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第5章 微笑みの影の危うい性

No,67 SEXはスポーツじゃない

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【これは高校2年のお話】

「ジュン……もう、俺だめだよ。もうジュンには付いて行けない」 
「え?どうした理久?僕、何か怒らせるようなこと言ったっけ?」
「ジュンにはそれが分からないんだね。だから俺達はずっと平行線だ」
 さすがにジュンも焦ったような顔付きを見せた。 

「だから結局、理久はどうしたい?僕は理久の言う通りにするから、だから……」
「俺、今すごく気になってる奴がいる。多分、そいつのことが好きなんだ。これからは、出来るだけそいつと一緒にいたいと思ってる。だから、もうジュンとは会わない」

「なんだ、そんな事か」
 ジュンいつものようにニコリと笑った。 
「理久が誰を好きだろうと、僕は全然かまわないよ?気にすることない」
「ジュン……………」
 俺はもう、声を荒らげる気力もない。

「理久の好きな人ってだれ?僕の知ってる人?それくらい聞いてもいいよね?」
「2年になってジュンと同じクラスになった奴。吹奏楽部の平田」
「ええっ?!あいつ?あいつが好きなの?あの貧弱で冴えない奴?僕よりあいつといる方を選ぶなんて、なんで?!」
 ジュンがこんなに驚き、動揺する姿を初めて見た。 

「あいつとはその、もうやってるの?」
「やってるわけねぇだろうが!」
 結局俺は声を荒らげた。 
「あのなぁ、世の中ホモばっかじゃねぇんだよ!俺達なんて少数派なのに、ジュン、おまえ子供のうちから大人達にいいようにされて、すっかり感覚が変になってる!俺はもう、ジュンと話してるだけで頭がおかしくなりそうだ!」
「ごめん理久。でも、平田とまだやれていないんなら、僕がいなくちゃ困るよね?僕は、特定の相手って……恋人?そんな関係で縛られるのは嫌だってずっと思ってた。恋人なんて枠にはまらず、毎日それで楽しいと思ってた。でも、理久が他の人とするなって言うなら……」

「もしかして、ずっと帰宅部だったのはそのため?」
 俺はまた、前のめりにジュンの言葉を遮った。 
「そうだな、部活をする時間なんてなかった。いろんな人といろんな事して、毎日それはそれで忙しかったし…」

「そんな?俺だってまだよく分かんないけど、SEXに至る前に、その、もっと大事な気持とかあると思う。安易な遊びみたいにSEXに走るなんて…!」
「でも、気持ちいいし興奮するし、汗かいて楽しんでスッキリして…」
「SEXはスポーツじゃない!!」
 俺は、悲鳴にも近い叫びを上げてジュンの部屋から飛び出した。 




 俺は逃げるようにジュンと別れた。その時点で、俺はもう二度とジュンとは関わりを持ちたくないと思った。
──現にそののち、俺はジュンと口を利いた記憶がない。 

(ファースト・キスが亮ちゃんで良かった……)
 それだけが救いだった。 


 高校に入学して直ぐに親しくなったジュン。夏休みに関係を持って、それから一年のあいだ甘いSEXに溺れた。

 でも、もういらない!こんな悲しい関係はもういらない!

 俺はきっぱりと繋がりを切った。自分がこんなにも冷酷で、踏ん切りの良い性格だとは知らなかった。

(俺って、こう言う奴だったんだ……)

 ジュンの気持ちなんて少しも思いやらなかった。
 ただ、自分が可哀想だった。

 十代の傲慢な感性だったと、
今にして思う──。


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