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結婚

異世界ファンタジー

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リカルドは、魔術師に対しては魔法で。騎士や兵士には武術で。
圧倒的な力の差を見せつけた上で、それまであった国を徹底的に叩きのめして制圧し、新たに国づくりをした。


リカルドが頂点に立ち、見定めた国王を大陸ごとに置き、制定して以来。
国同士の争いは起きていないという。

ただ、雇用の問題や、自衛・防犯のためにも。弱体化しないよう軍隊を維持し、兵を教育し、訓練する必要があるという。
警察兼、自衛隊のようなものか。


それには賛成だ。
山賊などの悪党は、何度叩き潰しても人がいる限り、湧いてくるものだからな。

真の意味での平等など存在しない。
人は美醜、能力、財産などに差を見つけては嫉妬し。他人を見下し蔑む生き物だ。

同じものを与えられようと、あちらの方が大きいと思いこんだり、他人の物まで欲しがる強欲な者も出るだろう。

貧困防止、または犯罪抑制には道徳を教え、教育を受けさせる必要もあるが。
サイコパスのように、さしたる理由もなく悪事を働く人間は、一定数存在するものだ。


今回の召喚妨害のようなテロ行為もあったことだし。
いくらリカルドがこの世界で最強の大魔導師だろうが、一人で全世界を見張るのも限界があるだろう。


*****


「わかった。私で良ければ、兵力増強訓練に協力しよう」

武道家としての志も叩き込んでやらねば。
弱きを助け強きを挫く。一意専心、明鏡止水。和の心。

「最初は、私に教えて欲しい」
前のめりである。

国王自ら練習台になりたい、と言い出すとは。
やはりマゾヒスト……。


私が直接生徒を指導するのではなく、リカルドが武術を覚えたら魔法で魔動人形の教師を作り、全国へ派遣させるそうだ。
単にツガイを独占したいだけなのか。

自分の国だけ兵を強くはせず、極端に戦力を偏らせないのも、国同士のバランスをとるために必要なのだろう。
差が付き過ぎても、それは争いの元になるから。

国政とは、面倒なものだな。


「まずは柔軟体操をし、受け身の練習からだな。早速やってみようか?」
カーペットの上なら痛くないだろう。

「その前に、私たちの結婚式だ!」


何よりもまず、正式に結ばれたことを公に報せるのが先だろう、と拗ねられた。
元の世界であれば、マスコミに対して結婚報告をするようなものか?

今まで恋人を作らず仕事一辺倒の人生だったので、恋愛ごとには疎いのだ。
朴念仁で申し訳ない。


しかし、いい年をして拗ねなくてもいいだろうに。


*****


結婚式の準備をしている間。
礼服の採寸や儀式の作法などの予習を済ませた後、この世界のことを勉強することにした。

ここに骨を埋めるつもりならば、リカルドの力になるべく最低限以上の知識をつけなければならない。


この世界は球形ではなく、平面である。

……この時点で頭がどうにかなりそうになったが。
何しろ異世界なので常識が覆るのも仕方がない、と納得しておく。納得しなければならない。

このサンチダージェ国のある大きな大陸と、大小の陸地がいくつか存在し、周囲は海である。
平らな世界で海の水はどうなっているのかと思えば。

世界の最果て、四方には壁があり、水はそこで対流しているので、波などが発生する。


空には透明な天井が存在しているので。ある程度上に行くと、それにぶつかるらしい。
この”天井”が、オゾン層のように太陽光線や宇宙線などから守っているのだろうか?

太陽と月のようなものがこの箱型の世界の周囲を一日かけて回っている、というのが定説だそうだ。

一日24時間、週7日。一年は12か月という暦は同じようだが。
周期は一定なので、閏年は存在しないようだ。


さすがは異世界である。
こちらの常識をことごとく覆してくれる。

引力は。重力はどうなっているのかとか、考えるだけ無駄なのだろう。
魔法がある時点で何でもありであると考えるべきか。


大地を巨大な亀や象が大地を支えているよりはマシか……。


*****


「異世界というのは面白い。丸い大地が太陽の周囲を回っているのか」

こちらとの違いを話したら。
リカルドも興味を覚えたようだ。

波は月の引力により生じ、公転して重力が発生しなければ人は大地に足をつけていられない。太陽が近すぎれば灼かれ、遠すぎれば凍る。
奇跡的なバランスにより生命が生まれた惑星が地球である。


今まで、本に書かれている”常識”を疑ったこともなく。
この箱庭のような”世界”の外のことなど考えたことも無かったが。

宇宙、銀河などの話を聞いて、天井の外はどうなっているのか。
確かめてみたくなったという。

箱型のこの星を、太陽と月が周回しているなら。夜になると見える星の光の存在も謎である。


”目”を飛ばして天井の外を見て来る、と言い。
呪文を唱え、しばらく目を閉じていたが。

「……ん?」

首を傾げて。
ぱちぱちと目を瞬かせた。


「驚いた。こちらの常識が覆る大発見だ。穂波は、歴史に名を残すことになる」

「はあ?」
どういうことだ?
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