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第448話 赤ちゃんドラゴンの救出
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「お~い! この紐掴んで引っ張り上げて~! とう!」
アリスがドラゴンめがけてフックがついたロープをぶん投げると、ドラゴンはフックを見事キャッチしてそのまま物凄い勢いで天井に向かって飛んでいく。
「皆~しっかり捕まってるんだよ~!」
「ぎゅ!」
アリスに張り付いた赤ん坊達は皆アリスにこれでもかというぐらいしがみついていた。ドラゴンは赤ん坊とはいえその爪はするどい。既にアリスは体中傷だらけだが、これはとても懐かしい痛みだ。そう、ドンが幼い時にもよくこうなった。
やがて吹き抜けになった所を抜けた途端、あちこちから矢が飛んできた。それに驚いた一匹の赤ん坊がアリスから手を離してしまう。
「あ! おチビ!!」
アリスが叫んだのとほぼ同時に、何か黒い影が目の前を過った。カールの袖だ。カールはアリスが落とした赤ん坊を腕を極限まで伸ばして上手くキャッチしてくれた。
「ありがとう! カールさん!」
「ええ、次が来ますよ! あなたも落ちないように私にしがみついていなさい」
カールはそう言って足元に赤ん坊を置いて銃を構えた。崖のてっぺんから矢でアリス達を狙うのは、間違いなくアメリア隊の下っ端だろう。
すぐさま銃をかまえたカールは下っ端達の足をめがけて連射していく。本当はこんな武器は使いたくないが、アンソニーと違って体術がからっきしだったカールは銃の腕を磨くしかなかった。毎日毎日練習に明け暮れた結果が、まさかこんな所で役に立つとは思わなかったカールだ。
けれどこれではいくら撃っても埒が明かないし、弾が尽きるほうが確実に早い。アリスだけでも先に逃してしまわなければ、カールがそんな事を考えていたその時。
「さあ皆~! いっけ~!」
「?」
突然、空が真っ黒に覆われた。ふと見上げると、そこには何十頭ものドラゴン達が真っ直ぐに、まるで矢のように降り注いでくる。そんなドラゴン達を一頭のドラゴンの上から先導しているのはリアンとオリバーだ。
「リー君! モブ!」
「アリス、今のうちに抜けてくっすよ!」
「うん! レッドラゴン! いっけぇ~!」
「ぎゅぎゅー!」
矢のように降り注ぐ仲間たちの間を真っ赤なドラゴンは空に向かって駆け上がっていく。アリスは赤ちゃんドラゴンを落とさないようにできる限り全員の手や羽根や足を掴み、風圧に耐えた。
やがてドラゴンはゆるやかに旋回をし始めた。ふと下を見ると、ドラゴン達は次から次へと崖で四方を囲まれた穴に吸い込まれていく。崖上に立っていたアメリアの兵士達も既に一人も居ない。
「もう大丈夫だよ、ありがとう」
「ぎゅ」
アリスの言葉にドラゴンはゆっくりと降下しはじめた。やがて先程アリス達が襲われた場所まで近づくと、アリスはロープを離して地面に飛び降りる。
「ふぃ~皆、無事かな?」
地面に降り立ったアリスの体からドラゴンの赤ん坊達がゾロゾロと剥がれ落ちて、その場で飛び跳ねてレッドラゴンの足にまとわりついていく。
「あと一人……あ、来た! カールさん、こっちだよ~!」
アリスが手を振ると、それに気づいたカールが軽く手を上げて抱いていた赤ん坊ドラゴンを地面に下ろした。
「ほら、行きなさい。もう捕まってはいけませんよ」
「ぎゅぅ」
「しばらくの間この星は危険です。もうじきあなた達の耳にも入るでしょう。その時は皆でレプリカに移動するのですよ」
「ぎゅ?」
「はは、分かりませんか。その時が来たらここへも使いを寄越します。それまで親の元を離れないように」
「ぎゅ!」
赤ん坊ドラゴンは元気よく返事をして崖から飛び降りて赤いドラゴンの上に着地すると、仲間たちとの再会を喜んでいる。
「レッドラゴン、ここらへんはまだアメリア達の残党がいるかもしれないから、今すぐ全員でこの場所を離れてバセット領に一時的に避難して! ドンちゃんに伝えておくから! 真っ黒のドラゴンがあなた達をきっと歓迎してくれる」
「ぎゅっ!」
「良し!」
元気のいいドラゴンの返事にアリスは親指を立てて崖の亀裂からまた中に戻り始めた。
「ここは蟻塚か何かなのかな?」
無事に地面に着地したノアはそこら中の穴から這い出てくるアメリア兵を見て皮肉げに笑った。上からアリスの雄叫びが聞こえてきたのでふと見上げると、崖の上にも兵が居て、アリスめがけて次々に矢を放っている。
「お嬢様を狙うなんて命知らずな人たちですね。ルーイさん、ユーゴさん、モルガナの確保をお願いします」
キリは少し遅れてやってきたルーイとユーゴにモルガナを繋いでいた鎖ごと引き渡すと、短剣を構えた。
「ノア様、来ます」
「うん、それじゃあ本番前に練習しとこっか」
そう言ってノアは背負っていたボーガンを投げ捨て、その下に持っていたガンソードを構える。
「おいおい兄ちゃん、そんな大剣振り回せんのか?」
どう見ても華奢なノアには不釣り合いの大きな剣を見て一人の兵士が言った。それを聞いて他の兵士も肩を揺らして笑い出す。
「人を見かけで判断してるようじゃ、まだまだだね」
こんな風に未だにどこに行っても馬鹿にされるが、ノアはそんな事は気にしない。というか、むしろそう思い込んでくれた方が好都合だと思っている。
抜いたソードを構えたノアは、大剣を引きずるように兵士のど真ん中に突っ込んで行くと、兵士たちの眼の前で大剣を大きく振り上げた。その拍子に正面に居た兵士たちが顎を思い切り殴られて後ろに吹っ飛ぶ。そしてそのままガンソードを真横に振ると、今度は兵士が真横に吹き飛ばされていく。
「兄さま! 殺しちゃ駄目だからね! というお嬢様の幻聴が聞こえてくるようです」
アリスがドラゴンめがけてフックがついたロープをぶん投げると、ドラゴンはフックを見事キャッチしてそのまま物凄い勢いで天井に向かって飛んでいく。
「皆~しっかり捕まってるんだよ~!」
「ぎゅ!」
アリスに張り付いた赤ん坊達は皆アリスにこれでもかというぐらいしがみついていた。ドラゴンは赤ん坊とはいえその爪はするどい。既にアリスは体中傷だらけだが、これはとても懐かしい痛みだ。そう、ドンが幼い時にもよくこうなった。
やがて吹き抜けになった所を抜けた途端、あちこちから矢が飛んできた。それに驚いた一匹の赤ん坊がアリスから手を離してしまう。
「あ! おチビ!!」
アリスが叫んだのとほぼ同時に、何か黒い影が目の前を過った。カールの袖だ。カールはアリスが落とした赤ん坊を腕を極限まで伸ばして上手くキャッチしてくれた。
「ありがとう! カールさん!」
「ええ、次が来ますよ! あなたも落ちないように私にしがみついていなさい」
カールはそう言って足元に赤ん坊を置いて銃を構えた。崖のてっぺんから矢でアリス達を狙うのは、間違いなくアメリア隊の下っ端だろう。
すぐさま銃をかまえたカールは下っ端達の足をめがけて連射していく。本当はこんな武器は使いたくないが、アンソニーと違って体術がからっきしだったカールは銃の腕を磨くしかなかった。毎日毎日練習に明け暮れた結果が、まさかこんな所で役に立つとは思わなかったカールだ。
けれどこれではいくら撃っても埒が明かないし、弾が尽きるほうが確実に早い。アリスだけでも先に逃してしまわなければ、カールがそんな事を考えていたその時。
「さあ皆~! いっけ~!」
「?」
突然、空が真っ黒に覆われた。ふと見上げると、そこには何十頭ものドラゴン達が真っ直ぐに、まるで矢のように降り注いでくる。そんなドラゴン達を一頭のドラゴンの上から先導しているのはリアンとオリバーだ。
「リー君! モブ!」
「アリス、今のうちに抜けてくっすよ!」
「うん! レッドラゴン! いっけぇ~!」
「ぎゅぎゅー!」
矢のように降り注ぐ仲間たちの間を真っ赤なドラゴンは空に向かって駆け上がっていく。アリスは赤ちゃんドラゴンを落とさないようにできる限り全員の手や羽根や足を掴み、風圧に耐えた。
やがてドラゴンはゆるやかに旋回をし始めた。ふと下を見ると、ドラゴン達は次から次へと崖で四方を囲まれた穴に吸い込まれていく。崖上に立っていたアメリアの兵士達も既に一人も居ない。
「もう大丈夫だよ、ありがとう」
「ぎゅ」
アリスの言葉にドラゴンはゆっくりと降下しはじめた。やがて先程アリス達が襲われた場所まで近づくと、アリスはロープを離して地面に飛び降りる。
「ふぃ~皆、無事かな?」
地面に降り立ったアリスの体からドラゴンの赤ん坊達がゾロゾロと剥がれ落ちて、その場で飛び跳ねてレッドラゴンの足にまとわりついていく。
「あと一人……あ、来た! カールさん、こっちだよ~!」
アリスが手を振ると、それに気づいたカールが軽く手を上げて抱いていた赤ん坊ドラゴンを地面に下ろした。
「ほら、行きなさい。もう捕まってはいけませんよ」
「ぎゅぅ」
「しばらくの間この星は危険です。もうじきあなた達の耳にも入るでしょう。その時は皆でレプリカに移動するのですよ」
「ぎゅ?」
「はは、分かりませんか。その時が来たらここへも使いを寄越します。それまで親の元を離れないように」
「ぎゅ!」
赤ん坊ドラゴンは元気よく返事をして崖から飛び降りて赤いドラゴンの上に着地すると、仲間たちとの再会を喜んでいる。
「レッドラゴン、ここらへんはまだアメリア達の残党がいるかもしれないから、今すぐ全員でこの場所を離れてバセット領に一時的に避難して! ドンちゃんに伝えておくから! 真っ黒のドラゴンがあなた達をきっと歓迎してくれる」
「ぎゅっ!」
「良し!」
元気のいいドラゴンの返事にアリスは親指を立てて崖の亀裂からまた中に戻り始めた。
「ここは蟻塚か何かなのかな?」
無事に地面に着地したノアはそこら中の穴から這い出てくるアメリア兵を見て皮肉げに笑った。上からアリスの雄叫びが聞こえてきたのでふと見上げると、崖の上にも兵が居て、アリスめがけて次々に矢を放っている。
「お嬢様を狙うなんて命知らずな人たちですね。ルーイさん、ユーゴさん、モルガナの確保をお願いします」
キリは少し遅れてやってきたルーイとユーゴにモルガナを繋いでいた鎖ごと引き渡すと、短剣を構えた。
「ノア様、来ます」
「うん、それじゃあ本番前に練習しとこっか」
そう言ってノアは背負っていたボーガンを投げ捨て、その下に持っていたガンソードを構える。
「おいおい兄ちゃん、そんな大剣振り回せんのか?」
どう見ても華奢なノアには不釣り合いの大きな剣を見て一人の兵士が言った。それを聞いて他の兵士も肩を揺らして笑い出す。
「人を見かけで判断してるようじゃ、まだまだだね」
こんな風に未だにどこに行っても馬鹿にされるが、ノアはそんな事は気にしない。というか、むしろそう思い込んでくれた方が好都合だと思っている。
抜いたソードを構えたノアは、大剣を引きずるように兵士のど真ん中に突っ込んで行くと、兵士たちの眼の前で大剣を大きく振り上げた。その拍子に正面に居た兵士たちが顎を思い切り殴られて後ろに吹っ飛ぶ。そしてそのままガンソードを真横に振ると、今度は兵士が真横に吹き飛ばされていく。
「兄さま! 殺しちゃ駄目だからね! というお嬢様の幻聴が聞こえてくるようです」
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