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第528話 オズワルドの優しさ
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「な、何したの?」
「あいつらを地上に戻したんだよ。樹には成長に必要な栄養素をこれでもかってぐらい注いでやった。これでもう暴れる事もないだろ」
「……ありがとう。ほら、やっぱりオズは優しい。そんな人が誰かを踏み台にしようだなんて考えちゃダメだよ。そんな事したらいつか後悔して自分から消えようとしちゃうんだから」
「……俺は別に優しくなんか……」
ない、と言おうとした途端にリーゼロッテの笑顔が思い浮かんだ。リーゼロッテはいつも口癖のようにオズワルドに言っていた。「オズは優しいね」と。
「そういうのを平気で出来るのは兄さまとかアメリアとかそういう人たちで、オズには向いてないよ」
「俺の心が弱いって言いたいのか?」
「違う。心の弱さが問題なんじゃない。そういう気質なんだよ。心の強さ云々じゃないよ。だからどっちが良いとかは言えない。優しすぎてもディノみたいに問題を起こすこともあるもん」
優しさと残酷さは紙一重だ。アリスもそれはよく分かっている。全てに平等にしようなどと常々考えていても、やはり優先順位は出来てしまう。
けれど、それが生きるということだ。そうでなければ呼吸すらできなくなってしまう。
ため息を落として落ち込むアリスの目の前にオズワルドが下りてきた。すぐ目の前にオズワルドが居る。ノアならきっとこれを絶好の機会だと捉えるのだろうが、アリスにはそうは思えなかった。
「絶対に見つけるからね、オズ。他の誰が何と言おうと、私は、あなたが消えた世界は嫌だ」
「……お前は真正のバカだよ……人形たちに金の光を当ててやってくれ。それから妖精王に伝えろ。そろそろ出番だぞ、と」
「分かった。伝える。オズも無理はしないで。全部終わったらまたバーベキューだよ」
「楽しみだな。焼いたちくわは美味かった。あれも商会で売ってる?」
真顔でそんな事を言うアリスに思わずオズワルドが笑みをこぼすと、そんなオズワルドを見てアリスはいつものようにニカッと笑った。
「売ってるよ! それじゃあオズ、またね」
「ああ、また」
それだけ言ってオズワルドはちらりと影アリスを見ると、影アリスはコクリと頷いて立ち上がった。そんな影アリスに影ノアと影キリが続く。
「もうしばらく借りてるぞ」
「いいよ。私が死ぬその時まで貸してあげる」
「……そんなにはいらない」
アリスは無駄に長生きしそうだし、そんなに長いこと影アリスを連れて歩くのは嫌だ。思わず顔をしかめたオズワルドを見てアリスはもう一度笑った。
オズワルドは影を従えて指を鳴らすと、その場から一瞬で姿を消した。アリスはようやく緊張の糸を解いてその場に座り込む。
「ちょっとあんた! 本気で無茶ばっかするの止めてくんない!?」
「そっすよ! ずっとヒヤヒヤしてたんすからね!? オズの温厚な性格に感謝するんすよ!」
「ほんとだよ! あんた相手がオズじゃなかったら八つ裂きだからね!? それにしても……どうしたらオズ助けられるんだろ」
「それなんすよ。結局有り余るエネルギーを運ぶ方法が無いって事なんすよね?」
オズワルドが去ったのを見て岩陰から飛び出してきたリアンとオリバーがアリスの前に座り込んで、結果的に三人で頭を付き合わせる形になる。
そんな二人を見てアリスは笑った。
「あはは、なんだ。二人もオズを助けたいって思ってたんだ」
「そりゃあいつは今回の一番の被害者でしょ。本気で何にも悪いことしてないよ」
「っす。何なら一番可哀想っす。別にカップリング厨とかではないけど、オズにもリゼにも幸せになってほしいっすね」
「それは! 立派なカップリング厨だよ! オリバー! ようやく君も目覚めたかね!? この素晴らしい世界に!」
「あ、いや、まだ目覚める所まではいってないっす! 近い!」
「バカだな、モブ。こいつの前でそんな事言ったら目覚めるまで毎日突撃してくるよ? で、本題なんだけど、オズのあの様子だとそろそろエネルギーを人形に変換し終えたって事かな?」
「だと思う。妖精王に伝えないと! あとさ、ふと思ったんだけどオズがさっきずっとあれ探してたって言ってたじゃん?」
アリスはそう言って虹色の異世界へのゲートを指さした。そんなアリスに二人が頷く。
「あれさ、前ここに来た時は無かったんだよね。いつ出来たんだろう?」
「それはあれじゃないの? オルゾ山の火口に元々あったとかではなくて?」
「いやいや、それは無いっすよ。オルゾ山にダム作った時に火口の調査もしたけどあんなもん無かったっすよ? てか、そもそもオルゾ山は死火山なんすよね?」
「そのはずだよ。だからあそこにダム作ったんだもん」
でないといつ噴火するか分からないような場所にダムなど作る訳がない。三人は顔を見合わせて首を捻った。
「とりあえずここで考えても仕方ないね。妖精王にオズからの伝言を伝えて僕たちは各地の人形破壊しにいこう。ちょっとでも数減らしておかないと」
「そっすね。ヴァニタスとオズワルドを引き剥がすのにどれぐらいのエネルギーが溢れるか分かんないし」
「はぁ~あ。ソラがエネルギー全部どっかに詰め込んでホイってしてくれたら簡単なのにな」
「そりゃそれが一番手っ取り早いけど、まぁしてくれないだろうね。ソラにとってはこの星は良い実験材料だろうしさ」
フンと鼻を鳴らしながらリアンが言うと、アリスもオリバーも苦い顔をして頷いて立ち上がり妖精王に連絡をして核を離れた。
「あいつらを地上に戻したんだよ。樹には成長に必要な栄養素をこれでもかってぐらい注いでやった。これでもう暴れる事もないだろ」
「……ありがとう。ほら、やっぱりオズは優しい。そんな人が誰かを踏み台にしようだなんて考えちゃダメだよ。そんな事したらいつか後悔して自分から消えようとしちゃうんだから」
「……俺は別に優しくなんか……」
ない、と言おうとした途端にリーゼロッテの笑顔が思い浮かんだ。リーゼロッテはいつも口癖のようにオズワルドに言っていた。「オズは優しいね」と。
「そういうのを平気で出来るのは兄さまとかアメリアとかそういう人たちで、オズには向いてないよ」
「俺の心が弱いって言いたいのか?」
「違う。心の弱さが問題なんじゃない。そういう気質なんだよ。心の強さ云々じゃないよ。だからどっちが良いとかは言えない。優しすぎてもディノみたいに問題を起こすこともあるもん」
優しさと残酷さは紙一重だ。アリスもそれはよく分かっている。全てに平等にしようなどと常々考えていても、やはり優先順位は出来てしまう。
けれど、それが生きるということだ。そうでなければ呼吸すらできなくなってしまう。
ため息を落として落ち込むアリスの目の前にオズワルドが下りてきた。すぐ目の前にオズワルドが居る。ノアならきっとこれを絶好の機会だと捉えるのだろうが、アリスにはそうは思えなかった。
「絶対に見つけるからね、オズ。他の誰が何と言おうと、私は、あなたが消えた世界は嫌だ」
「……お前は真正のバカだよ……人形たちに金の光を当ててやってくれ。それから妖精王に伝えろ。そろそろ出番だぞ、と」
「分かった。伝える。オズも無理はしないで。全部終わったらまたバーベキューだよ」
「楽しみだな。焼いたちくわは美味かった。あれも商会で売ってる?」
真顔でそんな事を言うアリスに思わずオズワルドが笑みをこぼすと、そんなオズワルドを見てアリスはいつものようにニカッと笑った。
「売ってるよ! それじゃあオズ、またね」
「ああ、また」
それだけ言ってオズワルドはちらりと影アリスを見ると、影アリスはコクリと頷いて立ち上がった。そんな影アリスに影ノアと影キリが続く。
「もうしばらく借りてるぞ」
「いいよ。私が死ぬその時まで貸してあげる」
「……そんなにはいらない」
アリスは無駄に長生きしそうだし、そんなに長いこと影アリスを連れて歩くのは嫌だ。思わず顔をしかめたオズワルドを見てアリスはもう一度笑った。
オズワルドは影を従えて指を鳴らすと、その場から一瞬で姿を消した。アリスはようやく緊張の糸を解いてその場に座り込む。
「ちょっとあんた! 本気で無茶ばっかするの止めてくんない!?」
「そっすよ! ずっとヒヤヒヤしてたんすからね!? オズの温厚な性格に感謝するんすよ!」
「ほんとだよ! あんた相手がオズじゃなかったら八つ裂きだからね!? それにしても……どうしたらオズ助けられるんだろ」
「それなんすよ。結局有り余るエネルギーを運ぶ方法が無いって事なんすよね?」
オズワルドが去ったのを見て岩陰から飛び出してきたリアンとオリバーがアリスの前に座り込んで、結果的に三人で頭を付き合わせる形になる。
そんな二人を見てアリスは笑った。
「あはは、なんだ。二人もオズを助けたいって思ってたんだ」
「そりゃあいつは今回の一番の被害者でしょ。本気で何にも悪いことしてないよ」
「っす。何なら一番可哀想っす。別にカップリング厨とかではないけど、オズにもリゼにも幸せになってほしいっすね」
「それは! 立派なカップリング厨だよ! オリバー! ようやく君も目覚めたかね!? この素晴らしい世界に!」
「あ、いや、まだ目覚める所まではいってないっす! 近い!」
「バカだな、モブ。こいつの前でそんな事言ったら目覚めるまで毎日突撃してくるよ? で、本題なんだけど、オズのあの様子だとそろそろエネルギーを人形に変換し終えたって事かな?」
「だと思う。妖精王に伝えないと! あとさ、ふと思ったんだけどオズがさっきずっとあれ探してたって言ってたじゃん?」
アリスはそう言って虹色の異世界へのゲートを指さした。そんなアリスに二人が頷く。
「あれさ、前ここに来た時は無かったんだよね。いつ出来たんだろう?」
「それはあれじゃないの? オルゾ山の火口に元々あったとかではなくて?」
「いやいや、それは無いっすよ。オルゾ山にダム作った時に火口の調査もしたけどあんなもん無かったっすよ? てか、そもそもオルゾ山は死火山なんすよね?」
「そのはずだよ。だからあそこにダム作ったんだもん」
でないといつ噴火するか分からないような場所にダムなど作る訳がない。三人は顔を見合わせて首を捻った。
「とりあえずここで考えても仕方ないね。妖精王にオズからの伝言を伝えて僕たちは各地の人形破壊しにいこう。ちょっとでも数減らしておかないと」
「そっすね。ヴァニタスとオズワルドを引き剥がすのにどれぐらいのエネルギーが溢れるか分かんないし」
「はぁ~あ。ソラがエネルギー全部どっかに詰め込んでホイってしてくれたら簡単なのにな」
「そりゃそれが一番手っ取り早いけど、まぁしてくれないだろうね。ソラにとってはこの星は良い実験材料だろうしさ」
フンと鼻を鳴らしながらリアンが言うと、アリスもオリバーも苦い顔をして頷いて立ち上がり妖精王に連絡をして核を離れた。
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