媚薬の恋 一途な恋

万実

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楽しかった?

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ま、まさか···。


「フィンさん?!」


私の声に彼はフッと笑い、力を弛めた。
開放された私は素早く移動し距離をとる。

薄暗い室内は急に明るくなった。

フィンさんは腰に手を当て、薄笑いを浮かべてこちらを見ている。

なぜフィンさんがここにいるの?

アレクの名前でメモを使ったのはフィンさんなの?

私は混乱し、考えが少しも纏まらない。


「これは一体どういう事ですか?」


フィンさんは腕を組み、私の問いかけには全く答える様子もなく口を開いた。

「なあ、楽しかった?」

「······」

この人は何を言っているんだろう?

その言葉の意味を理解できず、私は黙って様子を見ることにした。

「君はアイツに恋しちゃった訳か?」


「フィンさん、あなたが何を言いたいのか、私全然わかりません」


フィンさんは目を細めて笑いだした。


「これだよ」


そう言って、手に持っている物を私に見せた。


「それは、まさか!?なんで···」


彼の手のひらには小瓶があり、中の液体はピンク色に輝いている。


それは正に【媚薬】だった。

なぜ彼が【媚薬】を持っているの?

私は慌ててポケットの中を探るけど、あるはずの【媚薬】の小瓶は見当たらない。

彼の手の中にあるのは、私の【媚薬】だ。

さっき抱きしめられたときに、抜き取られたと考えて間違いなさそうだ。

そしてあの口ぶりから恐らく小瓶の正体が【媚薬】であることを知っている···?



「君は面白いものを持っているね」


「それ、私のですよね。返して下さい」



私の問いに対して、フィンさんは首を横に振り、手の中の【媚薬】をポケットにしまい込んでしまった。

「いや、それはできない。悪いけど、お楽しみはこれからなんだ」


「それがなんだかわかってて言ってるんですか?」



フィンさんは邪悪な笑みをその双眸に浮かべている。


「もちろん。これは【媚薬】だろ?」


やっぱり!

フィンさんは小瓶が【媚薬】だと知っていた。

私は動揺しつつも、胸に手を当てて落ち着けと言い聞かせる。

「あなたは最初からそれが【媚薬】だと知っていた、違いますか?」

「あたり。確証がなかったからアイツに試してみたけどね」

「!!」
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