小さなベイビー、大きな野望

春子

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ロッシュヴォーク家(2)

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大きな誌面の見出しに見知った顔が写ってる。
何を隠そう。アルミンである。
"ロッシュヴォーク家に大泥棒現れる。ロッシュヴォーク家の守護神に返り討ちにあう"
事の次第は、静寂の夜の時。
巷で噂の大泥棒軍団がロッシュヴォーク家に盗みに入った。
ロッシュヴォーク家は名家であり、かなりの財宝もある。名家に入るのは、泥棒にとっては、宝箱と同時。
念入りに計画されたものだった。
失敗したのは、ロッシュヴォーク家に盗みに入ったからか。或いはー。


巷で噂の大泥棒。
銀行や商人等の店を次々に看破。
施された術式の破壊に、警備員への暴行。
躊躇ない、盗みへの貪欲さは、瞬く間に、広がり、恐怖に感じる。
盗みのためなら、殺すのも躊躇いがないため、指名手配を受けてるが、賞金が高額に設定されている。
特にリーダーの賞金は、一人で、1500万。
狡猾で、残忍さと腕もあるため、妥当な賞金。
名家にもいくつも入ってるため、そう言ったやつらの家の警備体制の穴を開くことなど、造作もない。

今夜もその筈だった。月も出ていない真夜中。
古く、だが、価値のある館を持つロッシュヴォーク家が静まりかえったのを狙い、入る。
もちろん、警備魔法を解きながら。
(くく。簡単だぜ。)
男はニヤニヤしながら、かつ、慎重に動く。
それが、油断になるとは思わずに。



アルミンはぱちんと起きた。隣にはすやすやと眠る妹。普段なら朝までぐっすりだが、目が覚めた。
何度か、寝返りを打つが、寝れない。
アルミンはベットから出ていく。アイシャを起こさないように。
ペタペタと歩いて、廊下に出る。
明かりもついておらず、真っ暗だが、慣れたもの。
寝起きなのに、頭がクリア。
アルミンが起きたことに気づいた術が施された壁に飾られた小物たちが動く。
「アルミンちゃま。アルミンちゃま。もう夜でございますよ。ほら、お部屋にお戻りください。」
ランプのかたちが顔に変わる。
次々に明かりをつけていく。
「ちょっとだけ。」
アルミンは、歩いていく。階段を下がる。
「アルミンちゃま」
アルミンは制止を聞かずに階段を下がった。

ふう。すげえ。やはり、名家ってやつは違う。使用されてる備品すら、価値が高く、そこらに置いてある小物も売れば、旅行に行けるぐらいの価値がある。
部下に命じて、先行する部下は、次々と、宝を入れていく。ロッシュヴォーク家の宝の山である保管庫に向かう。
やはり、そこは厳重だと聞いている。慎重に。
しかし、廊下が長いな。
足音を立てないように、掛けていく。
先行する部下がたち止まる。何かに気づいた。
「どうした。」
「ボス…前から…。」
地鳴りのように腹から重心がかかるような重み。
ズシッズシッ。
暗闇の中から現れたのはー。


ロッシュヴォーク家の守護神。アニマだ。
夜中に、アルミンがアニマの部屋に来た。いいこにしてるからお散歩しよとアニマを部屋から出してしまった。ちなみに、アルミンは、アニマの背中に乗っており、気分高揚。
「キャっキャ。…?アニマ、どうしたの?」
背中からズイッと顔を出す。アニマは、警戒と言うか、中に侵入してきた輩に気づいていたし、ペットたちもゴーサインさえ、貰えば、闇夜の中から、狙っていたことに。
アニマは、アルミンが怖がらない程度に、小物程度に威嚇するまでもないが、やっておく。
「ひいいい。」
腰を抜かす。当たり前だ。アニマの体調は、三メートルは超えており、磨かれた鱗は、強度が強く、せめて、聖剣、魔剣を持ち要らなければ、傷がつかない。アルミンやリーサが歯を磨きたいというが、やらせて貰えない、鋭利すぎる牙に爪。一瞥しただけで、存在感ある。
「だーれ?お客さん?」
アルミンは下を見て、見知らない顔に目を丸くする。お顔を隠した人間が五人。
「何してるの?」
アルミンは純粋に聞いてる。が、あちらからしたら、そんな話を聞いてる余裕はなく、なんとか、立たない腰をあげ、逃走。
「鬼ごっこ。アルミン。得意だよ!アニマ。追いかけて!」
アニマは動いた。キャっキャするアルミンの甲高い声と悲鳴の嵐が館に響く。
シュールだ。ドラゴンに追いかけられる盗賊に、ドラゴンに乗っかる少年は楽しそう。
その騒ぎに、流石に出てきたギルベルト。
「…?アニマ。止まれ。」
ギルベルトは片手で合図。盗賊に攻撃。
捕縛。アルミンがあー!と叫ぶ。
「アルミン。何してる。夜中だぞ?」
「寝れないの。アニマとお散歩しようと思って。」
「アルミン。見なさい。これは盗賊だよ。犯罪者だ。どうして、追いかけてる?何かあったらどうしてた?」
「盗賊?お客さんじゃないの?」
「お客さんは顔を隠さないし、夜中にこんな格好で、ひとんちを徘徊しない。」
「お客さんだと思ったの…。」
「客にアニマを追いかけさせてもダメだ。いやその前に部屋から出すな。あと、異変に気づいたら、部屋から出るな。ガルシア。よしなさい。そんなもの、咥えても、旨くないぞ。吐き捨てなさい。」
ロッシュヴォーク家のペット、キング・ベアがリーダーの頭を咥えてる。
「お腹すいたの?ガルシア?」
「アルミン。降りてきなさい。お説教だ。」
「えー!」
アニマがアルミンをなだめる。渋々。
控えていたコルルが泣きながら、アルミンに説教をかました。


「いいなあ。アルミン。新聞に出てる!」
「おい。見ろよ。後ろの盗賊。ボロボロじゃないか。」
「ベイビー。来なさい!いい!盗賊とお客さんの違いはー。」
「なーに?おばちゃん。」
アルミンとリーサは良く似てる。盗人を客だと勘違いされては、困る。
もし、出たらの対処法。



アルミンは、叱られ、妹の慰めを受ける。

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