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魔界の王に懐かれたようです。

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「見たところ、病には見えないが……?」

顔色は白いが。
魔族なので元々なのかはわからない。


魔王は、寂しげに微笑んでみせると、シャツの前を開けた。

「……う、」
これは。

心臓のあたりに、赤黒い塊があり、周辺の皮膚ははひび割れたように亀裂が入っている。
亀裂は、ほぼ全身に広がっているようだ。

見れば、美しい顔にまで。


この亀裂が全身に回った時、死ぬという。
これでは、もう。

余命いくばくもないのではないか。


◆◇◆


『人間の生命力をいくら取り込んだところで、は治らない。不治の病なんだ』


思わず、テオやワルターを見るが。
完全に固まっている。

いきなり魔王が出現して、こんな打ち明け話だ。
混乱しているのだろう。


俺もおそらく、かなり混乱している。

だから。
混乱ゆえに、勝手をしても。許して欲しい。


「ウル」
『はい?』

「わかった。手打ちだ。絶対にもう、魔族に人間を襲わせないと約束しろ」
魔王は、虚をつかれたように目を瞬かせた。

『あ、ああ。約束する。さっきも言ったろ? ゲートも閉ざし、もう人間は襲わせない。私もこれ以上、大切な仲間を失いたくないんだ』
嘘を言っているようには見えない。

仲間を失いたくない、など。魔王のくせに、優しいことを言うものだ。

しかし。
そのような慈悲の心があるのなら。信じよう。


「ならいい。……ヒール、」
俺は魔王の赤黒い塊に、手を置いた。

光が溢れる。


『……嘘。マジで、』
魔王が、自分の胸を見て驚いていた。

赤黒い塊と亀裂は、跡形なく消え失せていた。


『伝説の僧侶、すげえ……』
目をキラキラさせている。

お前もあのラノベ、読んだのか……?
そういえば黒騎士もゼンショーと言っていたような。魔界でも流行ってるのか。


◆◇◆


「約束、守れよ?」

『わかった! すぐに魔界全域に伝えてくる! ありがとう!』
輝くような笑顔で、魔王は消えた。

素直な性格のようだ。
魔王なのに。


「勝手なことをして、すまなかった。犠牲になった者もいるのに……」
テオとワルターに向き直ると。

『はあ、魂が抜けるかと思った……』
ワルターがその場でへたり込んだ。

魔王の出現で、その膨大な魔力に圧倒されてしまい、身動きができなかったらしい。

ああ、魔力が少ないと、抵抗力が低いのだったか。
大変だな。


『まさか、魔王が和解を申し出るとは……予想外すぎだな』
テオは、力が抜けたように笑ってる。

『やったな。これで、無事解決だ』

解決か。
そうか。それならよかった。


しまった。
……意識が遠くなっていく。

またか。


◆◇◆


「んっ、……う、あ、……ん、」

ああ。
毎度のことながら、申し訳ない。


「テオ、」
自分の上で腰を振っている男を見上げた。

テオは苦笑している。
また、出力最大でやってしまったようだ。


ワルターは、一足先に国王の下へ報告に走ったそうだ。

少なからず、ほっとした。
誰かに見られながら回復行為をのは、さすがに恥ずかしい。


『俺に、こう、されたくて。わざと、やってるんじゃ、ないよな?』
腰を揺すられる。


「あ、……んっ、そこ、ばっかり。やぁ、」

そんなわけ、ないだろう。
否定したいのに。おかしな声しか出せない。

『……そうだったら、嬉しいんだけどさ』
テオ。


「ん、……また、大きく、」

中のものが、大きくなったのを感じた。
思わず締め付けてしまう。

腹の中いっぱいに、テオを感じる。


『連続で、するなんて。愛がなきゃ、できないんだから、な?』

ああ。ありがたいと思ってる。
男相手に、何度も勃たせるどころか、射精するなんて。普通、できない。

いくら、人助けといえど。テオは、すごいな。


テオは、にやりと笑って。
『っく、……いくらでも、搾りとって、いいんだ。善正なら、何度でも、勃つ、から』

そうか。いいのか。
「なら、一滴残らず、頂こうか」

『へ!?』
驚くテオの頬に、キスをした。


『……なにしてるの?』

「っ!?」
目を開けると。

魔王の白皙の美貌が、真横にあった。


訝しげな顔をした魔王が、覗き込んでいたのだった。


◆◇◆


結界内に、そうほいほい簡単に侵入しないで欲しいのだが。

だが、女神の結界ならともかく、人間の張った結界など。
雑魚魔族なら防げるが、魔王レベルには通用しないようだった。


『見ての通り、愛の営みだ』
テオ。真顔で何を言っているのやら。

早くこれを抜け、と背中をバシバシ叩く。

『私が魔界に連絡しに行ってる間も待てない?』
口を尖らせるな、魔王。

威厳はどこへやった。


衣服を身に着けながら、魔王に告げた。
「俺は異世界人だから、失った魔力を回復するにはこうしないといけないんだ。不可抗力だ」

そう。
あくまでもこれは、回復手段なのだから。


『魔力なら、私もありあまるほどあるよ。分けようか?』
と。
手を握られたら、流れてきた。

溢れてくる、力。

完全に、回復しているのがわかった。
凄いな。さすが魔王。


「……これは、楽だな」
回復に時間も掛からないし。

『ね? ゼンショー、貴方は私の命の恩人だよ。だから、これからは私に頼っていいからね!』
魔王は満面の笑顔だった。

魔王だというのに、こんな軽くていいのだろうか。


『!?』
テオは涙目だった。
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