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第六章 長月(九月)
128.九月十七日 放課後 大はしゃぎ
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縮んだ白蛇がとぐろを巻いてから何やら術を繰り出すと、美晴と夢路の手のひらに乗った抜け殻が膨らみだした。それはすぐに半透明な白蛇の形になりテーブルに乗せた手の上から進みだす。
「ちょっとなんで!? アタシ蛇になっちゃったの? ナンデ!?
あれ? でもモコだっけ? 子狐も白蛇様も見えるようになってるよ?」
「私も蛇になっちゃったの? でもこの間みたいに気持ち悪くなったりしないね。
自分が蛇なのは微妙な気分だけど、気持ち悪くないだけマシなのかも……」
「なるほど、これはなかなか悪くない方法ね。
白蛇さんの形代へ憑依させたと言うところかしら。
特に制限が多いようには見えないけれどなにか問題があるのかしら?」
「はい、先ず見ての通りわらわが縮んでしまい力が弱くなりますのじゃ。
分割するたびに半分、三分の一、四分の一と衰えてしまうのじゃ。
わらわの力に頼る場合はそのことを留意してもらいたいのじゃ」
そう言われても八早月は白蛇の能力を知らない。どんなすごいことができるのか、もしくは出来ないのか聞いていなかったのだ。一つはこうやって分身を作って憑依させる能力であることはわかった。
「それであなたの他の能力はなにかしら?
主人としては知っておく必要があると思うのだけど?
それよりも今までなんでなにも説明しなかったのか疑問だし不信感を持ったわよ」
「いえいえ、聞かれませんでしたからお答えしなかったのじゃ。
わらわが話しかけると生き神様はいつも冷たくお返事なさるゆえ……
ちなみに能力はこの分身憑依のほかに、傷の治療と簡易結界を張ることですじゃ。
ただどちらも無尽蔵ではなく、鱗の枚数分しか使えぬのじゃ。
全部無くなると数日は戻りませぬのでご承知おきくださいなの蛇」
「治療が出来るなんてすごいのね。
機会は無い方がいいけれど、もしもの時にはお願いするわ」
考えていたよりも役に立ちそうな能力を持っていることを知り、八早月は結果的には配下となってもらいよかったと感じた。なにより美晴たちも一緒に話ができるようになるのは大きい。なんだかんだ言って友達に秘密事があるのは嫌だったのだ。
だが結局は中身のある話し合いにはならず、有効な対策は浮かばないままだ。それでもこうして話をしている時間は楽しく、それだけでも白蛇の力は有用と言える。そして何よりもうれしいこと。それは――
「真宵さんってとってもステキだよねぇ。
時代物のマンガって持ってないけど欲しくなっちゃうもん。
女性の剣客を見る機会なんてないし、すごく得しちゃった気分だー!」
「確かに八早月ちゃんが自慢したくなる美人さんだよね。
アタシもこんな風になれたらいいのになぁ」
「しかもめちゃくちゃ強いんだからカッコいいよねぇ。
昨日だって私たちが手も足も出なくて困ってたところに来てくれてさ。
瞬きしてる間に倒しちゃったんだから!」
真宵は耳まで赤くして照れているが皆の興奮は止まらない。八早月も大好きな真宵がべた褒めされて自分が褒められる以上に嬉しかった。やっぱり真宵は誰の目にも素敵な女性であり、八早月の理想像だと言うことが証明された気分なのだ。
しかし逆に面白くないのは白蛇である。自分の能力できちんと見えるようにしたのに、人型で無いせいなのか誰も相手にしてくれない。モコのようにかわいいと言う声の一つも上がらないのだ。
そんな白蛇の気持ちを組んだのか、はたまた主従としての繋がりがそうさせたのかわからないが、八早月から声がかかった。
「白蛇さんには名前は無いの? 固有のと言っていいのかしら。
旦那さまになんと呼ばれていたのか教えてくれればそう呼びますよ?」
「特にそのような名は持っておらぬのじゃ
旦那さまからは巳女とか巳さんと呼ばれておったのじゃ。
ですが民からは白蛇と長年呼ばれておりまするのじゃ」
「それでは今後あなたのことはミイさんとお呼びしましょう。
可愛らしくて良い名ですね、それと人型の憑代も欲しいのですか?
私に用意出来るかわかりませんが、望むなら八岐大蛇様へ願ってみましょうかね」
「誠でございますか!? わらわにも人の姿が!?
無理は申しませんが出来ることならぜひお願いいたしたいのじゃあ!」
「確約はできませんから過大な期待はせぬようお願いしますね。
ふふ、もしそうなったらにぎやかになりますね」
全員が全員で話せるようになればその行く末は決まりきっている。八早月たち少女四人と真宵たち女性三人? は、それはもう楽しくおしゃべりをしていた。
どのくらい楽しかったかと言うと、うるさいと注意されフリースペースを追い出されるほどだった……
「ちょっとなんで!? アタシ蛇になっちゃったの? ナンデ!?
あれ? でもモコだっけ? 子狐も白蛇様も見えるようになってるよ?」
「私も蛇になっちゃったの? でもこの間みたいに気持ち悪くなったりしないね。
自分が蛇なのは微妙な気分だけど、気持ち悪くないだけマシなのかも……」
「なるほど、これはなかなか悪くない方法ね。
白蛇さんの形代へ憑依させたと言うところかしら。
特に制限が多いようには見えないけれどなにか問題があるのかしら?」
「はい、先ず見ての通りわらわが縮んでしまい力が弱くなりますのじゃ。
分割するたびに半分、三分の一、四分の一と衰えてしまうのじゃ。
わらわの力に頼る場合はそのことを留意してもらいたいのじゃ」
そう言われても八早月は白蛇の能力を知らない。どんなすごいことができるのか、もしくは出来ないのか聞いていなかったのだ。一つはこうやって分身を作って憑依させる能力であることはわかった。
「それであなたの他の能力はなにかしら?
主人としては知っておく必要があると思うのだけど?
それよりも今までなんでなにも説明しなかったのか疑問だし不信感を持ったわよ」
「いえいえ、聞かれませんでしたからお答えしなかったのじゃ。
わらわが話しかけると生き神様はいつも冷たくお返事なさるゆえ……
ちなみに能力はこの分身憑依のほかに、傷の治療と簡易結界を張ることですじゃ。
ただどちらも無尽蔵ではなく、鱗の枚数分しか使えぬのじゃ。
全部無くなると数日は戻りませぬのでご承知おきくださいなの蛇」
「治療が出来るなんてすごいのね。
機会は無い方がいいけれど、もしもの時にはお願いするわ」
考えていたよりも役に立ちそうな能力を持っていることを知り、八早月は結果的には配下となってもらいよかったと感じた。なにより美晴たちも一緒に話ができるようになるのは大きい。なんだかんだ言って友達に秘密事があるのは嫌だったのだ。
だが結局は中身のある話し合いにはならず、有効な対策は浮かばないままだ。それでもこうして話をしている時間は楽しく、それだけでも白蛇の力は有用と言える。そして何よりもうれしいこと。それは――
「真宵さんってとってもステキだよねぇ。
時代物のマンガって持ってないけど欲しくなっちゃうもん。
女性の剣客を見る機会なんてないし、すごく得しちゃった気分だー!」
「確かに八早月ちゃんが自慢したくなる美人さんだよね。
アタシもこんな風になれたらいいのになぁ」
「しかもめちゃくちゃ強いんだからカッコいいよねぇ。
昨日だって私たちが手も足も出なくて困ってたところに来てくれてさ。
瞬きしてる間に倒しちゃったんだから!」
真宵は耳まで赤くして照れているが皆の興奮は止まらない。八早月も大好きな真宵がべた褒めされて自分が褒められる以上に嬉しかった。やっぱり真宵は誰の目にも素敵な女性であり、八早月の理想像だと言うことが証明された気分なのだ。
しかし逆に面白くないのは白蛇である。自分の能力できちんと見えるようにしたのに、人型で無いせいなのか誰も相手にしてくれない。モコのようにかわいいと言う声の一つも上がらないのだ。
そんな白蛇の気持ちを組んだのか、はたまた主従としての繋がりがそうさせたのかわからないが、八早月から声がかかった。
「白蛇さんには名前は無いの? 固有のと言っていいのかしら。
旦那さまになんと呼ばれていたのか教えてくれればそう呼びますよ?」
「特にそのような名は持っておらぬのじゃ
旦那さまからは巳女とか巳さんと呼ばれておったのじゃ。
ですが民からは白蛇と長年呼ばれておりまするのじゃ」
「それでは今後あなたのことはミイさんとお呼びしましょう。
可愛らしくて良い名ですね、それと人型の憑代も欲しいのですか?
私に用意出来るかわかりませんが、望むなら八岐大蛇様へ願ってみましょうかね」
「誠でございますか!? わらわにも人の姿が!?
無理は申しませんが出来ることならぜひお願いいたしたいのじゃあ!」
「確約はできませんから過大な期待はせぬようお願いしますね。
ふふ、もしそうなったらにぎやかになりますね」
全員が全員で話せるようになればその行く末は決まりきっている。八早月たち少女四人と真宵たち女性三人? は、それはもう楽しくおしゃべりをしていた。
どのくらい楽しかったかと言うと、うるさいと注意されフリースペースを追い出されるほどだった……
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