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迷宮の令嬢
第1話
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「お前との婚約は破棄する!」
魔術学園主催卒業記念舞踏会の会場で、王子は婚約者である私を指さしながらのたまわりました。
私の名前はノア。ファン王国の国立魔術学園を今季卒業したばかりの16才。今日は背中まで伸びたブロンドの髪を縦ロールに巻いて舞踏会用に作った紺のドレスを着ていますが、こんな千差一隅のチャンスを逃す訳にはいきません。
「私は構いませんが、陛下もご存じなのでしょうか?」
「父上は関係ない。俺の婚約者は俺が決める!」
「さようでございますか。これだけの衆目の中でおっしゃられた事ですから取り返しはつきませんね。」
「当然だ。」
「では、私はこれで失礼いたします。」
そういうと私は足早に会場を後にして馬車に乗り込みました。
現在の私は、家を出て城の一室で生活しています。魔術学園に通いながら王族としての教育を受けるという二重生活に耐えてきたのも、陛下から直接王子の婚約者として指名されたからです。
部屋に戻った私は、身の回りのものと貴重品だけカバンに詰めて、城を出て自分の屋敷に帰りました。時間との勝負です。今回の事が陛下のお耳に入れば、絶対になかったことにされてしまう。
死ぬまで王族として退屈な人生を過ごすなんて考えたくなかったのです。
屋敷に着いた私は居間にいたお母さまに状況だけ伝えました。
「お母さま、王子に婚約解消を言い渡されました。少し一人になりたいので、誰も部屋に来ないでください。」
それだけ告げて部屋に入ります。
ドレスを脱いで、コルセットを外し下着姿になった私は長い髪を首元でカットし、それを束ねて手紙を添えます。
-長い間お世話になりました。 -
私は修道院に入ります。どうか探さないでくださいませ。 ノア
かねてより用意してあった男物のシャツとズボンを身に着け、ツバのついた帽子を深めにかぶり、貴重品を入れたリュックを背負って二階の窓から身を躍らせます。空中浮遊(レビテーション)で着地の衝撃を和らげ、一気に庭を駆け抜けて敷地の外に出ました。
私の胸は大きくないため、ダボっとしたシャツを着れば男の子に見えるはずです。
私は町と町を結ぶ定期馬車を乗り継いで三つ目の町で冒険者ギルドに立ち寄った。
「冒険者登録をしたいんですけど。」
「では、こちらの用紙にご記入をお願いします。」
「えっと、名前は……、名前の欄には家名も必要なんですか?」
「どちらでも結構ですよ。普通の方は名前だけですね。」
「じゃあ、ノラっと。この適性のところは?」
「剣士とか魔法使いと書いてもらえれば結構です。」
「ああ、それじゃあ賢者っと……。」
「えっ、賢者って……まさか、僧侶と魔法使いの両方をお持ちなんですか?」
「はい、一応……。」
「ダ、ダブルスタンダードの方が冒険者登録だなんて……。国の魔法師団に入らないんですか?」
「堅苦しいのは嫌いなんです。」
「普通はFランクからスタートしていただくんですが、何か実績を証明できるものがあれば優遇措置もありますが。」
「魔術学園の卒業証書があれば優遇されると聞いたんですが……、これでいいですか?」
「はい。確かに卒業証書でクラスも賢者で間違いないですね。では、魔術学園卒業者ということでCランクスタートとなり、ダブルスタンダードで1ランクアップ。Bランクとなります。」
登録料の銀貨5枚を支払って登録証である金属板を受け取りました。これで、他の国に行って冒険者になることもできます。
私は更に定期馬車を乗り継いで西の端を目指し、そこから隣国行きの船に乗ることができました。
屋敷を飛び出して3日、ついに私は自由という名の翼を手に入れたのです。
【あとがき】
令嬢シリーズ2作目です。お楽しみください。
魔術学園主催卒業記念舞踏会の会場で、王子は婚約者である私を指さしながらのたまわりました。
私の名前はノア。ファン王国の国立魔術学園を今季卒業したばかりの16才。今日は背中まで伸びたブロンドの髪を縦ロールに巻いて舞踏会用に作った紺のドレスを着ていますが、こんな千差一隅のチャンスを逃す訳にはいきません。
「私は構いませんが、陛下もご存じなのでしょうか?」
「父上は関係ない。俺の婚約者は俺が決める!」
「さようでございますか。これだけの衆目の中でおっしゃられた事ですから取り返しはつきませんね。」
「当然だ。」
「では、私はこれで失礼いたします。」
そういうと私は足早に会場を後にして馬車に乗り込みました。
現在の私は、家を出て城の一室で生活しています。魔術学園に通いながら王族としての教育を受けるという二重生活に耐えてきたのも、陛下から直接王子の婚約者として指名されたからです。
部屋に戻った私は、身の回りのものと貴重品だけカバンに詰めて、城を出て自分の屋敷に帰りました。時間との勝負です。今回の事が陛下のお耳に入れば、絶対になかったことにされてしまう。
死ぬまで王族として退屈な人生を過ごすなんて考えたくなかったのです。
屋敷に着いた私は居間にいたお母さまに状況だけ伝えました。
「お母さま、王子に婚約解消を言い渡されました。少し一人になりたいので、誰も部屋に来ないでください。」
それだけ告げて部屋に入ります。
ドレスを脱いで、コルセットを外し下着姿になった私は長い髪を首元でカットし、それを束ねて手紙を添えます。
-長い間お世話になりました。 -
私は修道院に入ります。どうか探さないでくださいませ。 ノア
かねてより用意してあった男物のシャツとズボンを身に着け、ツバのついた帽子を深めにかぶり、貴重品を入れたリュックを背負って二階の窓から身を躍らせます。空中浮遊(レビテーション)で着地の衝撃を和らげ、一気に庭を駆け抜けて敷地の外に出ました。
私の胸は大きくないため、ダボっとしたシャツを着れば男の子に見えるはずです。
私は町と町を結ぶ定期馬車を乗り継いで三つ目の町で冒険者ギルドに立ち寄った。
「冒険者登録をしたいんですけど。」
「では、こちらの用紙にご記入をお願いします。」
「えっと、名前は……、名前の欄には家名も必要なんですか?」
「どちらでも結構ですよ。普通の方は名前だけですね。」
「じゃあ、ノラっと。この適性のところは?」
「剣士とか魔法使いと書いてもらえれば結構です。」
「ああ、それじゃあ賢者っと……。」
「えっ、賢者って……まさか、僧侶と魔法使いの両方をお持ちなんですか?」
「はい、一応……。」
「ダ、ダブルスタンダードの方が冒険者登録だなんて……。国の魔法師団に入らないんですか?」
「堅苦しいのは嫌いなんです。」
「普通はFランクからスタートしていただくんですが、何か実績を証明できるものがあれば優遇措置もありますが。」
「魔術学園の卒業証書があれば優遇されると聞いたんですが……、これでいいですか?」
「はい。確かに卒業証書でクラスも賢者で間違いないですね。では、魔術学園卒業者ということでCランクスタートとなり、ダブルスタンダードで1ランクアップ。Bランクとなります。」
登録料の銀貨5枚を支払って登録証である金属板を受け取りました。これで、他の国に行って冒険者になることもできます。
私は更に定期馬車を乗り継いで西の端を目指し、そこから隣国行きの船に乗ることができました。
屋敷を飛び出して3日、ついに私は自由という名の翼を手に入れたのです。
【あとがき】
令嬢シリーズ2作目です。お楽しみください。
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