彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

すずと

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第2話 高嶺の花の生着替え

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 桜の花も散ってしまった5月。

 新入生を歓迎するかのように咲き乱れていた校内の桜も、すっかり緑色に変わってしまった。

 平凡な偏差値の公立校、大翼おおよく高等学校。

 生徒数は全学年で800人程度。部活動は盛んではなく、全体的に弱い。学校イベントも他の学校と代わり映えしない。
 大きい翼で将来羽ばたいて欲しい、なんて思いが込められた校名だが、悲しいかな、特徴がないのが特徴のそこら辺の高校。そんな平凡な学校。校舎の形もそこら辺にありそうな形の校舎。

 本日は朝寝坊ということで社長出勤となった。春眠暁を覚えずとはいったもの。

 最近、ようやくハブられた現実を受け入れつつある。

 ただ俺は、『二股クソやろう』というレッテルを貼られ、後ろ指を刺されてしまっている。以前のような仲間と、わいわいする生活を送ることはできずにいた。

 誤解を解こうにも、すでに貼られたレッテルを覆すのは難しい。本当は綾香が二股クソやろうと叫んでも、俺の言葉は誰にも届かない。

 そんな言われようじゃ学校に来る気も失せ、素行が少しずつ悪くなってしまっている。素行が悪いと言っても遅刻とか、小さな反抗みたいなものだがね。

 小心者の俺にはこれくらいしかできない。

 こんな時間に正門から校舎までの道を歩いている人はいない。

 駐輪場には自転車通学の生徒の自転車。色とりどりの自転車が止まってある。駐車場には車通勤の先生の車。軽自動車からファミリーカーと、様々な車が止まってあり、高そうな車は校長先生かな、なんて想像してしまう。

 誰かのなにかがあるのに、ここには俺1人、なんて世界征服をした魔王のような気分になる。世界は俺のもの、みたいな感じ。マジでそんなこと起きないかな。

 バカなことを考えながら、何の特徴もない昇降口に入り、お気に入りのスニーカーから赤色の便所スリッパみたいな上履きに履き替える。

 この学校は学年で色が変わり、1つ上は緑色、1つ下は青色、そして俺の学年は赤色となっている。体操服とかも色分けされている。

 赤色の便所スリッパはダサく、歩きにくいったらないが、上履きにカッコ良さを求めてもいないし、廊下は走ったら危ないので、この上履きのデザインは理にかなっているのかもしれない。

 ペコペコと便所スリッパを鳴らしながら3階にある2年6組の教室へとやって来る。

「唯一の救いは、全員違うクラスになったことかな」

 元仲間達とは2年でクラスが分かれた。それが二股事件の唯一の救いといっても過言ではないだろう。

 教室のドアに手をかけて、違和感があるのに気が付いた。

 教室から声が聞こえてこない。

 一瞬、まじで俺以外の人間は消えたと思い、わくわくしたが、そのわくわくは瞬時に消え失せた。

「この時間体育だわ」

 この時間帯。2年6組は2年7組と合同で体育が行われている時間割だ。

 我が校は特徴がないのが特徴なのだが、なぜか体育は1組だけがハブられて、2、3組。4、5組。6、7組合同となる。

 特徴がないからそんな変な組み合わせにしたのだろうか。誰が決めているのか少し気になる。

 ガラガラ。

 教室のドアを開けた。

「きゃ!」

 いるはずのない教室から女の子の短い悲鳴が聞こえてくる。

 電気の点いていない教室内だが、窓の外から入ってくる太陽の光で、教室内は明るかった。

「え……」

 なので、ガッツリ着替えをしている女子生徒の姿がバッチリと見えた。

「わ、わわ……」

 ブレザーとワイシャツは脱いで、トップはブラジャーだけ。

 スカートを脱いでいる最中に俺が入ったらしく、スカートは膝下まで下りており、パンツもガッツリ見えた。

 黒の大人びた下着姿の女子生徒は高校生離れしたモデル顔負けのスタイル。ランジェリーのモデルをやらせたら、その下着はめちゃくちゃ売れるのではなかろうかと思うほどに美しい姿。

 彼女の顔は長い前髪を右に流して、右目が少々見えないが、かなり整った顔立ちをしている。長い髪が胸の部分まで伸びており、髪で若干隠れたブラジャーが逆にエロさを倍増させてくる。

 同じ中学出身で、2年で同じクラスになった高嶺の花こと東堂優乃とうどうゆうの

 アイドル顔負けの可愛くも大人びた顔の美少女の顔が赤く染まっているのがわかり、ようやく俺は我に返る。

「ご、ごめん!」

 すぐ出ていかないとこれセクハラ案件だ。

 焦って出て行こうとすると。

「あ、あ、ひ、枚方くん! ま、待ってください!」

 呼び止められてしまう。

 俺はその場でピタッと止まる。

 東堂は、あわあわとしており、なんとかスカートの中からスマホを取り出すと、ブラジャーにパンツ姿で迫ってくる。

「え? は?」
「えと、えと、えっと……」

 意味がわからないが、東堂は、あわあわしたまま俺の隣に立つ。

 そして、スマホのインカメを作動し、「んんっー」と精一杯腕を伸ばしている。

「は、はひ、ポーズ」
「い、イェーイ?」

 突然言われてピースサインを作ると、カシャっと東堂のスマホからシャッターが切られた。

「や、やった。やりました」
「なにを?」

 未だ謎めいた行動に俺は訳がわからなかった。

「こ、これでわたしも陽キャの仲間入りです」

 そして訳のわからないセリフを吐いていた。

「へ、はへ、はへはへはへ」

 さらに訳のわからない怪しい笑みを見してくる。

 怖い。

 怖いけど、東堂の裸を見ている俺の股間は、ほぼ破裂していた。パンツがちょっと濡れてる。男ってほんと単純。

「あ、あの、東堂……」
「はへぇ?」
「まったくもって意味がわからないけどさ。と、とりあえず、陽キャは下着で迫って来ないぞ」
「え、え、え? よ、よ、陽キャうぇーい族の皆様方は、こういった写真で仲間意識を保つのでしょう?」
「そりゃただの変態だ」
「へん……たい……?」

 自分の姿を改めて見つめる東堂。

「変態です♪」
「なんで嬉しそうなんだよ」

 なぜか東堂は嬉しそうに言ってのけた。
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