小さなベイビー、大きな野望

春子

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ヘレンおばちゃん

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今日は、フィルの姉にあたるヘレンがやってくる。
フィルと同じく、しっかり者で、リリーエの愛弟子。
ヘレンも料理好きで、特にお菓子作りが好き。
彼女の作るお菓子は、取り合いである。
ヘレンの持ってくる土産。
群がる甥と姪。
「ヘレンおばちゃん。いらっしゃい。」
「はい。お邪魔するよ。…あなたたち、目線が袋にいってるわ。挨拶が先よ!リリーエ先生から教わったでしょう!!」
獲物を狙うかのように見る甥たちに苦笑い。
「姉さん。いらっしゃい。」
「久しぶりね。マルクスは相変わらず?」
「ええ。みんな、元気だわ。」
袋に飛び付く下の子らを眺める。
「お待ち、あんたたち。立派に挨拶をしてからにしなさい!」
「リーサ出来るよ!」
張り切る。
「いらっしゃい。ヘレンおばちゃん。ねえねえ。この袋に何入ってるの?」
「半減だわ。お菓子から離れなさい。」
「いらっしゃい。ヘレン。」
ツェリだ。ゆったり、現れる。
「ツェリ。今日は、リリーエ先生から教わったおもてなしを見るからね。」
「あら。嫌よ!聞いてないわ。身内同士の気楽なティーパーティで良いじゃないの!」
「ねえねえ。おばちゃん、切り分けて。」
「はいはい。」
「マルクスはいるの?あの子は、いまだにツェリに甘いのだから。」
「私はすべて、いいこじゃないの?お兄様に聞いたら良いわ。」
自信は誰よりも強い。


きゃああと大喜びが広がる。
しっとりした生地に生クリームたっぷりの完熟なイチゴ。お誕生日ケーキみたいだ!
「ヘレン。ツェリにちょっとだけ、優しくしてあげて。ツェリも頑張ってるんだから。」
「耳タコが出来るほど、聞きあきたわ。サラトガ、あなたもよ?」
「善処はしてるんだ。」
「ふう。」
ヘレンは頭が痛いわと頭を撫でる。
生クリームたっぷりの完熟なイチゴケーキを貪るリーサの口回りは、クリームでベタベタ。
フィルがすかさず、口を拭いてやる。
「フィル。リーサにやらせなさい。」
「つい。」
何でもやってしまうと、気づかなくなる。そして、リーサは、やってもらうことが、当たり前に感じてしまう。
「ヘレンおばちゃん。今日はお泊まり。」
「帰るわよ。お泊まりする予定じゃないもの。」
「えー!」
「ねえ。お兄様。ヘレンに私はちゃんとしてるといって?」
「わかってるよ。」
「聞こえてるわよ。ツェリ。」
ケーキはあっという間になくなる。絶品過ぎる。お菓子は正義、ケーキの前では、誰もが、大人しくなる。

夕食は、久々の姉妹による手料理。
摘み食いはご法度。何故ならば、ヘレンが厳しいから。
まだかまだかと待つ。
キッチンから流れてくるいい香り。
お腹が鳴りまくる。
運ばれてくるチキンバードのグリル焼き、レタスの挽き肉巻きにグリーンサラダ。玉ねぎとトマトのスープ。
「いただきます!」
家族団欒の食卓。
お客さんが来てるので、お酒が食卓に登る。
ワインだ。
「ん、良い出来。」
香ばしいチキンに舌鼓。
「ようやく、食べれたわ。」
味見係は今日は出来なかったので、ようやく、食べれる。
「みんな。元気で良かったわ。」
ヘレンは、と二つ町を離れた場所に、夫と二人暮らし。巣立った娘夫婦が五分ぐらいの場所に住んでる。
「リーサ、良い子・オブ・ザ・イヤーだよ!」
「自信は、ツェリに似て、良いわ。」
「自信を持つことは良いことよ!」
どや顔のツェリ。
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