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春の国

月夜の密会

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『わたしはそなたが現れてから、毎日が楽しいぞ』


俺も。……うん。楽しい。
ここに来てから。ラグナルは、それこそ魔法使いみたいに。
何だって、望んだものを作ってみせてくれた。

たまには失敗もして。その失敗を元に、もっとすごいものをって、研究してさ。
科学の話は、わくわくするし。メカやロボが嫌いな男の子なんていないよな。

楽しかった。本当に。


ウルジュワーンのこと。
一瞬でも、忘れそうになっちゃうのがこわいくらい。


◆◇◆


あれは。
実際にあったことのか、夢なのか。あやふやになりそうなんだ。

”夏の国”でのことは。もう、俺の記憶にしか残ってないんだから。


額に印はなくて。
身体にも、ウルジュワーンに愛された痕跡も残ってない。


だけど。夢だったことにして忘れたくはないんだ。
忘れたら。

みんな、嘘になっちゃう気がして。
俺の気持ちも。


『忘れてしまえ。今のことだけ考えれば良い』
ラグナル。

『……わたしとの結婚を。本気で考えてくれないか?』


真摯な瞳で。
告げられてしまった。

ラグナルのことは、嫌いじゃない。一緒にいると楽しいし。
でも。


『……無理にでも。今夜、そなたを抱く』
宣言するように。

ラグナルに、肩を引き寄せられてしまう。


『わたしを恨め。……そして、他の事はみな、忘れろ』
手を掴まれて。

熱い、と思ったら。
左手の甲に。赤い、三日月のような印がついていた。


これ、もしかして。
”春の国”の。妃の印……?


◆◇◆


「んう、」
ラグナルに抱き締められて。キスされてしまった。


「……ふ、だめ、だってば、」

こんなの、いけない。
俺には、好きな人がいるんだから。浮気はよくない。

抗おうとしても。力強い腕からは、逃げられない。


……あれ? くらくらする。
何で。


『飲み物に、媚薬を入れておいた』
……な、何考えてんだ。

力が入らない。身体の力が抜けていってしまう。
じゃあ。身体が熱くなってきたのも、媚薬のせいなのか?


『……これは、そなたの意思ではない。わたしの欲望を押し付けているだけだ』

そうだけど。
何で、そんな当たり前のことを言うんだよ。


服を脱がされて。
身体に、くちづけが落とされる。

ラグナルはテーブルの上にあった小さな瓶を取って。中からとろりとした液体を出した。

……これは?
視線に、ラグナルが答える。

『香油だ。そなたがわたしを受け入れる場所を慣らすのに使うものだ』


……自動人形。さっき、飲み物と一緒に持って来てたんだ。
最初から、こうするつもりで、俺をここに誘ったの?


◆◇◆


足の間に、指を這わされて。
反応してしまった俺のを擦られながら、指を入れられてしまう。

駄目なのに。
何で。


「ああっ、」
指で、そこを撫でられて。イっちゃった。

嘘だろ。
俺の身体、気持ちを裏切りすぎだ。

何で、反応しちゃうんだよ。


『媚薬のせいだ。イチ。……感じても、そなたの意思ではない』
ラグナルの声も手も、優しくて。

こんなの、ずるいよ。


「……っ、や、……駄目、それだけは、やめて、」
足を抱え上げられて。

熱いものが、あてがわれて。……入って来てしまう。ラグナルの。


『わたしはあの日。森の中で、頼りなげにわたしを見上げていたそなたに。……ひと目で恋をしたのだ』

だから、連れ去ったのだと。
愛おしそうに俺を見て。蕩けそうな、甘い表情で。

今、そういうこと言うの。ずるいと思う。


「や、あっ、あっ、あ、んっ、ひぁ、」
ラグナルの膝に乗せられて。
向かい合わせの形で、下から突き上げられてる。

「やぁ、……だめ、」
ラグナルは、俺の涙を舌で舐め取って。


『奥の方も、入口も。狭いな……まるで、初めてのようだ。身体の方も、無垢に戻っているのかもしれんな?』
そう言って。唇を笑みの形にした。

超絶美形はずるい。
微笑むだけで、ドキドキさせるから。


媚薬を使われて。無理矢理、こんな、ひどいことされてるっていうのに。


◆◇◆


ラグナルは、目を細めて。
『……”夏の国”へ向かう最中、ぎゅっとしがみつかれて。何度、こうしてやりたいと、思ったことか』

「ひ、あっ、あ、あぅ、」
力強い腰に、ズンズン突き上げられる。


……飛竜に、乗ってた時?

「ひゃぅ、」
同じように、前傾姿勢になって。角度がかわる。

深くまで。入ってくる。


『もし、そなたの相手がいたら。そやつの目の前で、めちゃくちゃに犯してやろうかと思った。飛竜の上で、そうしたかった』
耳元で囁かれる。

吐息は焼けるように熱い。その視線も。

『……そなたは、わたしの理性に感謝するべきだぞ?』


理性なんて。
今、こうやって。無理矢理、してるくせに。

王が望めば、できないことはない。拒めば、死罪ということも出来る。

だから。
俺には逆らえないだけで。


『……くっ、イチ。もう、わたしのものだ……っ!』
ぎゅっと抱き締められて。

……中。出されてる。
ラグナルの。……熱いのを感じて。


『イチ、……わたしの、可愛いイチ。……ずっと、共に、』


ああ。どうしよう。

俺、浮気者なんだ。
さっきまではあんなに、ウルジュワーンを恋しがっていたのに。

俺のことが欲しいって。こんなに必死になってるラグナルも。可愛いとすら、思ってしまった。


サイテーだ、俺。



◆◇◆


いや、サイテーなのはラグナルだよ。
常識で考えて。


だって。媚薬盛って、ゴーカンするってどうなのよ。
普通に犯罪者じゃん。相手は王様、この国の最高権力者なんだし。俺には逆らえないじゃん。
うん。俺は悪くない。ノットギルティ。


「も、いい加減、に、やめ、」 
ラグナルの背中に爪を立ててやりたいけど。力が入んない。

何度したら気がすむんだよ。何回目だよ。
もう、明け方近いのに。

窓の外、うっすら明るいよ? 眠いんだよ。寝かしてくれよ。


寝たくても、ゆさゆさ揺すられて起こされるし。
たまにガンガン突いてくるし。


なんか、気がついたらラグナルの寝室? に移動してるし。
設計図っぽいのがあちこちに散らばってるから、ラグナルの寝室だよな、これ。

寝室まで運んだなら、そのまま寝ようよ。寝かせてくれよ!
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