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第2章 思春期男子の性と生理

No,16 雪絵は派手でおませな子

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【これは小学校5~6年のお話】

 それからの僕は、あの手この手で真理ちゃんを口説きにかかった。そして結局、真理ちゃんには「嫌いだ」ってはっきり言われた。
 でもそうなると益々気持ちに拍車が掛かって、彼女の誕生日を理由にプレゼントを渡した。
 僕は突っ返されるのを恐れて走り去ったが、案の定次の日「お母さんに返せって言われたから」とのセリフ付で突っ返された。包装は開けられていなかった。
 さすがにあの時は泣いた。ただ、悲しくて泣いたのか悔しくて泣いたのかよく分からない。

 今にしてみれば、なんて愚かでうぬぼれた奴だと、我が身の事ながら恥ずかしくなる。
 でもって、こうして振り返るともっと根本的な問題が見えてくる。
──きれいに2年ずつ、要するにクラス替えの度に好きな女の子が替わってるって、これってどうなんだ?

 でもその当時は
(好きだ好きだ!)
 って真剣に思っていたつもりだった。

 1~2年の時の百合子ちゃんが初恋だと思っていた。
 3~4年の時に英美ちゃんを好きだったのも間違いない。
 5年の頃には、既に萩尾望都を読んで同性愛へのハードルは下がっていたけど、でもそれは漫画でのお話し。
 実際、辛い片想いの相手は真理ちゃんだった。

 そんな僕が、後に本当の恋をしてその辛さから同性愛を自覚した時、僕の歴史は更新された。
 小学生時代の幼い想いは「恋」でも何でもなかった。ただの自分勝手な「執着」でしかなかった。

 僕の初恋の相手は男の子。
 そして初めての失恋も男の子。
──その歴史は以降更新される事無く、現在に至る。


※──────────※


 そして話は、小学6年生になったばかりの頃に戻る。
 僕にとって、今までとはまるで違う「女の子」との付き合いが始まった。

 僕がまだ、真理ちゃんへの片想いでゼーハーゼーハーしていた頃の事だ。
(なんと僕は一年間も諦めずに悪戦苦闘していたのだ)
 同じクラスの雪絵がいきなり僕を誘ってきた。
「ねえ理久、今度うちに遊びに来ない?」
「え?」

 僕は子供の頃から今に至るまで「誘われるより誘いたい人」である事に間違いはない。現に百合子ちゃんも英美ちゃんも僕から誘った。
 その頃は他に目もくれず真理ちゃんを誘いまくっている最中だ。
──でも、雪絵の誘いには何か別の感じを受けた。

 雪絵は目立つ子だった。
 身長も高くバストも膨らんでいて、典型的な「早く生理の始まった子」だった。
 成績云々ではなく、先生に対しても臆せずズバリと発言するような、大人びた雰囲気のある子だった。
 はっきり、派手な女の子だった。そう、華のある女の子だったのは間違いない。

 実は意識しないではなかった。そう、波奈はなに似たタイプだったから──。
 そして何より、雪絵も合唱団だったからまるで知らない仲でもない。いきなり「ねえ理久りく」と呼びすてにされても、合唱団の中ではごく自然な呼ばれ方だった。


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