59 / 61
第59話 高嶺の花はヘタれている(東堂優乃視点)
しおりを挟む
わたし、東堂優乃は京太くんが好きだ。
中学の頃から憧れの存在。
少しでも彼に近づきたくて、わたしは高校デビューを決意した。
京太くんに近づいて、肩を並べられる存在になりたい。
肩を並べられる存在になったら告白して、恋人になりたい。
そう思っていた。
『俺が好きなのは優乃だ! 優乃以外と付き合う気はない!』
体育館裏で叫んでくれた言葉。
京太くんの口から放たれた言葉はわたしの胸を容赦なく貫いた。
もう、頭の中は京太くんで一杯。
今すぐに彼に会いたくて、抱きしめて欲しくて、ずっと一緒にいたい。
その思いとは裏腹に、わたしの態度はとても最悪である。
カフェのバイトでも変な態度を取ってしまうし、今だって京太くんから逃げるように教室を出て行ってしまった。
「はぁ……なにやっているんですか、わたしは……」
トイレの個室でため息を吐いてしまう。
京太くんの思いをこちらだけが知っているズルい状態。だから、告白は絶対にわたしからしなければならない。
なのに、京太くんを目の前にするとどうして良いかわからなくなってしまう。
これだからわたしという陰キャは困るんです。糟谷さんの時くらいの勇気を今こそ出すべきなんです。
なのに……。
キーンコーンカーンコーン。
朝のHRを告げるチャイムが鳴り響く。
教室に戻らないといけない。
京太くんのいる教室に。
ドキンと心臓が跳ねる。
彼の名前を思うだけでこれだ。目の前にいると心臓がもたない。
わたしのバカ。
なにを弱気になっているんですか。
相手の気持ちを知ってヘタレるな。
わたしから告白するんだ。
高校デビューを決意したのはなんのため?
憧れの京太くんと恋人になりたいからでしょうが。
目標が目の前にいるのに、わたしはなにをへこたれているのですか。
勇気を出せ。絞り出せ。
パンパンと頬を叩いて気合いを入れる。
「よしっ!」
決めた。
今日、絶対に告白する!
♢
ああん! やっぱり無理ですー!
授業が始まり、自分の席に座ると、目の前に京太くんの背中が見える。
もう、その時点で心臓が口から出そうな程にドキドキしている。
相手の気持ちがわかっているから、こちらから好きというのを言うだけなのに、相手の気持ちがわかっているからこそ意識しまくりで、どうして良いかわからない。
こんなんで告白なんて絶対に無理。
休み時間になる度にトイレに引きこもるくそ陰キャ。それがわたし。
「わたしなんかが京太くんと肩を並べるなんて、あまつさえ恋人なんて無理なんですよ。ふ、ふふ」
便所に引きこもる度、じょじょに負の感情にさいなまれてしまう。
「そうだ。LOIN! LOINで告白をしましょう」
相手の気持ちを知っているのに、スマホに頼るなんて卑怯かもしれません。
ヘタレなわたしを許してください、京太くん。
そう思ってスマホを取り出す。
『わたしは京太くんが好きです』
唐突な文だが、今のわたしにはこの文章が精一杯。
震える手で京太くんへLOINを送ろうとしたその時であった。
「あ……」
ぽちゃん。
手が震え過ぎて、スマホが便器にゴールイン。
「ちょ! ゴールインするのはわたしと京太くんでしょうがっ! なんでスマホが便所にゴールインしているのですか!」
慌てて便器に落ちたスマホを取り出す。
汚いとかそんな感情よりも、スマホの画面が真っ暗になっていたことに絶望する。
「ガッデム」
これは神による裁き。
現代文明に頼らずに、ダイレクトアタックせんかい、このヘタレがというお導き。
「ふ、ふふ。いいでしょう。こうなったらやってやりますよ!」
♢
あ、はい。結局、無理でした。
わたしのばか、あほ、ヘタレ、クソ女。
どうしてわたしはこうなのでしょう。
どうしてわたしは……。
京太くんを前にするとどうしようもなくなってしまう。
このままじゃ京太くんに嫌われてしまう。
わかっている。
わかっているのに、どうしてこの足は逃げるように正門に向かっているのか。
放課後だから?
違う。
わたしがただのヘタレ陰キャだからだ。
なにが高嶺の花だ。ただのヘタレ陰キャじゃないか。
憧れの京太くんと仲良くなれて良い気になっていた。恋人になれると思っていた。
実際は、彼の思いを知ると逃げ出すくそ女。
こんなんで彼と肩を並べられるはずもない。
頭ではわかっている。でも、止まらない足。
「優乃おおおおおお!」
空から聞こえてくる声は神様がわたしを呼び止めたかのようであった。
ピタリと止まって空を見上げる。
正確には屋上から聞こえる声。
屋上には京太くんがこちらに向かって大きな声を発した。
「好きだああああああ!」
「!?」
屋上から正門に向かっての告白。
周りに人が何人もいるのにも関わらず発せられる京太くんからの告白。
こんなことをすれば悪目立ちしてしまう。
じょじょに元に戻りつつある彼の高校生活が、また逆戻りしてしまうかもしれない。
それと引き換えにわたしを逃がさないという覚悟。
本当に京太くんは凄い。本当にヒーローみたいな存在だ。
彼の覚悟を無碍にするなんてことを絶対にしてはいけない。
ドンドンと強く鼓動を放つ心臓。苦しくて今にも吐きそう。
でも、そんなものは無視してわたしは正門とは逆方向に駆け出した。
京太くんが覚悟を見してくれたんだ。
ここでわたしが逃げちゃ絶対にだめだ。
わたしも覚悟を決め、屋上に向かって走り出した。
中学の頃から憧れの存在。
少しでも彼に近づきたくて、わたしは高校デビューを決意した。
京太くんに近づいて、肩を並べられる存在になりたい。
肩を並べられる存在になったら告白して、恋人になりたい。
そう思っていた。
『俺が好きなのは優乃だ! 優乃以外と付き合う気はない!』
体育館裏で叫んでくれた言葉。
京太くんの口から放たれた言葉はわたしの胸を容赦なく貫いた。
もう、頭の中は京太くんで一杯。
今すぐに彼に会いたくて、抱きしめて欲しくて、ずっと一緒にいたい。
その思いとは裏腹に、わたしの態度はとても最悪である。
カフェのバイトでも変な態度を取ってしまうし、今だって京太くんから逃げるように教室を出て行ってしまった。
「はぁ……なにやっているんですか、わたしは……」
トイレの個室でため息を吐いてしまう。
京太くんの思いをこちらだけが知っているズルい状態。だから、告白は絶対にわたしからしなければならない。
なのに、京太くんを目の前にするとどうして良いかわからなくなってしまう。
これだからわたしという陰キャは困るんです。糟谷さんの時くらいの勇気を今こそ出すべきなんです。
なのに……。
キーンコーンカーンコーン。
朝のHRを告げるチャイムが鳴り響く。
教室に戻らないといけない。
京太くんのいる教室に。
ドキンと心臓が跳ねる。
彼の名前を思うだけでこれだ。目の前にいると心臓がもたない。
わたしのバカ。
なにを弱気になっているんですか。
相手の気持ちを知ってヘタレるな。
わたしから告白するんだ。
高校デビューを決意したのはなんのため?
憧れの京太くんと恋人になりたいからでしょうが。
目標が目の前にいるのに、わたしはなにをへこたれているのですか。
勇気を出せ。絞り出せ。
パンパンと頬を叩いて気合いを入れる。
「よしっ!」
決めた。
今日、絶対に告白する!
♢
ああん! やっぱり無理ですー!
授業が始まり、自分の席に座ると、目の前に京太くんの背中が見える。
もう、その時点で心臓が口から出そうな程にドキドキしている。
相手の気持ちがわかっているから、こちらから好きというのを言うだけなのに、相手の気持ちがわかっているからこそ意識しまくりで、どうして良いかわからない。
こんなんで告白なんて絶対に無理。
休み時間になる度にトイレに引きこもるくそ陰キャ。それがわたし。
「わたしなんかが京太くんと肩を並べるなんて、あまつさえ恋人なんて無理なんですよ。ふ、ふふ」
便所に引きこもる度、じょじょに負の感情にさいなまれてしまう。
「そうだ。LOIN! LOINで告白をしましょう」
相手の気持ちを知っているのに、スマホに頼るなんて卑怯かもしれません。
ヘタレなわたしを許してください、京太くん。
そう思ってスマホを取り出す。
『わたしは京太くんが好きです』
唐突な文だが、今のわたしにはこの文章が精一杯。
震える手で京太くんへLOINを送ろうとしたその時であった。
「あ……」
ぽちゃん。
手が震え過ぎて、スマホが便器にゴールイン。
「ちょ! ゴールインするのはわたしと京太くんでしょうがっ! なんでスマホが便所にゴールインしているのですか!」
慌てて便器に落ちたスマホを取り出す。
汚いとかそんな感情よりも、スマホの画面が真っ暗になっていたことに絶望する。
「ガッデム」
これは神による裁き。
現代文明に頼らずに、ダイレクトアタックせんかい、このヘタレがというお導き。
「ふ、ふふ。いいでしょう。こうなったらやってやりますよ!」
♢
あ、はい。結局、無理でした。
わたしのばか、あほ、ヘタレ、クソ女。
どうしてわたしはこうなのでしょう。
どうしてわたしは……。
京太くんを前にするとどうしようもなくなってしまう。
このままじゃ京太くんに嫌われてしまう。
わかっている。
わかっているのに、どうしてこの足は逃げるように正門に向かっているのか。
放課後だから?
違う。
わたしがただのヘタレ陰キャだからだ。
なにが高嶺の花だ。ただのヘタレ陰キャじゃないか。
憧れの京太くんと仲良くなれて良い気になっていた。恋人になれると思っていた。
実際は、彼の思いを知ると逃げ出すくそ女。
こんなんで彼と肩を並べられるはずもない。
頭ではわかっている。でも、止まらない足。
「優乃おおおおおお!」
空から聞こえてくる声は神様がわたしを呼び止めたかのようであった。
ピタリと止まって空を見上げる。
正確には屋上から聞こえる声。
屋上には京太くんがこちらに向かって大きな声を発した。
「好きだああああああ!」
「!?」
屋上から正門に向かっての告白。
周りに人が何人もいるのにも関わらず発せられる京太くんからの告白。
こんなことをすれば悪目立ちしてしまう。
じょじょに元に戻りつつある彼の高校生活が、また逆戻りしてしまうかもしれない。
それと引き換えにわたしを逃がさないという覚悟。
本当に京太くんは凄い。本当にヒーローみたいな存在だ。
彼の覚悟を無碍にするなんてことを絶対にしてはいけない。
ドンドンと強く鼓動を放つ心臓。苦しくて今にも吐きそう。
でも、そんなものは無視してわたしは正門とは逆方向に駆け出した。
京太くんが覚悟を見してくれたんだ。
ここでわたしが逃げちゃ絶対にだめだ。
わたしも覚悟を決め、屋上に向かって走り出した。
11
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる