彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

すずと

文字の大きさ
60 / 61

第60話 彼女に二股されて仲間からハブられたら、こんなにも可愛い彼女ができました

しおりを挟む
 俺、枚方京太は東堂優乃が好きだ。

 どうやら俺の思いを優乃は知っているみたいだな。

 好きバレしているのであれば、さっさとこちらから告白してしまおう。

 今日、俺は優乃に告白する。

 そう決めたんだけど……。

「あいつ、今日はとことん俺を避けているよな……」

 放課後の屋上で、安全策の金網を握りしめ正門の方を見る。

 ひとり黄昏ながら今日一日のことを振り返る。

 休み時間になる度、優乃の席はもぬけの殻になっているし、スマホは電源でも落としているのか繋がらない。

 ここまであからさまに逃げられると、ネガティブな気持ちも芽生えるってもんだ。

「はぁ……あ、優乃発見」

 さっさと帰ったと思ったが、俺を警戒していたのかどうなのか。少しばかり時間をずらして下校しようとしている。

「今日はタイミングが合わなかったな」

 焦らず、慌てず、後日で良い。告白はタイミングだろう。

 そう思う反面、今日、告白をするという決意を固めたというのに、このまま今日という日を逃して良いのだろうかと思ってしまう。

 なんだか、無償に今日じゃないといけない気になってくる。

 今日、告白しないと永遠に告白できない気持ちになってくる。

 そもそもだ。どうしてあいつは逃げるんだ。逃げるなよ。

 なんだか腹が立ってきたな。

「優乃おおおおおお!」

 これから行うことは、俺の高校生活がまた暗くなるかもしれない。

 せっかく、徐々に戻ってきていた高校生活を白紙に戻す行動なのかもしれない。

 屋上から叫ぶだなんてどうかしている。周りになんて言われるかわかったもんじゃない。

 だけど、もう止まらなかった。

「好きだああああああ!」

 叫んでしまった。

 周りの生徒達がざわめき出す。

「あーあ、やっちまった。やっちまったな。こんなん悪目立ちが過ぎる。これで俺は痛い奴認定されて、まぁた暗い高校生活を送ることになるだろうよ」

 ぶつぶつとちょっとばかしの後悔をこぼす。

「ははっ。優乃の奴、体をピクリとさせてやがる」

 ざまぁみろ。今日一日、俺から逃げた罰だ。

 このまま優乃は逃げるように帰るだろう。

 だが、俺の予想はハズレ。

 優乃はぎこちない走り方で校舎へと駆けだした。

 突然の告白と、違和感ありありの高嶺の花のダッシュで、周りにいた生徒達が唖然としている。

「……ま、今後のことはどうでも良いか。あとは優乃に俺の思いをぶつけるだけだ」

 優乃がこちらに来てくれる真実に、後悔の念が消えた。

 清々しさが勝っている状況で、屋上のドアが開いた。

「優乃……」
「京太くん……」

 高嶺の花のボッチがこちらに歩み寄ってくる。

 風で靡く髪を耳にかけながら俺の前に立つ。

「ごめん、優乃。お前を高校デビューさせるって話、俺にはできなくなった」
「え……」

 突然の切り出しに、優乃の瞳は不安そうに揺れているのがわかる。

 屋上から好きと言っておいて、なんでそんなことを言うのかわからない様子だ。

 ちゃんと伝えないといけないな。

「俺は優乃のことが好きになっちまった。恋人にしたくなっちまった。高校デビューさせて、みんなの人気者なんかじゃなくて、俺だけの優乃にしたくなっちまったよ」

 案外、すらすらと自分の思いというのは伝えられるものなのだなと思いながら、真っすぐに彼女を見る。

「だから、俺と付き合ってくれ」

 最後のシンプルな告白の言葉に、優乃はフリーズしたかのように固まってしまった。

 固まりながらも、優乃の右目から一筋の涙がこぼれ落ちた。

「あ……」

 声を漏らしながら手で涙を拭うが、溢れた涙が止まることがなかった。

「嬉しい、のに、なんで……」

 ぐすと鼻をすすりながら、何度も何度も涙を拭う。

「わた、しは……わたし、は……」

 そのうちに諦めて、大粒の涙を流しながらこちらに訴えかけるように声を発した。

「中学の時から、京太くんに憧れて、でも、絶対に手の届かない存在だから、遠くから見ることしかできなくて、それで良くて……。

高校が同じだと知った時に嬉しくて、同じ学校に通えるってだけで嬉しくて、それが2年になって同じクラスになれて、お話できるようになって、一緒に帰れたりも、サボったりも、できるようになって……。

京太くんがいつも側にいてくれるようになって、わたしの憧れは恋心になって、京太くんと恋人になりたいって思ってて、そんな時、体育館裏で、京太くんがわたしのこと、好きだって叫んでくれて……」

 やはり体育館裏でのことは聞かれていたか。

 今となってはどうでも良いか。

「だから、わたしから絶対告白しないといけないのに、なのに、京太くんから告白してくれて、だから、えっと、それで、あの……」
「優乃」

 涙を流しながらあたふたしている彼女の名を呼ぶ。

「は、はい」
「俺と恋人になってくれるか?」

 同じ質問に今度は素直に答えてくれる。

「わたしは京太くんの恋人になりたいです」

 彼女からの答えに、胸が熱くなる。

 ぽかぽかとしてなんだか雲の上にいるような気分だ。

 そのまま優乃と見つめ合い、俺達は引かれ合うように唇を重ねた。

 ファーストキス。

 初めてのキスはただ唇を重ねるだけ。

 だけど、それだけでも優乃を感じることができて。

 離したくない。でも、息を止めているから段々と呼吸が苦しくなって。

 それは優乃も同じなのか、ピクピクとしているのがわかる。

「あ……」

 意を決して俺から離れると、優乃が名残惜しそうな声を漏らす。

「え、えへへ、息を止めていたのであのままだったら昇天してしまっていました」

 優乃が恥ずかしさを誤魔化すように言ってのける。

「でも、京太くんとのキスで昇天できたのであれば本望ですが」

「ばか。そんなんで昇天されてたまるか」

 額にデコピンしてやる。

「あで」

 額を痛そうに押さえる彼女は、拗ねた顔をしてこちらを睨む。

「酷いです、京太くん。せっかく、あまあまな空気のファーストキスだったのに台無しです」
「これからもっと優乃と色んなことすんのに、こんなところで昇天されたら困るだろうが」
「色々って、こんなこととか?」

 優乃は悪戯っぽく笑いながら俺の唇を奪ってくる。

「ちょ……」
「っぁ……。ふふ。京太くんにファーストキスを奪われましたからね。セカンドキスはわたしからではないと」
「いきなり積極的だな」
「だって、わたし達は恋人ですからね。わたしは京太くんの彼女さんなのです」

 えっへんと胸を張る優乃。

 立場が変わった途端に強くなる彼女に少々呆れてしまうが、そういうところが可愛いと思ってしまう。

 彼女に二股されて仲間からもハブられたけど、俺にこんなにも可愛い彼女ができました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

処理中です...