限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです

釈 余白(しやく)

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第一章 卯月(四月)

4.四月十二日 放課後 部活

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 授業がすべて終わって放課後になるとほとんどの生徒は当然のように帰宅する。しかし中には部活動をする生徒もいて美晴も夢路もその一員だった。

「お二人ともこれから部活動なのでしょう?
 学校が終ってからなにかするのって大変そうなのに随分頑張るのね」

「なんだかんだ言っても体動かすの好きだからかな。
 夢は文化部だから体動かしてないけどさ」

八早月やよいちゃんは家が遠いから部活動入るの難しいだろうね。
 私たちは家が近所だから気楽だけどさ。
 ちなみに私は書道部でハルは陸上部だよ」

「授業が終わった後に校庭で走ってるのはその為だったのね。
 他にはどんな活動があるのかしら?」

「あとは運動部って言う、色々体を動かそうって部があるんだって。
 文科系だと理科部があるみたい。
 生徒数が少ないからうちの中学はこれだけだね」

「他の学校はもっと人がいるの?
 未だにクラスメート全員とお話したことないくらい多いと思ってるのに。
 私が分校に通ってた時には全校生徒で四人だったわ」

「ひとクラス二十人なんてすごく少ないんだよ。
 私たちの小学校はクラス三十五人で三クラスあったからね。
 お母さんが子供の頃は四十人クラスが七つあったらしいよ?」

「そんなに人が住んでいることに驚きだわ。
 八畑村なんて全部で百人もいないのよ?
 社会科の資料集に載っていた日本の人口なんて半分信じてなかったもの」

「それは疑いすぎー、八早月ちゃんって真面目な顔で面白いこと言うよね。
 都会なんてもっとすごくて、電車は身動き取れないくらい混んでるって。
 カバンの中のおにぎりがぺちゃんこになるってお父さんが言ってたからね」

 八早月にとっては信じがたい話だが、どこかに人が大勢住んでいることは間違いない。学校で使う資料集に嘘が載っているわけはないのだ。それにしても部活動なんてものがあるのも初めて知った。みんなで同じことをするらしいが、そこに楽しみはあるのだろうか。

 集団的な行動に妖退治しか心当たりの無い八早月は、なぜ刀鍛冶が妖退治をするのかを考えるよりも前、幼いころから鍛錬ばかりさせられ辛いことが多かった。それが嫌だとか辞めたいだとか考えたこともないし、そんな概念も選択肢もなく育って来たのでいまさら気にはならない。

 しかし世の中には知らないことが沢山あると言うのは事実であり、今後どんなことに興味を持つのかだってわからない。つまり自分にはまだ可能性があるのだと中学に上がってから初めて気付いたのだった。

「私も部活動やってみようかな。
 何となく興味あるのよね。
 週一、二回ならお母さまにお願いしやすいのだけどそういうのあるかしら」

「書道部なら週二回だし用があるときには出なくても平気だよ。
 良かったらこれから少しだけでも見学してみる?
 三年生の部長が結構カッコいい先輩なんだよね」

 書道部の夢路は目を輝かせて八早月へと迫る。片や美晴は嬉しいような悔しいような微妙な面持ちだった。陸上部は基本的に毎日練習があるので誘えないが、部活に興味を持ったこと自体は嬉しかったのだ。
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