媚薬の恋 一途な恋

万実

文字の大きさ
上 下
24 / 40

【媚薬】から目醒めたら

しおりを挟む
「フィン、これはどういうことだ!?」

フィンさんはせせら笑い、小馬鹿にしたように話し始めた。

「思ったより来るのが早かったな、アレク」

「·····」

「よほどこの餌が魅力的と見える」


アレクはフィンさんの言葉に答える様子はなく、怒りがフツフツと湧き上がっているように見える。

「ティア·フローレンスを早く解放しろ!」

アレクは荒々しく怒鳴るけれど、フィンさんは更に私の右手を捻り上げる。

額には嫌な汗が滲み、だんだん目が霞んでくる。

「なあアレク、俺の質問に答えろよ。それに、そう簡単に解放すると思うな」

「くっ!」


「【媚薬】を飲んだ感想は?」

「······【媚薬】?なんのことだ」

「お前、生徒会室で紅茶を飲んだだろ?その時に【媚薬】を盛ったんだよ。【媚薬】の効果でこの女のことが好きでたまらなかったはずだ。どう?自覚はあるんだろう?」

「······そういうことか······僕は知らずに【媚薬】を飲まされていたのか」

そう言うとアレクはしばらく考え込み、胸元に手を当てた。

「あれは夢ではなく現実だったということか。なるほど、やっと繋がった」

アレクはひどく安堵したような顔をしてこちらを見た。

「それで?お前の気持ちを言ってみろよ」

アレクはその顔に不敵な笑みを浮かべた。

「礼を言う、フィン。お前には感謝しなければいけない」

「はあ?感謝って、お前何言ってんの」

「【媚薬】を飲まなければ、ティア·フローレンスとまともに話すことさえできなかったんだから。その点から見れば【媚薬】を盛られて良かったと言える。それにあの【媚薬】は最高で、ティア·フローレンスが非常に美しく、女神のように見えるんだ。いや、目醒めてもその美しさは全く変わらなかった。というよりも、更に美しくてその可愛らしさは筆舌に尽くし難く······」

うわあぁぁ!

何言ってんの、アレク!いや、生徒会長。

お願いだから、もうやめてーー!

削られる、精神が何かに蝕まれてゆく。

恥ずかしいを通り越して、魂が抜けそうである。

フィンさんは呆れ果てて、「バカらしいからもうイイ」と言い、アレクの話を途中で遮った。

アレクはまだまだ話し足りないようで、「ティア·フローレンスの事なら永遠に話していられるというのに」と、とんでもないことを口走り、残念そうに腕を組んだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

桜の季節

恋愛 / 完結 24h.ポイント:347pt お気に入り:7

突然の契約結婚は……楽、でした。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:87,154pt お気に入り:2,451

目隠し姫と鉄仮面

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:277

男子高校生ヒロサダの毎日極楽

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,716pt お気に入り:5,594

転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,710pt お気に入り:23,936

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:31,809pt お気に入り:35,206

処理中です...