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第564話 子ども達の機転
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「どうすればいいんだろう。俺たちにもっと他に出来る事はないのかな?」
アメリアがまた逃げたという情報を聞いて荒ぶったカインの声を聞いてルークが顔をしかめて言うと、子どもたちは全員がルークと同じような顔をしていた。
「何かするにしても僕たちはレプリカだからなぁ。ここから出来る事なんて知れてる」
「テオ! 諦めるにはまだ早いぞ! お前は賢い! もっと知恵を絞れ!」
「そうは言うけどさ、何も思いつかないんだからしょうがないでしょ? それにしても至れりつくせりだな。こんな物まである」
そう言ってテオが持ち上げたのは刺繍に使う糸と針と布だ。退屈させまいとする努力が見て取れる。
テオ達は今、ダニエルとエマが急ごしらえで作った子ども達だけを集めた地区に立てられたテントの中で集合していた。
レプリカに一番先にやってきていたのはチャップマン商会と、チャップマン商会に縁のある面々だった。彼らは今回の事が決まった時からレプリカと星を行き来して至る所にテントを立て、資材を運び込み、食料やその他の必要物資を運び込んでくれていたのだ。
指揮をとったのはもちろんダニエルとエマとアリアである。
『どこに行っても誰にも絶対に不便な思いはさせねぇ!』
ダニエルのその言葉にチャップマン商会と少しでも関わりのある人達はこぞってこの計画に参加したという。
「ダニエルおじさんは人望だけは厚いから。普段はあんなにも傍若無人だけど、こういう時にはとても頼りになるわ」
表立って活躍はしていないが、隠れた功労者がいるとしたら、間違いなく人々はダニエルとエマの名前を挙げるだろう。
実際に最初は混乱するだろうと言われていたレプリカでの生活は、今の所そこまでの混乱はしていない。皆も事情を知っているし、既に退位したはずの各国の王族達がこぞって手を組み指揮を取っているからだ。
「話を戻すぞ。俺たちはここからどうにかして英雄たちとノエル達を助けなければ。誰か何か良い案はないか?」
「良い案と言われても、テオではないけれど、あまりにも離れすぎているわ。ローズ、何か思いつかない?」
「今無理だよ~! オズに見つからないようにウサちゃん操縦しないと~」
「そうね、ごめんなさい」
真剣な顔をしてモニターに見入るローズの手にはしっかりとコントローラーが握りしめられている。それを見てふとジャスミンが呟いた。
「ねぇ皆、これ、使えないかしら?」
「これ?」
ジャスミンが指さした先にはローズの姿。そんなローズの後ろ姿を見てテオは手をポンと打った。
「なるほど。ライアン、ルーク、すぐにダニエルとエマを呼んできて」
「なぜだ?」
「レプリカと星との距離を埋めるには、現状このラジコンしか無いんだ。これを僕たちが使えるようになったら?」
「なるほど! 素晴らしいな! ちょっと待ってろ!」
それだけ言ってライアンが部屋から飛び出して行った。そんなライアンの背中を見つめながらふとルークが考え込む。
「俺たちだけじゃ限界がある。ジャスミン、そのラジコンはもう販売間近だった?」
「ええ。父さまとアラン様が急ピッチで進めていた案件よ。絶対に売れる! って喜んでいたから相当数作ってあるわ。ただ、これと違ってカメラ機能は無いわ」
「なるほど。テオ、俺の考えを言ってもいいか?」
「もちろん」
「俺達だけではなくて、他の子達にもこれを操縦させれば地上を監視する目が一気に増える。違うか?」
「いいね。でも誰が操縦を教える? 言っておくけど僕は全く出来なかったよ」
「俺がやってみる。ずっとローズの見てたから分かると思う。ジャスミン、この事をノエル達に報告して。チャップマン商会の倉庫にあるんだよね?」
「ええ、そうよ」
「分かった。ノエル達に言ってそれをこっちに送ってもらおう」
「危なくない? 地上に出なければならないのに」
地上は今や危険な人形たちで溢れかえっている。そんな所にノエル達だけで行くのは危険だ。
「もちろん危なそうならこの話は無しだよ。でも、出来る限り手は尽くしたい。ノエルたちと連携するだけの価値はある」
「……分かったわ。最終的な判断はノエル達に任せる。それでいいのね?」
「ああ。テオ、ついてきて。俺たちはカメラを沢山集めないと」
「集めるって一体どこから――ああ、なるほど。それじゃあクラーク家とも連絡を取った方がいいね」
「うん」
1を伝えれば10を知るテオとの会話はとても楽だ。ルークはそんな事を考えながらテオと二人、テントを後にした。
アメリアがまた逃げたという情報を聞いて荒ぶったカインの声を聞いてルークが顔をしかめて言うと、子どもたちは全員がルークと同じような顔をしていた。
「何かするにしても僕たちはレプリカだからなぁ。ここから出来る事なんて知れてる」
「テオ! 諦めるにはまだ早いぞ! お前は賢い! もっと知恵を絞れ!」
「そうは言うけどさ、何も思いつかないんだからしょうがないでしょ? それにしても至れりつくせりだな。こんな物まである」
そう言ってテオが持ち上げたのは刺繍に使う糸と針と布だ。退屈させまいとする努力が見て取れる。
テオ達は今、ダニエルとエマが急ごしらえで作った子ども達だけを集めた地区に立てられたテントの中で集合していた。
レプリカに一番先にやってきていたのはチャップマン商会と、チャップマン商会に縁のある面々だった。彼らは今回の事が決まった時からレプリカと星を行き来して至る所にテントを立て、資材を運び込み、食料やその他の必要物資を運び込んでくれていたのだ。
指揮をとったのはもちろんダニエルとエマとアリアである。
『どこに行っても誰にも絶対に不便な思いはさせねぇ!』
ダニエルのその言葉にチャップマン商会と少しでも関わりのある人達はこぞってこの計画に参加したという。
「ダニエルおじさんは人望だけは厚いから。普段はあんなにも傍若無人だけど、こういう時にはとても頼りになるわ」
表立って活躍はしていないが、隠れた功労者がいるとしたら、間違いなく人々はダニエルとエマの名前を挙げるだろう。
実際に最初は混乱するだろうと言われていたレプリカでの生活は、今の所そこまでの混乱はしていない。皆も事情を知っているし、既に退位したはずの各国の王族達がこぞって手を組み指揮を取っているからだ。
「話を戻すぞ。俺たちはここからどうにかして英雄たちとノエル達を助けなければ。誰か何か良い案はないか?」
「良い案と言われても、テオではないけれど、あまりにも離れすぎているわ。ローズ、何か思いつかない?」
「今無理だよ~! オズに見つからないようにウサちゃん操縦しないと~」
「そうね、ごめんなさい」
真剣な顔をしてモニターに見入るローズの手にはしっかりとコントローラーが握りしめられている。それを見てふとジャスミンが呟いた。
「ねぇ皆、これ、使えないかしら?」
「これ?」
ジャスミンが指さした先にはローズの姿。そんなローズの後ろ姿を見てテオは手をポンと打った。
「なるほど。ライアン、ルーク、すぐにダニエルとエマを呼んできて」
「なぜだ?」
「レプリカと星との距離を埋めるには、現状このラジコンしか無いんだ。これを僕たちが使えるようになったら?」
「なるほど! 素晴らしいな! ちょっと待ってろ!」
それだけ言ってライアンが部屋から飛び出して行った。そんなライアンの背中を見つめながらふとルークが考え込む。
「俺たちだけじゃ限界がある。ジャスミン、そのラジコンはもう販売間近だった?」
「ええ。父さまとアラン様が急ピッチで進めていた案件よ。絶対に売れる! って喜んでいたから相当数作ってあるわ。ただ、これと違ってカメラ機能は無いわ」
「なるほど。テオ、俺の考えを言ってもいいか?」
「もちろん」
「俺達だけではなくて、他の子達にもこれを操縦させれば地上を監視する目が一気に増える。違うか?」
「いいね。でも誰が操縦を教える? 言っておくけど僕は全く出来なかったよ」
「俺がやってみる。ずっとローズの見てたから分かると思う。ジャスミン、この事をノエル達に報告して。チャップマン商会の倉庫にあるんだよね?」
「ええ、そうよ」
「分かった。ノエル達に言ってそれをこっちに送ってもらおう」
「危なくない? 地上に出なければならないのに」
地上は今や危険な人形たちで溢れかえっている。そんな所にノエル達だけで行くのは危険だ。
「もちろん危なそうならこの話は無しだよ。でも、出来る限り手は尽くしたい。ノエルたちと連携するだけの価値はある」
「……分かったわ。最終的な判断はノエル達に任せる。それでいいのね?」
「ああ。テオ、ついてきて。俺たちはカメラを沢山集めないと」
「集めるって一体どこから――ああ、なるほど。それじゃあクラーク家とも連絡を取った方がいいね」
「うん」
1を伝えれば10を知るテオとの会話はとても楽だ。ルークはそんな事を考えながらテオと二人、テントを後にした。
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