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「……クリードを手伝ってきやす」

「他の奴を行かせるからいいわ、アンタは馬番でもしてなさい」

 わざわざ密告の機会を与えまいとソフィアはフィンを止める。 釘を刺したものの、言動や表情は危うさを感じさせるからだ。

「別に……何も余計なことは言いやせんよ、お嬢さん」

「……そう。 まあいいわ、どうせアンタにはどうにもできないんだから。 身を滅ぼすだけなのは忘れないことね」




 ◇




 ゴッゴーシュより小さな町ですが、ここも賑やかで楽しそうですね。 

 あっ、クリード様が戻ってきました。


「「「クリード様っ」」」


 ――えっ。


「最近あまり町に来ないから心配してましたっ」
「ちゃんと食べてますか? これ、お野菜持っていってくださいっ」
「う、うちの店で焼いたパンもどうぞ……よ、良かったら小屋までお料理しに行きましょうか……」


 ……クリード様が女の子に囲まれてしまいました。


「何言ってんのアンタ! ルール違反でしょっ!」
「だ、だってソフィアは行ってるし……」


 でも、わたしも良く港の皆さんに食べ物を頂いてましたし、この町の人達も親切なのですね。


「あ、あの……」

「――はい? あ、先程の……」

「ええ……俺ぁフィンっていいやす」

「初めまして、ヴィオラです。 ……もしかして、お片付けを手伝いに来てくれたのですか?」

「ええ、まあ……そうでさぁ」

「ありがとうございますフィン様、助かります」

「――いっ、いや、俺ぁ “様” なんてモンじゃねぇよ……」

 さっきは大きな声を出してましたが、本当は物静かで良い人なのですね。


「待たせたなヴィオラ、さあ帰ろう」

「はい、フィン様がお片付けを手伝ってくださるそうです」

「すまんなフィン、あとこれを小屋まで頼む」

「――おお!? なっ、なんで俺が? お前がもらったんだろっ!」

 女の子達から頂いた食材をフィン様に預け、クリード様はわたしの傍にやって来ました。 そして、


「私には役目があるのでな」

「――きゃっ」


 突然抱きかかえられたので、驚いて思わず声が出てしまいました……。


「ちょっ、ちょっと何よアレ!?」
「くっ、クリード様なにを……!」
「だ、誰なの……」


「あ、あの、わたしはもう歩けますので……」

「何を言ってるんだ、まだ少し痛むだろう」

 そうですが、こんな人前で……。 少し、恥ずかしい……です。

「けっ、んなことやってっからお前は男に嫌われんだよっ」

「フィン、これも鍛錬だ。 私は必ず騎士になる、その気持ちの大きさは以前と段違いなんだよ。 なあヴィオラ」

「……はい」


 そうでしたか、そういう事でしたら……。

 クリード様が騎士になる為の鍛錬ですもの、恥ずかしいですが、わたし……協力します……。


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