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しおりを挟む「……おいおい、コレ本当にお前一人で仕留めたのか?」
「あの、クリード様、もう着いたので……」
「軽すぎるな。 ヴィオラ、もっと食べるんだぞ」
「――聞いてっかクリード!?」
そう言われましても、ちゃんとお食事は頂いているのですが……――あっ、そうです!
「クリード様、どうか昼食はわたしに作らせてください」
「いや、だが……」
「お願いです」
「……わかった」
「なあ、俺って実在してる?」
ふふ、良かった。 もう大分動けますし、わたしだってお役に立ちたいのです。
「さて、始めるかフィン」
「……良かったわ、俺居たんだな」
◇
私とフィンはキンググリズリーを外で解体、ヴィオラは床など部屋の掃除をしている。 まだあまり動いて欲しくないんだけどな。
「お前よ、確か騎士になるまで女になんか構ってる暇ねえって言ってたよな」
作業をしながらフィンが話し掛けてきた。 今までの私を知っている人間なら疑問に思って当然だ。 でも今は違う、寧ろヴィオラがいなかったら騎士の夢は諦めていた。
「そうだな。 だが今は、彼女が居ないと騎士になっても仕方ないとさえ思える」
「何だよそれ? そりゃ可愛い子だけどよ、順番逆になるなんて何がそうさせたんだ?」
何が、と訊かれればそれは、
「私は彼女の命を二度救った。 そして、彼女は私の夢を二度救ったんだ」
こんな事あるか? こんなの絶対に……
「――運命としか思えない。 間違いなくヴィオラは私の運命の人だ」
「……あそう。 男前は良いよな、んな役者みてぇな台詞とても言えねぇわ」
―――そうだ。 二人きりになった事だし、さっき気になった事を訊いてみよう。 あの時のフィンはどう考えても変だった。
「フィン、お前何故ヴィオラが昨晩部屋に居たのを驚いていた?」
「……ああ、そりゃ女なんかっつってたお前がよ、昨日もあんな可愛い子と楽しんでたのかって思っただけよ」
「……それだけか?」
「他に何があんだよ」
そんな風には見えなかったんだけどな。 もっと、何か重大な事に慌てているように見えた。
「しっかしこの肉の量、毛から爪まで色々金になるぜ? お前毎日一頭仕留めりゃひと財産築けるなっ!」
「馬鹿言え、こんな奴毎日相手にしてたら命がいくつあっても足りん」
◇
「――クリード様、フィン様、昼食がご用意出来ましたっ」
「……なあクリード、あのフィン様ってのやめさせてくんねぇか、小っ恥ずかしいわ……」
「わかったヴィオラ! すぐ行くよっ!」
「――なんかお前話し方変わってねぇか?」
力仕事でお腹も空いたでしょうし、お二人には沢山食べて頂かないと。 特にクリード様には……
「……ヴィオラ、これは……」
「っ……おいおい、こりゃ―――何人前だ?」
「立派な騎士様になる為には身体作りが大事ですっ」
「それはそうだが……」
「クリード様がもっと強くなるように、わたし心を込めて作りました」
「――ムッ……よし、頂こうッ!」
はぁ……勇ましくお肉を頬張る姿……たくましくて素敵です。 沢山食べる男性って魅力的なのですね。
「フィン様もお手伝いありがとうございます。 沢山食べてくださいねっ」
「んっ? ああ……すまねぇな」
「とんでもありません、クリード様は良いご友人を持って幸せです」
「いや……俺ぁそんな……」
ここに戻ったらわたしも何かお仕事を探したいですね。 キレイな川も近くにあって家賃もかかりませんが、お食事は沢山お出ししたいですから。 これは夢への投資ですっ。
「あ、あのよ、玄関のドア直しとくからよ」
「まあっ、すみません、ありがとうございます」
「いいんだ、ほんと……悪かった」
「……?」
「――ヴィオラ」
「はっ、はい?」
「どれも美味いッ! ヴィオラの料理は素晴らしいな!」
………美味しい、なんて、そんなこと………
「力がつきそうだ、ありがとう」
これまで、言ってもらったことがありませんでした。
「……ありがとうございます」
「最高だ、なあフィン」
「ああ、こりゃうめぇや!」
応援ありがとうございます!
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