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午後1時。
 
太陽のシャワーを浴びながら、真夏の砂浜を歩く。
 
一歩踏み出す度に足に絡みつく白い砂は、じんわりとビーチサンダルの底を包む。
 
海と空は互いの青さを映し合い、雲と波は互いの白さを引き立たせている。
 
 
僕と菜摘さんは約束通り、海で遊ぶことにした。
 
「ほら見て隼くん!シーグラスよ。きれいでしょう?」
 
太陽によく似た明るいオレンジ色のサンダルの隙間から、優しく砂をすくい上げて菜摘さんは言った。
 
「これがシーグラスかあ…ちゃんと見たのは初めてかもしれないな。」
 
「これをね、集めて持って帰って、瓶に詰めておくの。」
 
「へえ…!それは絶対に綺麗だね。僕も作って持って帰ろうかな。お土産にしよう。」
 
「いいじゃない!後で一緒に作ろっか!」
 
「うん!」
 
二人で屈みながら、夢中になって砂浜に散らばる光を集めた。
 
手の中がスカイブルーとエメラルドに染まってゆく。
 
形に残る記念品を作られることが、すごく嬉しくて仕方なかった。
 
「やっぱりこうして見ていると、泳ぎたくなっちゃうわね。」
 
集めたシーグラスと貝殻を小さな箱に入れた後、僕たちは海岸線に沿って歩いていた。
 
どこまでも続きそうな砂浜と寄せては返る波の音が、何分も歩くことを退屈させなかった。
 
「明日は泳ごうか。僕も、一応水着は持ってきたよ。」

「そうね~……私もあるにはあるんだけどさ…ちょっと恥ずかしいわ。」

「えっ菜摘さん、絶対水着似合うと思うけどな。スタイル抜群だし。」

「そういう問題じゃなくて…なんか、隼くんに見られるのが恥ずかしいのよ。」

「ええ…なんて言うか…その、今更というか…さっきだって一緒にお風呂に入ったのに?」

「それはそうなんだけど~…う~…なんか違うのよね…」
 
昨日の夜みたいに耳まで赤くして恥ずかしがる菜摘さんを、僕は不思議に思って見ていた。
 
女性特有の感覚なのだろうか…

裸は見られていても、水着姿を見られるのは恥ずかしいというのは。
 
「恥ずかしがってる菜摘さんも可愛いからさ。明日、一緒に泳ごうよ。」
 
彼女の熱くなった手を握りながら、僕はすでに明日を楽しみにしながら言った。
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