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辺境騒乱編

時を越える者と使役されし竜姫6

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 【時の扉タイムゲート】を抜けて帰ってきた俺は即座に扉を閉じた。
 確実に追ってきているだろう魔犬を1秒でも足止めする事が出来る様に、この空間座標への侵入者に対する防壁魔法を展開する。
 周囲の時空間を食い破って出て来る事が無いように【時の扉タイムゲート】の扉を閉めるだけで消滅させず、時空間の固定と周辺座標の結界維持をする術式の柱にした。

 「これで追いついてくるにしても、出口は【時の扉タイムゲート】の扉だけだ」
 「そんなに厄介な相手なんですか?私を含めて、この子達4匹は全員がLV100000を超えていますわ」
 
 うんうんと頷く4匹と誇らしげに主張する主だったが、俺がその驕りを打ち砕く。

 「ああ、1匹ならLV120000程度だからお前らでも何とかなるだろうよ。けどな?コイツはどんな仕組みかわからねぇが、次から次へと現れやがるんだ。まるで並行世界、並行宇宙、並行時空から同一の存在がここを目的地にして飛ぶが如くな」

 俺も箱庭時代にコイツの素材が欲しくて戦った事があるのだが、あの時は大変だった。
 モグラ叩きの様に、次から次へと現れるコイツに激怒したティアマトが【運命崩壊ディスティニーデストラクション】とかいう関連時空全崩壊魔法を使用するのを、他の神様達と全員で止めたのだ。
 MMORPGで強敵が無限湧きするポイントにキャラクターを放置するイメージでOKだ。いつまで経っても際限無く現れるので、目的が無い人はウンザリするだろう。

 「あの時は難儀したんだ。今回は神様達も居ないしなぁ......俺もちょっと苦労しそうだぜ?」

 ゴンゴンと扉に体当たりしているのか、衝撃と共に音が伝わってくる。
 恐らく、コイツを殺すとあの無限連鎖が始まるのだろう。
 今の俺ならば、ティアマトの如く出現する端から撃滅出来るだろうが、【時の扉タイムゲート】の維持へ魔力を回している以上、ジリジリと追い込まれていくだろう。
 アイテムボックス内の財宝を使用して回復すれば良いんだが、こちらは某ゲームの泥手狩りをする気は無いのである。
 
 「それでは一体どうすればよろしいんですの?」
 「そうだな。獲物を誤認してどこかに消えてもらうのが一番だろうさ」

 箱庭時代で苦労したあの時に、恐らく俺もこの手のシチュエーションは来るだろうと、対策は講じてあるのだ。
 俺達全員分の身代わり人形を瞬時に作成した俺は、更に行動を続ける。
 気配隠蔽の術式を発動させて、全員が避難出来る空間を構築すると、全員を誘導した。
 後は作り上げた人形に全員の意識を転写して、遠隔操作可能にする。

 「うむ、我ながら良い出来じゃないか。これなら大丈夫だろう」
 「あっちの空間に本体が避難しているのに、ここに自分が居るというのは変な感覚ですわね」
 「この胸の出来とか素晴らしくないか?本物みたいだろ」

 ふにふにとやわらかい胸を触る俺にローゼンシアの表情が凍りつく。

 「なななな、何て事しますの!変態!痴漢!」
 「俺の作った人形じゃないか!生で触った分けでもあるまいし、減るもんじゃないだろう?」
 「減りますわ!何て事しますのよ!」
 「ローゼンシア様への無礼......看過出来んな」 「主の無念は我々が晴らす」 「デスっていうです!」
 「お、おい!ぬわぁああああああ」

 4人のコンビネーションで袋叩きにされる俺だったが、誰も助けてくれないだと!?......解せぬ。

 「ケイ様、帰って早々何をするかと思えば、人形プレイにセクハラだなんて......私もマニアック過ぎると思うのですが?」
 「ケイの変態!2人の嫁が居ながらあんな乳デカ女に!」
 「ち、乳デカ!?」
 
 イーリスとエリスに攻められる俺だったが、エリスの発言に口をパクパクさせて絶句しているローゼンシアが少々哀れだった。
 そんなやり取りをしている内に、扉の方がそろそろ限界が近いらしく、術式に亀裂が入るのを感じ取った。

 「む、そろそろ来るぞ。イーリスとエリスは避難してくれ。俺達はアイツと一戦した後に別空間へ誘導する」
 
 全員が避難したのを確認して、避難用の隔離空間を閉じる。
 それと同時に扉を破壊した。
 時空間からこの世界へ現れたティンダロスの猟犬は、こちらの世界での肉体を構成し始める。
 何と表現すれば妥当なのか分からないが、ひどい悪臭が立ち込める中、青黒い煙の様な物が固まり、肉体を形成していく。

 ティンダロスの猟犬と言われるこの魔犬は、時間が生まれる以前の超太古、異常な角度をもつ空間に住む不浄な存在とされる。

絶えず飢え、そして非常に執念深い。四つ足で、獲物の「におい」を知覚すると、その獲物を捕らえるまで、時間や次元を超えて永久に追い続ける。獲物を追う様子から「猟犬」と呼ばれるが、犬とは全く異なる存在である。

 という記述があるが、こちらの世界では醜悪な容姿の犬だった。
 体全体が腐れ落ち、骨と零れ落ちる粘液で構成されたゾンビ犬とでも言えば良いだろうか。
 
 「GURURURURURURURURURU!」

 唸り声を上げながら獲物を追い求める魔犬が現れた瞬間に、俺が一撃を繰り出した。
 
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