小さなベイビー、大きな野望

春子

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惑女(まじょ)来る。

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リーサは見上げた。
母の友人だと知らなければ、警戒していたかも知れない。こう見えて、人見知りをするのだ。
「あら。こんにちは。リーサ。」
ゆったり微笑む彼女は、女性ながらも、身長が高く、190近い。
ストロベリー・ブロンドの髪と、彼女特有の目が印象的。
「いらっしゃい。マリンダ。」
彼女はマリンダ。フランツの学友で、ツェリと仲良し。マリンダの夫は、サラトガの同僚のティム。
今日は母の友人たちが集まりにやってくる。ちなみに従兄弟たちは、避難という遊びに出掛けており、不在。
「フィル。お邪魔するわよ。これ、お土産。」
「ありがとう。まあ。美味しそう。」
リーサは、母にマリンダが来たと知らせに走る。


「夏の贈り物には、いつも頭を抱えるの。お義母様たちのは、特に。」
うんうんとうなずくフィル。
マリンダと義実家の義両親とは仲は良好だが、それでも、気を遣う。
「好きなものを贈ればいいじゃないの?」
「そうよね?私も今年は、定番の物を贈ったわ。」
ツェリとカイヤは、首をかしげる。ちなみに、もう一人、マーガレットは、土産のケーキに舌鼓。
「ツェリ。カイヤ、あなたたち、言われない?ちょっと気を遣いなさい?って。」
「言われないわ。」
「言われないわね。」
サラトガの母親は既に亡くなってるが、父はいる。しかし、文句を言われたこともないし、寧ろ、礼を言われる。カイヤは、義両親は存命で、仲も良好。カイヤの為に、メイドを増やした位に甘やかしてる。
「フィルが苦労するわね。」
フィルが、毎年、頭を悩ませながらも、贈り物を選んでいる。
「文句をいうような人達じゃあないし、私のこの体質にも理解してくれる優しい人達だもの。それに好きな人の両親よ?少しは、良い嫁が来たと思ってほしいじゃない?」
「わかるわ!」
フィルが力強く、うなずく。
「あんたが人に嫌われるようなことはないよ。」
マーガレットが笑う。
「あたしの魅了の力を言ってるんなら、そうだけども。一度もしたことないわ。」
マリンダは、魅了の力を持つ体質。
魅了の力を持つ子は、決められた機関で、コントロールの学習が必須。義務である。
とある昔に、魅了の力が知れ渡る前には、その力の影響力が、わからなかった。
知らないが故に、魅了の力を持った人に魅入られる人が事件を起こしたりして、騒動が起きた。
力を持った人を守るための事故防衛とむやみに、人を魅了の力を掛けないように、コントロールしなければならない。
マリンダは特に魅了の力を強く、持った子供で、魅了の力を持つ子の特有の美貌に瞳。
これは血縁や遺伝などは関係なく、持って生まれた性質。
コントロール出来ない幼い子は、機関に入るまで、苦労する。
トラブルは日常茶飯事。
しかもマリンダの場合は、異性によく、効いてしまい、それはマリンダを同性から遠ざけるものだった。
唯一、異性に効かなかったのが、フランツである。
蓋を開けてみれば、フランツは、生まれ持った魔力が強く、抵抗する力が強かったためである。
トラブル続きのマリンダの理解者でもあった。
今でも親交があり、フランツに何かあれば、手助けしたいと願うほど…例えるなら、親友に近い。
フランツには、後に、ティムとの交際の相談まで、聞いて貰った。ティムは、魅了の力を跳ね返すような力を持つような特別な人ではないが、誰よりも温かく、優しい人。惑女<まじょ>とあだ名をつけられてる自分にも、それほど、魅力的なんだと、誉めてくれる。
ティムの両親も自分を理解してくれる。だからこそ、失態を犯さないよう、気を引き締めている。
「例えば、義実家に行けば、行儀よくするでしょ?」
「常にしてるわ。」
「私も。」
「ままは、ダグラスおじいちゃんにわがまま、いうよ!カイヤは、ジオルクのおじいちゃんに、あれがほしいっていうよ!」
「リーサ、黙りなさい。」
「ねえ?未来の姑には、従順になりなさい。」
バラすリーサに、ツェリとカイヤは、両方の頬をつねる。
フィルが、物言いたげな目付きで二人を見てるが、可憐にスルーする二人。
「マーガレットは論外にしても、あなたたち、きちんとしてると思っていたわ…。」
「してるわよ。」
「そうよ。」
リリーエやカイヤの母親からは再三に渡る義実家への礼節は、叩き込まれてるが、性根が、お姫様。
変わらない。
ちなみにマーガレットの場合は元になるが、元姑と気が合わず、やめれば良いのに、マーガレットに対して、元姑は、喧嘩を売った。陰湿極まりなかったが、マーガレットは売られた喧嘩は、3倍に返す。
加えて、プライドが高い。
収拾がつかなくなるまで、世の中のかの有名な嫁姑バトルが続いた。
まあ、マーガレットが勝ったのだが。
「リーサ、未来の姑である私に、もっと敬いなさい。」
「その前に私よ。母である私をもっと優先になさい。」
「ままとカイヤがリーサのお願いを聞いたら良いと思うー。」
「フィル、大変ね。」
「…。」
遠い目をするフィル。
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