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しおりを挟む辿り着いた芸術の街ゴッゴーシュは、とても景色の美しい港町だった。
「素晴らしい……ここが僕達の新たな出発点だね」
「はいっ」
国も街も、自分達も変わった。
真新しい今に、わたし達の胸は自由と希望で満たされている。
「まずは住む所を探さないとね。 僕は画材道具を売っている店を探したいから、ヴィオラに任せてもいいかな?」
「はい、お任せください」
愛する人に信頼して任せてもらえる。 その幸せを噛み締めながら、ついにやけてしまいそうな顔を引き締めてわたしは動き出す。
「絶対にくじけません、だってこんなに幸せなんですもの」
家探しはとても楽しかった。
公爵令嬢ではなく、平民として気軽に街の人達と話すのは新鮮で、事情を伝えると親切な方が色々と街の事を教えてくれ、貸家も紹介してくれた。
「ここが良さそうですっ」
お金も節約したいし、わたしは中心部から離れた家賃の安い、小さな家を借りる事にした。
こうした作業も貴族の娘では出来ない経験。 これからここで二人で生きていくという実感が湧き、心が高揚しているのを感じる。
それからハキーム様と合流し、家に荷物を置いたわたしはすぐにまた動き出す。
「それではお仕事を探してきます。 ハキーム様は絵に集中して、家事もわたしに全てお任せください」
「すまないヴィオラ。 きっといつか幸せにするから」
「……わたしはもう、幸せです」
自分で言って恥ずかしくなったわたしは、赤い顔を見られたくなくて小走りに家を出た。
でも、本心にそう思うのです。
夢を追うあなたを支える事が、本当に嬉しいから。
「……まったく、破産寸前の荒んだ家に比べたら、こんなに気ままで良い暮らしはないよな。 ―――愛してるよ、ヴィオラ」
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