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毒華の怒り
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毒華と呼ばれた王女は、優雅に跪くと、頭を垂れる。
「おかえりなさいませ、陛下」
「うむ。大義である。面を上げよ」
玉座に座るのは当然だが、この国の王である。
大柄な体躯。鋭い眼光。撫で付けられてはいるが、長い髪と顎髭は獅子の鬣を彷彿とさせる。
「……やれやれ、やっと帰って来られた。姫よ、この父を癒してくれんか」
「台無しですわ、陛下」
「そう言うな。三ヶ月も愛しい娘に会えない苦行明けなんだから」
やおら立ち上がると、腕を広げる。
「さあ、父の胸に飛び込んで来てくれ、我が最愛の娘よ!」
「はいはい……仕方ありませんわね……」
言葉通り飛び込んだりはしなかったが、王女は素直に王の腕に抱き抱えられる……かと思いきや。
「あだだだだ!」
ベリベリと白い腕が王の髭を毟り取る。
「……痛いではないか」
「娘に剣を向けたんですから、その位は我慢なさいませ……まったく。何が革命軍の頭脳、不遇の陪臣騎士、家名を持たぬ男ジャンですか」
「なんだ……気付いておったのか……」
「髪を染めて髭を剃った位で父親の顔を見間違える程、愚かでは無いつもりですわ」
「……そなたの兄弟は気付かなんだが?」
「だから、一緒にしないでくださいませんか?」
私、本気で怒りますわよ?
「あの方々は、陛下の王冠と服しか見えない病人ですわよ」
「違いない」
呵呵と笑う王を白っとした目で見ながら、王女はため息を吐いた。
「それで?南方は楽しかったですか?」
「おかえりなさいませ、陛下」
「うむ。大義である。面を上げよ」
玉座に座るのは当然だが、この国の王である。
大柄な体躯。鋭い眼光。撫で付けられてはいるが、長い髪と顎髭は獅子の鬣を彷彿とさせる。
「……やれやれ、やっと帰って来られた。姫よ、この父を癒してくれんか」
「台無しですわ、陛下」
「そう言うな。三ヶ月も愛しい娘に会えない苦行明けなんだから」
やおら立ち上がると、腕を広げる。
「さあ、父の胸に飛び込んで来てくれ、我が最愛の娘よ!」
「はいはい……仕方ありませんわね……」
言葉通り飛び込んだりはしなかったが、王女は素直に王の腕に抱き抱えられる……かと思いきや。
「あだだだだ!」
ベリベリと白い腕が王の髭を毟り取る。
「……痛いではないか」
「娘に剣を向けたんですから、その位は我慢なさいませ……まったく。何が革命軍の頭脳、不遇の陪臣騎士、家名を持たぬ男ジャンですか」
「なんだ……気付いておったのか……」
「髪を染めて髭を剃った位で父親の顔を見間違える程、愚かでは無いつもりですわ」
「……そなたの兄弟は気付かなんだが?」
「だから、一緒にしないでくださいませんか?」
私、本気で怒りますわよ?
「あの方々は、陛下の王冠と服しか見えない病人ですわよ」
「違いない」
呵呵と笑う王を白っとした目で見ながら、王女はため息を吐いた。
「それで?南方は楽しかったですか?」
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