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高校生×ターゲット=捕捉確定? 1
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神谷 一玖 私立有学館高校に通う18歳。容姿端麗、スタイル抜群、高校一の秀才。父は田舎の不動産王で母は調香師、兄は実家の老舗旅館を経営している。
見栄っ張りの父に自立と高学歴を強制され、都会の有名私立男子高校に通い始めた頃、一玖は衝撃的な体験をする事になる。
それは、自分を見て色めき立つ男子が大勢いるという事。男子校なのに、下駄箱にはラブレター。尽きることの無い放課後のお誘い。授業中の視線。着替えの時には更にいたたまれない。
同性からの友情ではない好意を、日常的に浴びせられるという体験。
地元にいた時から異性の注目を浴びている自覚はあった。まさか同性にまで・・・と、始めのうちは恐怖でしか無かった。けれど半年もすれば慣れ始め、むしろ同性を虜にする自分の魅力に自惚れていくようになった。
そんなある日、通学途中で見かけた他校の男子生徒2人に目を奪われる一玖。
1人は儚げで美しく、今にも泣き出してしまいそうな表情をしていて、その肩を支えるもう1人は男らしさの中に優しさを滲ませたような・・・。
周りの世界から切り離されたような2人の姿はまるで、物語の中の姫と王子の様だと思った。
男同士なのに・・・。どうしてこんなに見蕩れてしまうんだろう。
一玖は気付く。大きく脈打つ心臓は、姫のような男のその泣き出しそうな表情に反応しているのだと。
あの人の顔を、もっと近くで見てみたい。あの泣きそうな表情を、もっともっと歪ませて涙を流させてみたい。自分の手で・・・
それからも時々2人を見かけた。いつも一緒にいて入り込む隙間など全く無く、話しかける勇気なんてものも一玖には無い。
声を掛けてきた他校の女子や歳上のおねえサマ達と恋愛じみた事をして、ケンカした時なんかに泣き顔を見てそれなりに興奮する自分に気付いた。
俺は『泣き顔フェチ』なのかもしれない。だけど・・・酷く泣かせてみたい、なんて激しい感情は、あの人にしか湧いてこない。
月日は流れて、一玖は2人を見かける事が無くなり、もう二度とあの姫を見ることは無いかもしれない、と絶望にくれた時・・・
偶然にも、あの姫のような彼の写真をSNSアプリ上で見つけてしまう。
彼のファンだという第三者が勝手に撮って載せている数々の写真。その中から手掛かりを探し、ひとつ歳上の大学生だと知り、同じ駅を利用する場所でアパートを借り彼を探す事に。
すぐに彼を見つける事が出来た。
相変わらず姫を守る王子のような もう1人も一緒だ。
もしかしたら、2人は恋人同士なのかもしれない。同性愛は、都会では珍しくないのかも・・・
でも、それでもいい。人混みの中で瞳を潤ませている姫を見ているだけでいい。
そう思っていた一玖は千載一遇のチャンスを得る。
いつも一緒にいるはずの王子が、今日はいない。姫の大きな瞳が不安で揺れている。苦しそうに俯き、今にも倒れてしまいそうだ。
「おにーさん、大丈夫?」
放っておけずに、一玖は思わず声を掛ける。『架』という名前はSNSアプリで既にリサーチ済み。しかし、知らないはずの名前を呼ぶのは不自然な為、白々しく『おにーさん』と呼ぶ。
ビクッと肩を上げ、よろめく架。
「あっ!!」
ホームの外へ向かって倒れそうになる架の腕を掴んで引き寄せる。
「・・・ぶね・・・っ」
胸に寄り掛かる架の重みに、一玖の心音が速度を上げる。
「ごめ・・・なさい、触ん・・・ないでっ」
体を強ばらせ自分を拒否する彼の言葉に、何故か胸が高鳴る。
・・・嫌がってる。可愛い。このまま離さなかったら、架は泣いちゃうのかな。
抱きしめ背中を上下にさする。
「何もしないから落ち着いて。ゆっくり息して」
泣け・・・泣けよ。
一玖の思いとは逆に、落ち着きを取り戻しつつある架の様子に少しだけ落胆する。
まあいいか・・・。こうなったら、架にとことん近付くことに尽くそう。
幸いと言っていいのかわからないが、歳の離れた一玖の兄は父からの重圧に耐え切れず、学生時代には癇癪を起こしたりパニックを起こしたりする事が頻繁にあって、それを何度も見てきた。
兄ちゃんを見てきたからわかる。こういうタイプは、一度心を許した相手には依存する傾向がある。
俺が距離を詰めれば、架をあの王子から引き離せるかもしれない。
もし架とあの王子が恋人同士なら別れて欲しい、とまで一玖は考える。
が、話を聞いていくうちに2人は幼なじみだと知り、いつも一緒にいる理由も知った。
そして、他人のにおいを受け付けない彼が幸運にも自分を受け入れてくれたことで、一玖の気持ちは加速する。
2人は幼なじみ。でも、弱くて脆い姫をボディガードのように守る王子、という関係はそう簡単に崩せそうにはないな。でも、絶対手に入れる。
架を手に入れて、俺自身の手で泣かせてみせる。
「助かったよ、ありがとな。えと、いっく・・・?」
別れ際に自分の名前を呼んでくれた架。一玖は確信する。
やっぱり架は依存しやすいタイプだ。思い切り優しくしてやれば、簡単に心を許すに違いない。
「んーん。こっちこそありがと。またね、架」
一玖が笑顔で手を振ると、ふっと顔を緩ませる架が窓の外に見えた。
架と別れた後、電車に揺られながら一玖は込み上げて来る笑いに歪む口元を手で覆う。
さて・・・次はあのボディガード王子をどう引き剥がしてやるか考えなきゃな・・・。
その表情は悪魔のようでもあり、無邪気な子供のようでもある。
見栄っ張りの父に自立と高学歴を強制され、都会の有名私立男子高校に通い始めた頃、一玖は衝撃的な体験をする事になる。
それは、自分を見て色めき立つ男子が大勢いるという事。男子校なのに、下駄箱にはラブレター。尽きることの無い放課後のお誘い。授業中の視線。着替えの時には更にいたたまれない。
同性からの友情ではない好意を、日常的に浴びせられるという体験。
地元にいた時から異性の注目を浴びている自覚はあった。まさか同性にまで・・・と、始めのうちは恐怖でしか無かった。けれど半年もすれば慣れ始め、むしろ同性を虜にする自分の魅力に自惚れていくようになった。
そんなある日、通学途中で見かけた他校の男子生徒2人に目を奪われる一玖。
1人は儚げで美しく、今にも泣き出してしまいそうな表情をしていて、その肩を支えるもう1人は男らしさの中に優しさを滲ませたような・・・。
周りの世界から切り離されたような2人の姿はまるで、物語の中の姫と王子の様だと思った。
男同士なのに・・・。どうしてこんなに見蕩れてしまうんだろう。
一玖は気付く。大きく脈打つ心臓は、姫のような男のその泣き出しそうな表情に反応しているのだと。
あの人の顔を、もっと近くで見てみたい。あの泣きそうな表情を、もっともっと歪ませて涙を流させてみたい。自分の手で・・・
それからも時々2人を見かけた。いつも一緒にいて入り込む隙間など全く無く、話しかける勇気なんてものも一玖には無い。
声を掛けてきた他校の女子や歳上のおねえサマ達と恋愛じみた事をして、ケンカした時なんかに泣き顔を見てそれなりに興奮する自分に気付いた。
俺は『泣き顔フェチ』なのかもしれない。だけど・・・酷く泣かせてみたい、なんて激しい感情は、あの人にしか湧いてこない。
月日は流れて、一玖は2人を見かける事が無くなり、もう二度とあの姫を見ることは無いかもしれない、と絶望にくれた時・・・
偶然にも、あの姫のような彼の写真をSNSアプリ上で見つけてしまう。
彼のファンだという第三者が勝手に撮って載せている数々の写真。その中から手掛かりを探し、ひとつ歳上の大学生だと知り、同じ駅を利用する場所でアパートを借り彼を探す事に。
すぐに彼を見つける事が出来た。
相変わらず姫を守る王子のような もう1人も一緒だ。
もしかしたら、2人は恋人同士なのかもしれない。同性愛は、都会では珍しくないのかも・・・
でも、それでもいい。人混みの中で瞳を潤ませている姫を見ているだけでいい。
そう思っていた一玖は千載一遇のチャンスを得る。
いつも一緒にいるはずの王子が、今日はいない。姫の大きな瞳が不安で揺れている。苦しそうに俯き、今にも倒れてしまいそうだ。
「おにーさん、大丈夫?」
放っておけずに、一玖は思わず声を掛ける。『架』という名前はSNSアプリで既にリサーチ済み。しかし、知らないはずの名前を呼ぶのは不自然な為、白々しく『おにーさん』と呼ぶ。
ビクッと肩を上げ、よろめく架。
「あっ!!」
ホームの外へ向かって倒れそうになる架の腕を掴んで引き寄せる。
「・・・ぶね・・・っ」
胸に寄り掛かる架の重みに、一玖の心音が速度を上げる。
「ごめ・・・なさい、触ん・・・ないでっ」
体を強ばらせ自分を拒否する彼の言葉に、何故か胸が高鳴る。
・・・嫌がってる。可愛い。このまま離さなかったら、架は泣いちゃうのかな。
抱きしめ背中を上下にさする。
「何もしないから落ち着いて。ゆっくり息して」
泣け・・・泣けよ。
一玖の思いとは逆に、落ち着きを取り戻しつつある架の様子に少しだけ落胆する。
まあいいか・・・。こうなったら、架にとことん近付くことに尽くそう。
幸いと言っていいのかわからないが、歳の離れた一玖の兄は父からの重圧に耐え切れず、学生時代には癇癪を起こしたりパニックを起こしたりする事が頻繁にあって、それを何度も見てきた。
兄ちゃんを見てきたからわかる。こういうタイプは、一度心を許した相手には依存する傾向がある。
俺が距離を詰めれば、架をあの王子から引き離せるかもしれない。
もし架とあの王子が恋人同士なら別れて欲しい、とまで一玖は考える。
が、話を聞いていくうちに2人は幼なじみだと知り、いつも一緒にいる理由も知った。
そして、他人のにおいを受け付けない彼が幸運にも自分を受け入れてくれたことで、一玖の気持ちは加速する。
2人は幼なじみ。でも、弱くて脆い姫をボディガードのように守る王子、という関係はそう簡単に崩せそうにはないな。でも、絶対手に入れる。
架を手に入れて、俺自身の手で泣かせてみせる。
「助かったよ、ありがとな。えと、いっく・・・?」
別れ際に自分の名前を呼んでくれた架。一玖は確信する。
やっぱり架は依存しやすいタイプだ。思い切り優しくしてやれば、簡単に心を許すに違いない。
「んーん。こっちこそありがと。またね、架」
一玖が笑顔で手を振ると、ふっと顔を緩ませる架が窓の外に見えた。
架と別れた後、電車に揺られながら一玖は込み上げて来る笑いに歪む口元を手で覆う。
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