公式 1×1=LOVE

Hiiho

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手フェチ×泣き顔フェチ=美BL

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3人が知り合って2週間。

電車2駅分の時間をぎゅうぎゅう詰めの車内で架を挟むように向かい合って立つ市太と一玖。

「いち・・・なんか、ごめんな。せっかく一玖と密着できるチャンス、俺が間に挟まってて・・・」

市太と前身をくっつけ合った架はバツが悪そうに呟く。

「気にすんな架。もし架を挟んでなかったら、一玖が近過ぎて、俺の下半身があらぬ状態になるかもしれないだろ」

「はは、架の前でそんな事になったら、さすがに笑えないっすもんね、市太さん」

「俺の前とかいうより電車の中はマズイだろ」

「そうだろ?だから、架とくっついてる方が安全なんだよ。俺は」

「俺も架とくっついてる方がいいな。あ、できれば俺の方向いてくれてるともっといいんだけど」

架にとって、拒絶反応を起こさない匂いの二人に囲まれているこの状態は非常に有難い。
けれど、もしかしたら自分は邪魔者なんじゃないか、という思いもある。



  市太は一玖を好きだと言ったけど、一玖にはその気はまだ無いみたいだ。俺のことをからかって、わざと市太に近付かないようにしてるっぽい。

  いちの為にも、どうにかして二人きりにしてやりたい。







翌日


いつものように電車に先に乗り込む市太。その後に架と一玖がついて行く。

「いた、痛たたたっ!ごめん、俺 下痢だわ!先行ってて!」

架はドアが閉まる寸前に電車を駆け降りる。

「ちょっ、架!? まっ・・・」

一玖の声が閉じたドアに阻まれて、窓の向こうの二人が遠ざかる。



  ちょっと無理があったけど、何とか二人の時間を作ってやれたな。頑張れよ、いち!



架は満足気な表情で三重にしたマスクを装着し、次の電車を待つ。






架が降りていった電車内で横に並ぶ市太と一玖。

「俺に密着したら勃つんじゃなかったでしたっけ」

「あー、寸前だけど、さすがに電車ん中じゃあな」

「マジで白々しい。架を好きなのバレバレっすよ」

「さあ~?どうだろうな。昔からずっと一緒にいるのが当たり前になってて、一番大事な存在であることは間違いないけど」



  フン、あくまで『幼なじみ』を通すつもりかよ。それなら・・・



「俺は架が好きみたいです。男を好きになったのは初めてだけど、架とはセックスしたいって思ってるんで」

市太の方を見る事無く、一玖が言う。

「できるもんならやってみろよ。俺がお前を好きだって知ってて、架が拒まないワケ無いけどな」

勝ち誇った笑みを浮かべ市太は一玖の手を握り、自分の顔の高さへと持ってくる。

「なにすんだよ。触んな」

一玖が咄嗟に引こうとした手を、市太は強く捕まえる。


「俺さ、女の子の綺麗な手が好きなんだ。でも、架の手が一番。・・・一玖もよく見たら綺麗な手してるな」

「・・・は?」


急になんだ?と戸惑う一瞬の隙、市太の口元に持っていかれた一玖の手の甲にピリッとした痛みが走る。



  こいつ、吸って・・・!?



ぱっと一玖の手を解放する市太。

「嘘だろ、なに付けてくれてんだよ!」

手の甲には市太が吸い付いた赤い痕がくっきりと浮かんでいる。


「俺のものになったフリしとくなら、架の傍に置いといてやる。それ以上望むな、クソガキ。次はその首筋につけてやってもいいんだぞ」

「な・・・っ」



  降って湧いたように昨日今日現れたクソ生意気なガキにマウント取られてたまるかよ。
  たとえ架が俺のものにならなくても、誰のものにもさせるつもりは無い。相手が女であろうが、男であろうが。



「わかったらさっさとガッコ行って机にでも齧り付いてろ」

大学の最寄り駅で停車した電車を降りる市太。

「待て!」

市太の後を追って電車を降り、腕を捕まえる一玖。


「架に、あんたの本性言ったら、どうなると思う?」

「本性?」

「本当は俺じゃなく架が好きで、とんでもなく歪んだ愛情で架を縛り付けてるってこと」

一玖は、市太を鋭い眼差しで睨む。

「それはお前も同じだろ。ずっと架を見てたの、俺が知らないとでも思ったか? 虎視眈々と架に近付くチャンスを狙って、今にも襲いかかろうとしてる野蛮なケダモノじゃねぇか」

そう言われて、一玖は言い返すことができない。



  こいつの言う通りだ。俺はその機会を得れば、架を無理矢理にでも泣かせたいと思ってる。それは普通とは言えない、歪んだ感情なのかもしれない。



「どうした? 言いたい事がもう無いなら、こんな所で油売ってないで勉学に励めよ」



  クソ腹黒王子が。余裕ぶりやがって・・・



「俺がてめーの本性、架の前で暴いてやるよ」

市太の胸ぐらを掴んで詰め寄る。

「どーぞご自由に。架が俺よりお前を信じてくれるといいな」

「信じさせる」

「へー・・・。丁度いい。無駄な足掻きだって思い知らせてやる」


詰め寄ったままの一玖の顔に近付き、市太は唇を寄せる。

反射的に一玖が顔を背けると、見覚えのある顔が視界の端に飛び込んでくる。


「あ・・・ごめ・・・。邪魔した・・・?なんか、ケンカでもしてんのかと・・・」

一本遅れの電車で駅に着いた架が、二人の様子を見てしどろもどろになっている。

「まさか、キスするほど進展してるとは・・・」

「一玖が大胆に引き寄せてくるから。でもやっぱり人前じゃ恥ずかしかったみたいで・・・未遂だよ」

「違っ!架、ごご誤解だしっ」

慌てて否定する一玖。けれど胸ぐらを掴んで引き寄せているのはどう見ても自分。

市太の服を離すが、今更もう遅い。


「イヤ正直、男同士ってどーなんだよって思ってたけど。市太と一玖なら、なんか見れる気がする。二人ともイケメンだし、綺麗な感じする。でも!あんま人前でイチャつくなよな、こっちが恥ずかしーわ!」

「ありがとな、架。気を付けるよ。まだ一玖からちゃんと返事もらってねーし」

「違う!違うんだって・・・こいつが無理矢理に・・・架、信じ・・・」

「あーもう、わかったわかった、照れんなって!もーいいから学校行けよ一玖、また遅刻すんぞ」

じゃあな、と言ってエスカレーターに乗る架と市太。


振り返り 再び勝ち誇った顔をする市太を見て、一玖はガックリと肩を落とし大きく溜息を吐く。



  近付いても近付いても架が遠すぎる・・・。



前途多難。一玖がそう思っていた架との関係が大きく動き出す未来は、すぐそこまで来ていた。



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