は、一定時間彼女たちの遊びもとい蹂躙劇に耐えきることで生じるものであり、必死になってその機会を逃すまいと耐えているのだ。

 その執念たるや、まともな方向に生かせばかなりすさまじい出世を遂げそうなものなのだが…天は二物を与えずというべきか、それとも純正の変態ゆえにまともになることが出来なかったというべきか。


「とにもかくにも、これで何もせずとも彼らが留まるのは良いのじゃが…光景が酷いのぅ」
【念のため、モザイクスキルで隠すか…ブモゥ】

 日夜色々と立ち回っているため、いつの間にかマッチョンが手に入れていたスキル『モザイク』。
 スキル名の通り、モザイクで隠すだけの効果を持つネタ的なスキルとも言えなくもないのだが、嫌でも鍛え上げられて練度が上昇した今、その範囲・効果時間はとんでもなく大きくなっている。
 一応、防戦などで使用できなくもないのだが…鍛えられる環境がどういうものなのか、想像するのに容易い…想像したくないだろう。



 何にしても、そこそこのガセで留める気が、偶然にも発生していたロリズンジェリーたちにとって、より効果的に彼らがこの地に食い込み続けることになっている。
 思っていたのとはまた違う状況だが…アティたちにしても、変態共がくぎ付けになっておとなしくしているというのは、非常にありがたい。

 奇跡的に遭遇できたロリズンジェリーたちに、心の中で感謝をしつつ、変態共にテイムされたらと思うと失敗したほうが世のためっ人のためモンスターのためになるのではと思う気持ちもあり、複雑な感情を抱えようとしていた…その時だった。

【---ブモ?】
「ん?どうしたのじゃ、マッチョン」
【何か今、誰かに見られたような…気のせいか?】

 この星には欲望戦隊たち以外、訪れていないはずである。
 いるとしても自然発生したモンスターたちであり、彼らに注目するようなものはいないはず。

 だがしかし、黒き女神と争うことが出来るほどの勇者オークとなったマッチョンの感覚は、何かを感じ取っていた。



【違う、気のせいではないな…これは、何か良くないものだ】

 周囲を見渡しつつ、この場ではないどこか別の場所から向けられているとマッチョンは理解する。
 勇者の名を持つ以上、悪意に関して人一番敏感になっているようだが…感じ取って理解するこれは、悪意とは似て非なるもの。
 
 悪意でないならば放置でも良さそうだが、似て非なるものと判断できるもののため、そう簡単に捨て置くこともできない。

【…仕方がない。確認してこよう。彼らの見張り、頼んでも良いかブモゥ?】
「問題ないのじゃが、一人で大丈夫かのぅ?いくら、黒き女神とためを張れる強さとは言え、油断は禁物じゃよ」
【流石に、無茶はし過ぎない。守りたい家族がいるからこそ、自分の命は大事だし、いざとなれば全力で逃げる選択をとるから、大丈夫だブモゥ】
「ならば良いのじゃがなぁ。念のため、これを持っておくのじゃ」

 そう言いながら、アティがマッチョンに渡したのは、瞬時にハウスシステムへ転送されるアイテム。
 テイムモンスター専用のアイテムであり、本来は厳しい環境に耐えられないと判断してその主が使ったりすることもあるアイテムだが、モンスター自信も扱うことが出来るものだ。

【ありがたい。こういう道具があるのとないのでは安心感が異なる。なら、これで準備もできたし、ちょっと行ってくるブモゥ】
「気を付けるのじゃよ~」

 びりびりばりばりと蹂躙されている欲望戦隊を見つつも、マッチョンは大地を蹴り、宙へ飛び立つ。
 


 
 本当に不味い時は確実に逃げられる保険を残しつつ…マッチョンは、視線の主の元へ、向かうのであった…



「あぎゃぎゃぎゃ!!そろそろアイテムがぁぁ!!」
「耐えろタエロタエロォタエタテタテテ!!」

「…正直、正体不明の何かよりも、こっちの変態共のほうがよっぽどヤバい存在に見えるのぅ」

…その感想は、間違ってもないだろう。
 たとえ、どのような相手だとしても、欲望戦隊の変態度には嫌すぎるが鉄壁の信頼を持つ…嫌すぎる信頼感は、悲しくもあったが。

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