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Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.0-3 密航手段はいかなるもので

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…現実世界とアルケディア・オンラインの世界をつなぐ、次元を超える列車。
 今はまだ貨物限定なために貨物列車となっているが、将来的にはアバター無しでも行き来できるような車両が追加されると予測されている。

 実は既に、世界を超えることが出来つつ人でない者も利用できる列車は走っていたりするのだが…それはまだ、表には出ていないもの。

 表に出す前に、まずは多種多様な資材を輸送することで現実世界への影響力を探っているところもあるのだろう。

 もちろん、運ぶ荷物自体もただの貨物ではなく…その中身は、現実世界ではありえないような性質や効果を持った代物が数多く存在しており、オンラインをプレイしているからこそ理解できる品物の凄さに対して、各国は喉から手が出るほど独占したくもあるだろう。

 ただ、そういうものに限って大きな争いごとの種になる可能性も十分に理解されており、シャレにならない事態を防ぐためにという建前をもって、牽制しあい、見張りあい、何事もない様に過ごしている様子だ。


 そのおかげで平和は保たれているようだが…それでも、脅かそうとする輩はどうしても存在する。

 下手に扱えば不味いことを理解している者が多くいる中で、何故自分たちならば大丈夫だろうと過信してしまう輩がいるのか。
 どのような思考回路を有すれば、自分たちであれば一番うまく扱えると思う輩がいるのか。
 どうして、手を出そうとするのか…考えても、きりがないだろう。

 ただ一つ言えるとすれば、人の欲望というものは計り知れないものであり、変態共のぶっ飛んだものであればまだ良いとし…百歩、いや、一億歩以上譲ったとしてもギリギリとして、変態の思考よりも最悪の方に進む悪意に満ちた欲望というものは、制御できないものなのだろうか。


【残念ながら、世の中善人ばかりではないというのは、悲しむべきことなのでしょうカ】
【それも仕方がないことデス。善人だけでは世界が成り立たないのは、どこでも同じなのでしょウ】
【悪意というものは、どこからでもわきだすものなので予想も制御もし辛いというのが厳しいですネ】

【【【まぁ、まだこの程度であれば可愛いものですガ】】】
「うぐぐぐ…」
「ぐへぇ…」
「ごげぇっ」



…深夜、人が寝静まっており、貨物列車しか出入りがないとある国の駅の構内にて、貨物列車の護衛にあたっていた特殊使用人たちはそう話しつつ、捕らえた不審者たちの身元を確認しながら丁寧に梱包し、送り返すための車両への積載作業を行っていた。

【こちらはスパイ活動が有名なところですが…おお、本当にこういうスパイ道具を持っているのを生で見るとちょっと面白いですネ】
【こちらは、ハニートラップを仕掛けようとしたのでしょうカ?それとも、薬やヤバい機械で操ろうとしたのでしょうカ?我々には効果がないのに無駄なことをしていマス】
【油断は禁物デス。慢心は身を滅ぼすと、の世界のモスキーング・ツブサレーノが立証していますからネ。丁寧に今後の参考素材として活用して、どういう手段を使ってこようとするのは学ぶほうが良いのデス】

 べりべりとみぐるみをはがし、関係諸国を確認して書状を書いていく。

 公表すればそれだけ表側が忙しく、より面倒なことになるのがわかっているので、こうやって隠れたところから指摘していくのだが…開通してまだ間もないとはいえ、それでも毎日毎日飽きもせずにやって来る者たちを見てため息もはいきたくなるだろう。


【予報ですと、明後日当たりはあの国の祝日で派遣者が減り、逆に1週間後は祝いのネタとして得ようと増員を予定してる国があるとか…そういうところは厄介事を引き起こされる前に、消したらいいのデス】
【いえ、過激すぎる行動は逆に我々の身を滅ぼしかねまセン】

 やろうと思えば、出来なくもないだろう。
 けれども、そこまでの者は望んではいない。
 今はまだテストの様なものなので、どの程度の影響があるのかを測る方が得策なはずである。

 厄介な国はリストアップし、将来的な関係構築のための参考にする。
 自分たちの益を得ようとしているようだが、逆に自ら首を絞めまくっている事実に気が付くのはいつになるのだろうか。

【馬鹿につける薬は、流石に我々の技術力でも開発できませんからネ】
【悲しい事故で変態に変える薬はありますが、変えてどうするんだという話ですヨ】

 矯正しようとして。過って生まれてしまった最悪の薬は使いどころがない。
 とはいえ、場合によっては使い道があるということで、撮っておかれているという話も知っているのである。


【何にせよ、気持ちを切り替えて取り締まっていきましょウ】
【やれやれ、今晩もゆっくり眠れそうにないカ】
【まぁ、睡眠をとる必要がないのが良いところですけれどネ】

 梱包をし終え、出発の時間までの警備に戻る特殊使用人たち。
 その手によって多くの不審者たちは捕縛されて、出身地へ送り返されるわけだが…それでも、不測の事態というのは存在する。

 事故は起こるさ。どこかの鉄道の歌詞になるほどのことはないとはいえ、それでも0ということにはできない。
 どのような体制を敷いていたとしても…どこかに抜け穴があり、そこに落ちてしまうものは存在するのである…






【ところでその、はがしたスパイセットはどうするのデス?】
【参考資料として、しっかり分析に回しマス】
【分析したほうが色々と役立つので、せめてやってくるならびっくりどっきりするような面白い道具をもってきてほしいですネ…】

…後に、このスパイ道具がオンラインの世界の装備として実装され、どこかの国では機密情報扱いだったものらしく、表立って言えないために泣き寝入りする者がいたとかいないとか…

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