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第4章 王宮学園--長期休暇編--
第143話
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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「………………………」
「ヒ、ヒルメ様?」
「……む、悪い。しばし懐かしい思い出に浸っておった…」
「そ、それで………父の話は……」
不安そうな顔をしながらマクネアはヒルメへと問う。なぜならば、『昔話をしよう』と言ったヒルメがゴニョゴニョと言った後に黙ってしまったからだ。5分ほど黙ったままのヒルメをマクネア達は『何をまず話すか』を考えているものだと思っていた。しかし、いくらたっても話し始める気配は無く、10分程経ってから焦れたマクネアがヒルメの体を揺すったのだった。
「…ああ。………えっと、どこまで話したかのぅ?」
「な、何も話されておらぬのですが…」
「あれ?……………すまぬ。どうやら本当に記憶に浸っていたようじゃ…」
「い、いえ……」
ヒルメは軽く頭を下げると、頭の中で話す順番を決める。
「それじゃ………まずはマクネアの父、ライコスについてじゃが……」
ヒルメの言葉にマクネアは再度姿勢を改める。
「マクネアは父親が自殺したと聞かされておるのじゃったな?」
「はい。ですが、後の調査により父は他殺と聞きました」
「ふむ…。ではそこからまず話をせねばな」
「そこからとは?」
「焦るな焦るな。…まずお前の父親、ライコスはアルゼリアルでは自殺したと広まっている筈じゃ。何故そうなったかと言うと……マクネア。それはお主ら一族の宿命なのじゃ」
「一族の宿命?」
「そうじゃ。……お主は『神の眼』を継いでおるじゃろう?」
「……何故それを?」
「それはアルゼリアルが建国した際に妾とお前達の祖が契約を結んだからじゃ」
「ヒルメ様と契約を結んだ??」
「あー……簡単に言えば妾の祖がお主の祖に力を分け与えた…と言うべきかな?」
「そ、その契約とは?」
「その契約とは建国する際にただの人間では力が足り無さすぎるからじゃ。人間は自分よりも強い人間に従う傾向があるでのぅ。まぁ、それはヒトに限ったものでは無いが。…それで、人間達を纏めるに当たってリーダー的な人物が必要だったのじゃ」
「??? ど、どういう意味なのでしょうか?アルゼリアルが建国してから我が一族は選ばれたと聞いているのですが…」
「それはお主達の歴史であろう?もっと簡単に言えばアルゼリアルを建国したのはお主らの祖と言う事じゃ」
「…私のご先祖様が王だった…という事でしょうか?」
「そうじゃ。一番初めの王という事になる。じゃが、妾の祖と契約した際、他に王を立てるという事も含んでおった」
「それは何故でしょうか?」
「力を受け取った者は人外の力を得る事になった。そしてその契約には『邪な感情を持った時呪いが発動する』というものであった」
「邪な感情?」
「……アルスやマクネアには分からんかも知れぬが、ヒトとは強大な力を持つと傲慢になる。なまじ妾の祖の力を得たヒトであるならばな」
「……申し訳ありませんヒルメ様。その呪いというのは、もしかしてこの眼の事なのでしょうか?」
「そうじゃ。………先にお前達の祖について言っておくが、ソヤツは立派であったぞ?契約をしっかりと守り、人間達が平和に暮らせるよう数々の基礎を築いていった。もちろん、邪な感情を持つ事は一切無かった」
「…だとすれば、後の子孫が契約を破ったと?」
「そうなるな。妾も聞いた話にはなるが、どこかの祖先で傲慢になったのだろう」
「ヒルメ様、話の途中で悪いんですけど良いですか?」
「なんじゃアルス?」
「さっき歴史がどうたらこうたらって言ってましたけど……アルゼリアル王国に残っている歴史ってのは違うんですか?」
「良い質問じゃ。歴史というものはどうしても改編しなければならない時があるのじゃ。……アルスは読んだかも知れぬが、それは人間達にとっての都合の良い歴史であり、妾が知っているものとは全く違う」
「なんでそんな事をしたんですか?」
「…そうじゃな。その当時の話をまずはした方が良かろうな。………この大陸には数多のヒトがおった。そして、そのヒトには種族による特徴があったのじゃ」
「特徴?……それって例えば獣人族であれば足が速いとか?」
「そのような物じゃな。妾の種族は長命、獣人族は獣の能力、ドワーフ族は力に特化しておった。じゃが、人間という種族は他の種族と比べて劣っていたのじゃ。…………それを踏まえれば簡単な話じゃ。能力が劣っている種族は他の種族から格下に見られ、最初の頃は奴隷扱いであった」
「奴隷?いや、まさかそんな…」
「ガランドールを思い浮かべれば納得出来るのではないか?アヤツはまさに初期の獣人族そのものじゃ。……そして、奴隷扱いされていた人間は数も減りもはや絶滅する手前まで来ておった」
「それでマクネアさんの祖先がヒルメ様の祖先と契約を結んだって事ですか?」
「そうじゃ。……そもそも最初は人間には魔法は使えぬものであった。じゃが、妾の祖と契約した事により魔法を扱える者が産まれるのじゃ」
「…って事は魔法が使えるようになったのはヒルメ様の祖先のお陰って事ですか?」
「細かく言えば長話になるが、妾の祖と契約した事により才能が芽吹いたという事じゃな」
「ヒルメ様。その話が事実ならば、私達の一族はエルフと似ている…という事になりますよね?」
「そうなるな。……じゃが、ここでまたややこしい話になるので簡潔に言うが、妾達の種族と似ているのはマクネアの一族のみとなっておる」
「…何故ですか?私の考えでは祖先が……まぁ他の人間とまぐわる事によって子を沢山作った筈ですよね?」
「妾達は、人間という種族が魔法の才能を芽吹かせたキッカケに過ぎん。それにお主の祖には子を沢山産む事は許さなかった」
「それも契約という事ですか?」
「いや、それはただの生殖器の問題じゃ。…妾の祖と契約した事で子作りの能力は最低限にしたからな」
「それは何故?」
「……当時奴隷扱いされておった人間にエルフの血を濃く継いだ者が現れたらどうする?」
「……それはそれでいいんじゃないすか?」
「甘い。……アルスに分かりやすく説明すればイジメられっ子が強大な力を持った時、どうすると思う?」
「……………あー…………報復するって事ですか」
「復讐…といった方が良いじゃろうな。それに契約には呪いが含まれておる。今でこそその様な者は居らぬが………もし当初、マクネアの祖先が子を沢山産ませたとしたら?その子の血脈の中に呪いが出る者が沢山産まれるであろう」
「……でも産まれるのは別にしても、強い人間が産まれるのは種族的にも良いものでは?」
「それこそ間違った道に進むじゃろう。そして寿命も縮み、今現在に辿り着くまでに人間という種族は滅んでいただろうな」
「……ヒルメ様。その契約とはどの様な内容だったのでしょう?」
「………それは妾にも分からぬ。だが、数多くあったのじゃろうなぁ。だからこそ、マクネアの一族にしかその呪いは受け継がれておらぬ」
「………ありがとうございます。という事は私達が学んだ歴史と一族の歴史は嘘であったという事ですね?」
「全てが嘘というものではない。何処かを弄らなければちゃんとした物にならなかったという事じゃ。…………良い風に捉えればマクネアの祖は自分を犠牲にして人間という種族を他の種族から守ったのじゃよ」
長話が終わると、マクネアさん哀しそうな表情を浮かべ黙り込む。そして、俺はというとこの話に全くついていけなかった。
(ぜんっぜん分からん!えと……とりあえず、マクネアさんが持ってる『神の眼』ってのはヒルメ様の祖先との契約を破棄したからの罪……呪いって事なんだよな?)
「アルス、話は理解しておるか?」
「………すいません。マクネアさんの眼についてだけは分かるんですけど…」
「…………そうじゃな。お主に分かりやすく説明すればマクネアの祖は『勇者』であったのじゃよ」
ヒルメ様の言葉に俺はピーンと電球が出た。
「ああ!なるほど!……はいはい。分かりました分かりました」
ヒルメ様の言葉は何と分かりやすいのか!…と感心していたが、ふと考えると少し引っかかるものがあった。マクネアさんはまだ黙ったままだし、質問しても良いかな?
「あのぅ………質問しても良いですか?」
「なんじゃ」
「その………さっきから分かりやすい説明をしてもらってるんですけど…」
「なんじゃ。まだ理解出来ておらぬのか?」
「マクネアさんとの話は理解できました。…ただ、ヒルメ様。…………なんでそんな分かりやすく説明出来るんですか?」
「それは1つしか無かろう?…アルスが転生者だと知っておるからじゃ」
「……はい。それは前にも言われたんで覚えてます。でも、何故転生者だとわかったんですか?」
「ヒミコ様の秘宝を見た時の反応が物語っておったよ」
「……いや、それもでしょうけど、その前からヒルメ様は俺を転生者だと決めつけていた様な口ぶりでしたよね?……もうしてですか?」
ここに来てからの会話を思い出すと、どうも俺を転生者だと確信してからの会話であった気がする。そう考えるといくつもの疑問が浮かぶ。
「……妾の様な女王には『予言』というモノが残されておる。それには色々と未来の事が書かれておるのじゃ」
「それに俺の名前があったとか?」
「いや。そこまで正確なものではない。ただ、『どういう風な人物』とだけ書かれておるのじゃ」
「……それに俺が当てはまったって事ですか?」
「……まぁそういう事じゃな。決定打になったのはヒミコ様の秘宝を見てからじゃが」
「………じゃあ、もう一つの質問。ヒミコ様ってのは俺と同じ境遇人物だったんですか?」
「それは自分が一番分かっておるのでは無いか?この国に来てからそう思っていたじゃろう?」
「…………つーことはやっぱり…」
「そうじゃ。ヒミコ様はお主と同じ転生者であった。そして、自分の能力を全て国に使った稀有な人物であった」
「………能力の事まで知ってんのか」
「ヒミコ様から直接聞いたからな。会う度に愚痴っておったよ。『あたしはすろーらいふしたくてこの能力にしたのになー』とな。………アルス、すろーらいふとは何じゃ?」
「…隠居生活みたいなモンすよ」
「じゃとしたらヒミコ様には申し訳ない事をしてしまったのぅ。精力的に活動させてしもうたな。カカカッ!」
この時、『高速思考』が勝手に行動する。そして『高速思考』が弾き出した質問を口にしようとした時、ヒルメ様の眼が天井を向いたのに気付いた。
「『空間自縛』」
創造した魔法を使い、天井裏へと詠唱する。ニヤリと笑うヒルメ様と驚いた顔をしているマクネアさんを横目に、オレは無言のまま天井へと向かう。
(え?なに?!何が起こったの??)
天井裏には魔法で縛られている2人のヒトがおり、俺を見た瞬間暴れ始める。しかし、魔法により逃げ出す事は出来ず、もがくだけであった。
「…………」
2人の首根っこを掴むとそのまま下へと降りる。明るい所でわかった事だが、2人とも面を被っていた。
「よく妾の意図が分かったのう?」
「待機してましたからね」
「フッ…。不憫な性格よの。……では其奴らの面を剥ぎ取って貰うかの」
「承知しました」
無表情のまま2人の面へと手を伸ばし剥ぎ取る。そして2人の素顔を見て言葉を失うのであった。
「……………こんばんは。ケビン君とヒースクリス様」
「………………………」
「ヒ、ヒルメ様?」
「……む、悪い。しばし懐かしい思い出に浸っておった…」
「そ、それで………父の話は……」
不安そうな顔をしながらマクネアはヒルメへと問う。なぜならば、『昔話をしよう』と言ったヒルメがゴニョゴニョと言った後に黙ってしまったからだ。5分ほど黙ったままのヒルメをマクネア達は『何をまず話すか』を考えているものだと思っていた。しかし、いくらたっても話し始める気配は無く、10分程経ってから焦れたマクネアがヒルメの体を揺すったのだった。
「…ああ。………えっと、どこまで話したかのぅ?」
「な、何も話されておらぬのですが…」
「あれ?……………すまぬ。どうやら本当に記憶に浸っていたようじゃ…」
「い、いえ……」
ヒルメは軽く頭を下げると、頭の中で話す順番を決める。
「それじゃ………まずはマクネアの父、ライコスについてじゃが……」
ヒルメの言葉にマクネアは再度姿勢を改める。
「マクネアは父親が自殺したと聞かされておるのじゃったな?」
「はい。ですが、後の調査により父は他殺と聞きました」
「ふむ…。ではそこからまず話をせねばな」
「そこからとは?」
「焦るな焦るな。…まずお前の父親、ライコスはアルゼリアルでは自殺したと広まっている筈じゃ。何故そうなったかと言うと……マクネア。それはお主ら一族の宿命なのじゃ」
「一族の宿命?」
「そうじゃ。……お主は『神の眼』を継いでおるじゃろう?」
「……何故それを?」
「それはアルゼリアルが建国した際に妾とお前達の祖が契約を結んだからじゃ」
「ヒルメ様と契約を結んだ??」
「あー……簡単に言えば妾の祖がお主の祖に力を分け与えた…と言うべきかな?」
「そ、その契約とは?」
「その契約とは建国する際にただの人間では力が足り無さすぎるからじゃ。人間は自分よりも強い人間に従う傾向があるでのぅ。まぁ、それはヒトに限ったものでは無いが。…それで、人間達を纏めるに当たってリーダー的な人物が必要だったのじゃ」
「??? ど、どういう意味なのでしょうか?アルゼリアルが建国してから我が一族は選ばれたと聞いているのですが…」
「それはお主達の歴史であろう?もっと簡単に言えばアルゼリアルを建国したのはお主らの祖と言う事じゃ」
「…私のご先祖様が王だった…という事でしょうか?」
「そうじゃ。一番初めの王という事になる。じゃが、妾の祖と契約した際、他に王を立てるという事も含んでおった」
「それは何故でしょうか?」
「力を受け取った者は人外の力を得る事になった。そしてその契約には『邪な感情を持った時呪いが発動する』というものであった」
「邪な感情?」
「……アルスやマクネアには分からんかも知れぬが、ヒトとは強大な力を持つと傲慢になる。なまじ妾の祖の力を得たヒトであるならばな」
「……申し訳ありませんヒルメ様。その呪いというのは、もしかしてこの眼の事なのでしょうか?」
「そうじゃ。………先にお前達の祖について言っておくが、ソヤツは立派であったぞ?契約をしっかりと守り、人間達が平和に暮らせるよう数々の基礎を築いていった。もちろん、邪な感情を持つ事は一切無かった」
「…だとすれば、後の子孫が契約を破ったと?」
「そうなるな。妾も聞いた話にはなるが、どこかの祖先で傲慢になったのだろう」
「ヒルメ様、話の途中で悪いんですけど良いですか?」
「なんじゃアルス?」
「さっき歴史がどうたらこうたらって言ってましたけど……アルゼリアル王国に残っている歴史ってのは違うんですか?」
「良い質問じゃ。歴史というものはどうしても改編しなければならない時があるのじゃ。……アルスは読んだかも知れぬが、それは人間達にとっての都合の良い歴史であり、妾が知っているものとは全く違う」
「なんでそんな事をしたんですか?」
「…そうじゃな。その当時の話をまずはした方が良かろうな。………この大陸には数多のヒトがおった。そして、そのヒトには種族による特徴があったのじゃ」
「特徴?……それって例えば獣人族であれば足が速いとか?」
「そのような物じゃな。妾の種族は長命、獣人族は獣の能力、ドワーフ族は力に特化しておった。じゃが、人間という種族は他の種族と比べて劣っていたのじゃ。…………それを踏まえれば簡単な話じゃ。能力が劣っている種族は他の種族から格下に見られ、最初の頃は奴隷扱いであった」
「奴隷?いや、まさかそんな…」
「ガランドールを思い浮かべれば納得出来るのではないか?アヤツはまさに初期の獣人族そのものじゃ。……そして、奴隷扱いされていた人間は数も減りもはや絶滅する手前まで来ておった」
「それでマクネアさんの祖先がヒルメ様の祖先と契約を結んだって事ですか?」
「そうじゃ。……そもそも最初は人間には魔法は使えぬものであった。じゃが、妾の祖と契約した事により魔法を扱える者が産まれるのじゃ」
「…って事は魔法が使えるようになったのはヒルメ様の祖先のお陰って事ですか?」
「細かく言えば長話になるが、妾の祖と契約した事により才能が芽吹いたという事じゃな」
「ヒルメ様。その話が事実ならば、私達の一族はエルフと似ている…という事になりますよね?」
「そうなるな。……じゃが、ここでまたややこしい話になるので簡潔に言うが、妾達の種族と似ているのはマクネアの一族のみとなっておる」
「…何故ですか?私の考えでは祖先が……まぁ他の人間とまぐわる事によって子を沢山作った筈ですよね?」
「妾達は、人間という種族が魔法の才能を芽吹かせたキッカケに過ぎん。それにお主の祖には子を沢山産む事は許さなかった」
「それも契約という事ですか?」
「いや、それはただの生殖器の問題じゃ。…妾の祖と契約した事で子作りの能力は最低限にしたからな」
「それは何故?」
「……当時奴隷扱いされておった人間にエルフの血を濃く継いだ者が現れたらどうする?」
「……それはそれでいいんじゃないすか?」
「甘い。……アルスに分かりやすく説明すればイジメられっ子が強大な力を持った時、どうすると思う?」
「……………あー…………報復するって事ですか」
「復讐…といった方が良いじゃろうな。それに契約には呪いが含まれておる。今でこそその様な者は居らぬが………もし当初、マクネアの祖先が子を沢山産ませたとしたら?その子の血脈の中に呪いが出る者が沢山産まれるであろう」
「……でも産まれるのは別にしても、強い人間が産まれるのは種族的にも良いものでは?」
「それこそ間違った道に進むじゃろう。そして寿命も縮み、今現在に辿り着くまでに人間という種族は滅んでいただろうな」
「……ヒルメ様。その契約とはどの様な内容だったのでしょう?」
「………それは妾にも分からぬ。だが、数多くあったのじゃろうなぁ。だからこそ、マクネアの一族にしかその呪いは受け継がれておらぬ」
「………ありがとうございます。という事は私達が学んだ歴史と一族の歴史は嘘であったという事ですね?」
「全てが嘘というものではない。何処かを弄らなければちゃんとした物にならなかったという事じゃ。…………良い風に捉えればマクネアの祖は自分を犠牲にして人間という種族を他の種族から守ったのじゃよ」
長話が終わると、マクネアさん哀しそうな表情を浮かべ黙り込む。そして、俺はというとこの話に全くついていけなかった。
(ぜんっぜん分からん!えと……とりあえず、マクネアさんが持ってる『神の眼』ってのはヒルメ様の祖先との契約を破棄したからの罪……呪いって事なんだよな?)
「アルス、話は理解しておるか?」
「………すいません。マクネアさんの眼についてだけは分かるんですけど…」
「…………そうじゃな。お主に分かりやすく説明すればマクネアの祖は『勇者』であったのじゃよ」
ヒルメ様の言葉に俺はピーンと電球が出た。
「ああ!なるほど!……はいはい。分かりました分かりました」
ヒルメ様の言葉は何と分かりやすいのか!…と感心していたが、ふと考えると少し引っかかるものがあった。マクネアさんはまだ黙ったままだし、質問しても良いかな?
「あのぅ………質問しても良いですか?」
「なんじゃ」
「その………さっきから分かりやすい説明をしてもらってるんですけど…」
「なんじゃ。まだ理解出来ておらぬのか?」
「マクネアさんとの話は理解できました。…ただ、ヒルメ様。…………なんでそんな分かりやすく説明出来るんですか?」
「それは1つしか無かろう?…アルスが転生者だと知っておるからじゃ」
「……はい。それは前にも言われたんで覚えてます。でも、何故転生者だとわかったんですか?」
「ヒミコ様の秘宝を見た時の反応が物語っておったよ」
「……いや、それもでしょうけど、その前からヒルメ様は俺を転生者だと決めつけていた様な口ぶりでしたよね?……もうしてですか?」
ここに来てからの会話を思い出すと、どうも俺を転生者だと確信してからの会話であった気がする。そう考えるといくつもの疑問が浮かぶ。
「……妾の様な女王には『予言』というモノが残されておる。それには色々と未来の事が書かれておるのじゃ」
「それに俺の名前があったとか?」
「いや。そこまで正確なものではない。ただ、『どういう風な人物』とだけ書かれておるのじゃ」
「……それに俺が当てはまったって事ですか?」
「……まぁそういう事じゃな。決定打になったのはヒミコ様の秘宝を見てからじゃが」
「………じゃあ、もう一つの質問。ヒミコ様ってのは俺と同じ境遇人物だったんですか?」
「それは自分が一番分かっておるのでは無いか?この国に来てからそう思っていたじゃろう?」
「…………つーことはやっぱり…」
「そうじゃ。ヒミコ様はお主と同じ転生者であった。そして、自分の能力を全て国に使った稀有な人物であった」
「………能力の事まで知ってんのか」
「ヒミコ様から直接聞いたからな。会う度に愚痴っておったよ。『あたしはすろーらいふしたくてこの能力にしたのになー』とな。………アルス、すろーらいふとは何じゃ?」
「…隠居生活みたいなモンすよ」
「じゃとしたらヒミコ様には申し訳ない事をしてしまったのぅ。精力的に活動させてしもうたな。カカカッ!」
この時、『高速思考』が勝手に行動する。そして『高速思考』が弾き出した質問を口にしようとした時、ヒルメ様の眼が天井を向いたのに気付いた。
「『空間自縛』」
創造した魔法を使い、天井裏へと詠唱する。ニヤリと笑うヒルメ様と驚いた顔をしているマクネアさんを横目に、オレは無言のまま天井へと向かう。
(え?なに?!何が起こったの??)
天井裏には魔法で縛られている2人のヒトがおり、俺を見た瞬間暴れ始める。しかし、魔法により逃げ出す事は出来ず、もがくだけであった。
「…………」
2人の首根っこを掴むとそのまま下へと降りる。明るい所でわかった事だが、2人とも面を被っていた。
「よく妾の意図が分かったのう?」
「待機してましたからね」
「フッ…。不憫な性格よの。……では其奴らの面を剥ぎ取って貰うかの」
「承知しました」
無表情のまま2人の面へと手を伸ばし剥ぎ取る。そして2人の素顔を見て言葉を失うのであった。
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