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第543話 ダブルパパ
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「おぉ! 来た来た! よくぞ集まった、空の戦士たち! これより第二作戦に突入する! 地上に残る全ての兵士達を撤退させると共に、君たちもレプリカへ速やかに移動するのだ! ドンとスキピオに従うのだ! 良いな!? 人の兵だけではないぞ! 全ての生物の兵たちだ! では、かかれ!!」
アリスの号令を聞くなりドラゴン達は耳をつんざきそうな雄叫びを上げて、四方八方に飛び散っていく。
それを見送ったアリスは、ふぅ、と息をつきニカッと笑った。
「良し! ぎゃん!」
「良し! じゃない! どういう事か説明して!」
「うぅ……あらかじめドンちゃん達と作戦立ててたんだよぅ。いざというとき、絶対にレプリカに移動しないって人たちがいると困るでしょ? でも流石にドラゴンにせっつかれたら皆逃げるかなって思って」
「あんた、撤退しない人たちにドラゴンで脅しをかける気!?」
「そだよ。だって、でないと巻き込まれちゃうかもしれないじゃん。そうなるよりは一瞬怖い思いした方がマシかなって思ったんだもん」
「はぁ……あんたってばほんと……もういいや。何でも無い。モブ、今のシャルル達に報告しておいてやって。僕も王子達に伝えるから」
「っす」
「ちぇ! 良い考えだと思ったのにな~」
呆れたリアンとオリバーを横目にアリスが足元の石を蹴ると、そんなアリスを囲んでユアンとエリスが言う。
「お前な、そういうのは皆と一緒にちゃんと話し合ってから実行しろよ。突然あれだけのドラゴンが来たら寝返ったか? と思うだろ?」
「そうだぞ、アリス。皆撤退どころか驚くだろうが」
「だって、そんな暇無かったんだもん」
「いいや、違う。お前のは暇が無かったんじゃなくて、暇を作らなかっただけだ。それはお前の怠慢だぞ?」
「ユアンの言う通りだ。肉焼いたり食ったりしてる暇はあるんだから、そういう時間をそれに当てろってちっちゃい頃から俺、言ってたよな?」
「うぅ……はい」
「仲間が皆お前の旦那や従者みたいにお前中心に動いてくれる訳じゃないんだからな。皆には皆の大切なもんがある。それをお前一人のせいで乱すのは良くない事だ。分かるだろ?」
「……うん」
ダブルパパに囲まれて叱られたアリスはシュンと項垂れてちらりとアンソニーを見ると、アンソニーは何故かニコニコしながら自分たちを見ている。
「アリスは幸せだね、叱ってくれる人がこんなにも居る」
「それは本当にそう思うよ。コイツは何故か人脈には恵まれるんだよ。そう、僕とかね!」
そう言ってリアンは自分の胸を叩いてオリバーとアリスの服を掴んだ。
「自分で言っちゃうんすね。で、次はどこ行くんすか?」
「地下だよ。変態からメッセージ。そろそろ妖精王が動くから地下に向かえって」
「? 地下にっすか? 俺たちだけ?」
「ううん、全員だよ。だからあんた達も準備して」
言いながらリアンはノアからのメッセージを見せると、それを見てアンソニーとエリスが頷いたが、ユアンだけは顔をしかめている。
「俺もかよ?」
「あんたもだよ。アーロに会うの嫌だろうけど、僕たちが地上に居たら邪魔になるでしょ」
「はぁ……仕方ねぇか。お前の旦那もいるんだよなぁ?」
ユアンがアリスに尋ねると、アリスはキョトンとして頷く。
誰が一番苦手だと言えば、間違いなくノアだ。おまけに全員が地下に退避するという事は、間違いなくアーロも地下にやってくると言うことだ。
「ユアン、そんなに顔を合わせたくないかい?」
「ああ、まぁな」
「けれど、会っておいた方が僕はいいと思うけれどね。後できっと後悔する事になるよ」
ユアンは口ではノアに会いたくない風を装っているが、実のところ本当に会いたくないのはアーロだろう。
アンソニーがユアンの考えなどすっかりお見通しだと言うことが分かったのか、ユアンはさらに顔を歪ませた。
「パパ、私がパパの味方してあげる! 兄さまがパパに何か言ったら守ってあげるからね!」
「おう、ありがとな。でもお前、口喧嘩めちゃくちゃ弱そうだけどな」
「当たってるね」
「正解っす。最終的に暴力に物言わすのがアリスっす」
「最低じゃねぇか。いいよ、自分の身は自分で守る。お前は子どもたちと居てやれ」
「ぶー!」
頬を膨らませたアリスはそれでもうっすらと笑顔を浮かべた。ようやく家族が全員揃うのだ。なんだかそれがワクワクして気恥ずかしかった。
「ではカールとアルファが戻ったら僕たちも行こうか。何だか大気の様子も変わってきたようだ」
そう言ってアンソニーが空を指差すと、先程までキャロライン達が降らしていた花々はすっかり消え、代わりに何か渦巻く黒い雲が空を埋め尽くしていた。
アリスの号令を聞くなりドラゴン達は耳をつんざきそうな雄叫びを上げて、四方八方に飛び散っていく。
それを見送ったアリスは、ふぅ、と息をつきニカッと笑った。
「良し! ぎゃん!」
「良し! じゃない! どういう事か説明して!」
「うぅ……あらかじめドンちゃん達と作戦立ててたんだよぅ。いざというとき、絶対にレプリカに移動しないって人たちがいると困るでしょ? でも流石にドラゴンにせっつかれたら皆逃げるかなって思って」
「あんた、撤退しない人たちにドラゴンで脅しをかける気!?」
「そだよ。だって、でないと巻き込まれちゃうかもしれないじゃん。そうなるよりは一瞬怖い思いした方がマシかなって思ったんだもん」
「はぁ……あんたってばほんと……もういいや。何でも無い。モブ、今のシャルル達に報告しておいてやって。僕も王子達に伝えるから」
「っす」
「ちぇ! 良い考えだと思ったのにな~」
呆れたリアンとオリバーを横目にアリスが足元の石を蹴ると、そんなアリスを囲んでユアンとエリスが言う。
「お前な、そういうのは皆と一緒にちゃんと話し合ってから実行しろよ。突然あれだけのドラゴンが来たら寝返ったか? と思うだろ?」
「そうだぞ、アリス。皆撤退どころか驚くだろうが」
「だって、そんな暇無かったんだもん」
「いいや、違う。お前のは暇が無かったんじゃなくて、暇を作らなかっただけだ。それはお前の怠慢だぞ?」
「ユアンの言う通りだ。肉焼いたり食ったりしてる暇はあるんだから、そういう時間をそれに当てろってちっちゃい頃から俺、言ってたよな?」
「うぅ……はい」
「仲間が皆お前の旦那や従者みたいにお前中心に動いてくれる訳じゃないんだからな。皆には皆の大切なもんがある。それをお前一人のせいで乱すのは良くない事だ。分かるだろ?」
「……うん」
ダブルパパに囲まれて叱られたアリスはシュンと項垂れてちらりとアンソニーを見ると、アンソニーは何故かニコニコしながら自分たちを見ている。
「アリスは幸せだね、叱ってくれる人がこんなにも居る」
「それは本当にそう思うよ。コイツは何故か人脈には恵まれるんだよ。そう、僕とかね!」
そう言ってリアンは自分の胸を叩いてオリバーとアリスの服を掴んだ。
「自分で言っちゃうんすね。で、次はどこ行くんすか?」
「地下だよ。変態からメッセージ。そろそろ妖精王が動くから地下に向かえって」
「? 地下にっすか? 俺たちだけ?」
「ううん、全員だよ。だからあんた達も準備して」
言いながらリアンはノアからのメッセージを見せると、それを見てアンソニーとエリスが頷いたが、ユアンだけは顔をしかめている。
「俺もかよ?」
「あんたもだよ。アーロに会うの嫌だろうけど、僕たちが地上に居たら邪魔になるでしょ」
「はぁ……仕方ねぇか。お前の旦那もいるんだよなぁ?」
ユアンがアリスに尋ねると、アリスはキョトンとして頷く。
誰が一番苦手だと言えば、間違いなくノアだ。おまけに全員が地下に退避するという事は、間違いなくアーロも地下にやってくると言うことだ。
「ユアン、そんなに顔を合わせたくないかい?」
「ああ、まぁな」
「けれど、会っておいた方が僕はいいと思うけれどね。後できっと後悔する事になるよ」
ユアンは口ではノアに会いたくない風を装っているが、実のところ本当に会いたくないのはアーロだろう。
アンソニーがユアンの考えなどすっかりお見通しだと言うことが分かったのか、ユアンはさらに顔を歪ませた。
「パパ、私がパパの味方してあげる! 兄さまがパパに何か言ったら守ってあげるからね!」
「おう、ありがとな。でもお前、口喧嘩めちゃくちゃ弱そうだけどな」
「当たってるね」
「正解っす。最終的に暴力に物言わすのがアリスっす」
「最低じゃねぇか。いいよ、自分の身は自分で守る。お前は子どもたちと居てやれ」
「ぶー!」
頬を膨らませたアリスはそれでもうっすらと笑顔を浮かべた。ようやく家族が全員揃うのだ。なんだかそれがワクワクして気恥ずかしかった。
「ではカールとアルファが戻ったら僕たちも行こうか。何だか大気の様子も変わってきたようだ」
そう言ってアンソニーが空を指差すと、先程までキャロライン達が降らしていた花々はすっかり消え、代わりに何か渦巻く黒い雲が空を埋め尽くしていた。
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