紛い物でも愛してる

無名ノ作家

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第1章 終焉への第1歩

█████

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 いつ以来だろうか。俺は山に住む化け物だった。自在に形を変えて生きる得体の知れない名も無きナニカ、だ。
 けどある男を喰らい、ごちゃごちゃとした記憶を持つようになり最初こそ混乱はあれど数時間で馴染めば記憶というものが何かなのかを理解し整理出来るようにもなった。俺には存在意義がない、ただ嫌われている、いや、忌み嫌われているものだって事は理解出来た。その理由が何かは知らないが……。
 それでも愛する人の為になら何をしたって守りたいと思える奴を見つけ満たされていくのが分かった。全てを手に入れたくて堪らなかった、核に触れ深くリンクした。拒絶されればその時は仕方ないと思ったが、拒絶どころか俺を飲み込む勢いで大歓迎されたんだ。そう、黎斗は俺の事を愛していた、嘘ではなく本気で……。リンクしてしまえば俺の力の残留を持つ黎斗は俺とほぼ一心同体、怪我をすれば怪我をして、頭痛が起これば頭が痛む、黎斗が死んだら……俺の今の状態は留められなくなる。
 つまり、黎斗が要となった。黎斗の身に起こることが俺にもリンクする。俺は黎斗が死ななければこの体を自由に出入りする事が出来なくなったということだ。ある意味縛りをかけたと言ってもいい、人間にとっては最悪なものだろう。
 最終的に強い縛りを掛けるには、黎斗の中にを残せば完璧なものになる。人間みたいな子孫繁栄ではなく、種が寄生する事で黎斗は人間ではなくなる。老いることも死ぬこともない、未来永劫俺と一心同体、俺の一部になるって事だ。
 黎斗は、弱い。だから俺みたいな化け物に狙われ愛される。それでいい、人間なんてろくなもんじゃない、簡単に裏切るクソ生物だ。……。

黎斗あきと、俺は今から職員室に乗り込んで悪い奴を懲らしめる。見届けてくれよ」
「悪い……? 分かった、日聖の格好良いところ見せてな?」
 にへ、と破顔する黎斗にドクン! と人間でいう心臓当たりが脈打った気がした。これが俗に言う『ときめき』なのだろうか。
「お前は可愛ええな、俺が知る人間の中でもダントツに……黎斗を取り込んだ俺は無敵や、その目で確り見届けや?」
 トイレを出ると外は暗く、トイレの前にネズミがぎょーさん勢揃いしとった。こっわい顔して……ほんま人間って、おもろいな。
「あ、あなた……沼地日聖さん、じゃないわね。飯沼黎斗さんから離れなさい!!」
「無理。黎斗は俺が食った、半分やけど」
「なっ!?」
 俺は背中に隠れながら様子を見ようと顔を出す黎斗を強く抱き寄せて見せつけた。半狂乱なババアが数珠とその手から淡い光を投げて来よるから、叩き落とす。
 ドゴーン! という地響きと黒焦げになる床、黎斗は俺にしがみついてくる。
「まだ分からんのか? 俺は黎斗を取り込んだ。黎斗を食った、つまり俺らは一心同体や。黎斗を殺さん限り俺は死なん、まあ……不老不死も同然やし殺すんは無理やけどな」
 そう言っても脆い人間に声は届かない、黎斗の腕を体育教師が掴み俺から引き剥がそうとしたもんやから、咄嗟に腕を引き千切る。ボタッと落ちる腕と男の汚い悲鳴、本来なら内側からジワジワ殺すんがええ声出すけど、今は格好良い俺を見せたい願望もあって自分の腕を鋭利な刃に変えその場全員の腕を切り落とす。ついでに足も切り落としてやったら合唱コンクールみたいになった。
「ふん、これ以上俺と黎斗に関わらんと誓うんなら元に戻したるよ? 但し裏切ったら即死んでもらう」
 全員が目をひんむき頷いてくる。俺はその様を見て、教師全員の胴体を刻んだ。そして頭をプチッと潰してやった。奇声を発したのは最後まで残されたババア教師だ。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……」
「おーお、怖い怖い。俺を殺すとか笑わせんなや、今のお前に何が出来るん? これ以上は時間の無駄や。死ね」
 ひんむいた目玉が俺を睨んだがその頭を潰した。やっと静寂が訪れる。学校の近くには道路があり車の走る音が聞こえてくる。
「日聖……はよ、帰らん? ここ、嫌や」
「待たせて悪かった。帰るか。俺らの家に」
 血を避けて通り過ぎ俺達は屋上に上がると黎斗を抱えて人のいない通りへ飛び降り、そこから2人で手を絡ませながら歩いて帰った。
「なあ、黎斗。目の前であんなもん見せてもうたけど、気分は大丈夫か?」
「うん、嫌な感じはあるけど平気。傍に日聖がおったし」
「ほんま可愛ええ……絶対逃がさへん、逃げ出したら俺の体内に閉じ込めんで? お前がどこに行こうと俺には丸わかりやねんから」
「そんな事しやんよ、大丈夫。俺は日聖しかもう信じひん……やけ、大丈夫」
 この愛おしさはどうすれば伝えてやれるのだろうか、そんな事を思いながら俺は黎斗に往来で人が来んのを確認してから、どろっどろに甘いキスをした。黎斗はビクッと体を小さく震わせながらも背に手を回し応えてくれる。それが最高に可愛らしく愛おしく、言葉が出て来んぐらい幸せを感じた。
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