婚約破棄ですか?結構ですわ。ですが違約金は国家予算になります

しおしお

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第11話 王都の祝宴

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第11話 王都の祝宴

王都では、盛大な祝宴が開かれていた。

場所は王宮大広間。
天井からは無数のシャンデリアが輝き、壁には王家の紋章が掲げられている。

その中央で、王太子アドリアン・ルミナスは満足げに立っていた。

隣には、ノエリア・ヴァルディア。

彼女は純白のドレスを身にまとい、まるで花のように可憐に微笑んでいる。

今日の祝宴の理由は一つ。

王太子の新たな婚約発表。

すでに王都中がその話題で持ちきりだった。

「まさか、あの冷酷令嬢を捨てて新しい婚約者とは」

「しかも妹の方でしょう?」

「なんて美しい方なの」

貴族たちは噂話を楽しんでいた。

多くの者がノエリアを褒める。

そして同時に、アルシェラを嘲笑する。

アドリアンは満足そうに周囲を見渡した。

「どうだ、ノエリア」

彼は得意げに言う。

「皆、君を歓迎している」

ノエリアは少し恥ずかしそうに微笑んだ。

「そんな……わたくし、まだ王太子妃にふさわしいか不安です」

その声は小さく、か弱い。

しかし周囲にはしっかり聞こえる。

「なんと慎ましい」

「前の婚約者とは大違いだ」

「まったくですな」

貴族たちは頷き合う。

アドリアンはさらに満足する。

彼はワインを手に取った。

「アルシェラのような女は、王妃には向かない」

軽い調子で言う。

「冷たくて、感情がない」

貴族の一人が笑う。

「確かにその通りです」

「噂では使用人にも厳しかったとか」

「王太子殿下は良い決断をなさいました」

アドリアンは得意そうに頷いた。

「だろう?」

ノエリアはうつむきながら言う。

「お姉様も、きっと幸せになります」

少し震える声。

「わたくしのせいで追い出されたのですから……」

その言葉に、周囲が一斉に反応した。

「なんと優しい」

「やはりノエリア様は素晴らしい」

「本当に心が美しい」

貴族たちは次々に称賛する。

ノエリアは困ったように微笑んだ。

しかしその瞳の奥には、ほんの一瞬だけ冷たい光が宿る。

彼女は成功を確信していた。

社交界は完全に自分の味方。

アルシェラはもういない。

そう思っていた。

その時だった。

一人の貴族が声を上げた。

「ところで」

彼はワインを飲みながら言う。

「アルシェラ様は今どうしているのですかな」

アドリアンは肩をすくめる。

「さあな」

「公爵家に戻ったのだろう」

貴族たちは笑った。

「社交界から消えましたな」

「王太子妃の座を失えば当然でしょう」

「もう戻って来られない」

その言葉に、ノエリアは少しだけ目を細めた。

だがすぐに悲しそうな表情を作る。

「……お姉様」

小さく呟く。

それを見て貴族たちはさらに感動した。

アドリアンは満足げに言う。

「気にするな、ノエリア」

「もう終わったことだ」

「これからは君の時代だ」

ノエリアは静かに頷く。

「はい、殿下」

だがその瞬間。

広間の扉が開いた。

使者が入ってくる。

王宮の書記官だった。

彼は少し慌てた様子で言う。

「王太子殿下」

「どうした」

アドリアンは眉をひそめる。

「祝宴の最中だぞ」

書記官は一瞬迷ったが、すぐに言った。

「報告がございます」

「アルグレイス公爵領より書簡が届きました」

その名前に、何人かの貴族が顔を上げた。

アルグレイス公爵。

北方の強大な領主。

王国でも有数の軍事力を持つ男。

アドリアンは少し不機嫌そうに言う。

「それがどうした」

書記官は続けた。

「その……」

一瞬、言葉を選ぶ。

「アルグレイス公爵が、ある人物を城に迎え入れたとのことです」

アドリアンは興味なさそうに言う。

「好きにすればいい」

だが次の言葉で、空気が変わった。

「その人物の名は――」

書記官は言った。

「アルシェラ・ヴァルディア様でございます」

一瞬。

大広間が静まり返った。

アドリアンの表情が固まる。

「……は?」

ノエリアも一瞬だけ目を見開いた。

貴族たちがざわめく。

「アルグレイス公爵だと?」

「なぜあの男が?」

「公爵令嬢を?」

書記官はさらに続けた。

「さらに」

「アルグレイス公爵は、アルシェラ様を正式な客人として迎えたとのことです」

ざわめきが大きくなる。

それはただの客人ではない。

公爵城の客人とは、特別な意味を持つ。

アドリアンは不機嫌そうに言う。

「……偶然だ」

「そうに決まっている」

だがその声は、少しだけ硬かった。

ノエリアはすぐに微笑む。

「きっとそうです」

優しく言う。

「お姉様は優秀な方ですから」

「どこに行っても歓迎されます」

だが彼女の指先は、グラスを強く握っていた。

わずかな震え。

それを誰も見ていない。

ただ一人を除いて。

王宮宰相が、遠くからその様子を見ていた。

そして静かに呟く。

「……なるほど」

アルグレイス公爵。

あの男が動く時。

それは決して偶然ではない。

祝宴の音楽が再び流れ始める。

だが王都の空気は、少しだけ変わり始めていた。
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