21 / 33
21,
しおりを挟む「……クリードを手伝ってきやす」
「他の奴を行かせるからいいわ、アンタは馬番でもしてなさい」
わざわざ密告の機会を与えまいとソフィアはフィンを止める。 釘を刺したものの、言動や表情は危うさを感じさせるからだ。
「別に……何も余計なことは言いやせんよ、お嬢さん」
「……そう。 まあいいわ、どうせアンタにはどうにもできないんだから。 身を滅ぼすだけなのは忘れないことね」
◇
ゴッゴーシュより小さな町ですが、ここも賑やかで楽しそうですね。
あっ、クリード様が戻ってきました。
「「「クリード様っ」」」
――えっ。
「最近あまり町に来ないから心配してましたっ」
「ちゃんと食べてますか? これ、お野菜持っていってくださいっ」
「う、うちの店で焼いたパンもどうぞ……よ、良かったら小屋までお料理しに行きましょうか……」
……クリード様が女の子に囲まれてしまいました。
「何言ってんのアンタ! ルール違反でしょっ!」
「だ、だってソフィアは行ってるし……」
でも、わたしも良く港の皆さんに食べ物を頂いてましたし、この町の人達も親切なのですね。
「あ、あの……」
「――はい? あ、先程の……」
「ええ……俺ぁフィンっていいやす」
「初めまして、ヴィオラです。 ……もしかして、お片付けを手伝いに来てくれたのですか?」
「ええ、まあ……そうでさぁ」
「ありがとうございますフィン様、助かります」
「――いっ、いや、俺ぁ “様” なんてモンじゃねぇよ……」
さっきは大きな声を出してましたが、本当は物静かで良い人なのですね。
「待たせたなヴィオラ、さあ帰ろう」
「はい、フィン様がお片付けを手伝ってくださるそうです」
「すまんなフィン、あとこれを小屋まで頼む」
「――おお!? なっ、なんで俺が? お前がもらったんだろっ!」
女の子達から頂いた食材をフィン様に預け、クリード様はわたしの傍にやって来ました。 そして、
「私には役目があるのでな」
「――きゃっ」
突然抱きかかえられたので、驚いて思わず声が出てしまいました……。
「ちょっ、ちょっと何よアレ!?」
「くっ、クリード様なにを……!」
「だ、誰なの……」
「あ、あの、わたしはもう歩けますので……」
「何を言ってるんだ、まだ少し痛むだろう」
そうですが、こんな人前で……。 少し、恥ずかしい……です。
「けっ、んなことやってっからお前は男に嫌われんだよっ」
「フィン、これも鍛錬だ。 私は必ず騎士になる、その気持ちの大きさは以前と段違いなんだよ。 なあヴィオラ」
「……はい」
そうでしたか、そういう事でしたら……。
クリード様が騎士になる為の鍛錬ですもの、恥ずかしいですが、わたし……協力します……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
100
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる