公式 1×1=LOVE

Hiiho

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高校生×恋=ノンストップ 3

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『──佐野 市太 について──

    架くんの幼なじみ(家が隣)
    架くんのナイト
    架くんの保護者
    架くんの・・・』


  架の何かっていうのはもういいって!


カナから送られてきたメッセージを見て心の中でツッコむ一玖。


『青陵大学経済学部1年
彼女無し(架くんとデキていると噂有り)
所属サークル無し
交友関係それなりに広い
懇意にしている先輩、経済学部2年 山下 つばさ(ヤリチンで有名)の所属している飲みサーに時々参加し、後腐れの無い女性と遊んでいるらしい(これマジ、佐野くんとヤッた友人からの情報)』

「マジか・・・あいつ」


  架を束縛しておいて、自分はちゃっかり女と遊んでるとか最低じゃん。
  俺は架と知り合いになれてからは一切、誰の誘いにものってないし、まして彼女なんて作る気にもなれないってのに。
  でもなんでだ俺。別にそういうことをしちゃいけない決まりがある訳でもないのに。どうしても架じゃないとダメだって勝手に思い込んでる。

  今朝だって、架の行動ひとつに俺は狼狽えて・・・

  向こうにいた時は、架は確実に俺に惚れてるって思ってた。「好き」とは一度も聞いてないけど、あまりにもわかりやすい態度だったし、何よりセックスしてる時のメロメロになってるあの感じ・・・絶対に俺に溺れてると思ってたのに。

  なのに何だよ。市太さんとのことを考えろって!何だよあの冷めた態度!俺を避けるあの感じ!
  すげー傷つく・・・


一玖は困惑していた。自分の思い通りに泣かせて所有物のように扱えると思っていた架が、東京に帰ってきた途端に態度を急変させた。

掴んでいた砂が指の隙間からサラサラと落ちて無くなるような虚しさと、落ちた砂が誰かの手の平で受け止められ奪われたような苛立ち。


  昔から俺は、兄貴と違って要領が良かった。頭の出来も悪くなかったし、幸い見た目にも恵まれてた。両親は仕事ばかりだったけれど家は裕福だったし、欲しいものは望めば大抵手に入ったし、『求める』より『選ぶ』立場にずっといた。飽きたら捨てる、そのタイミングを決めるのはいつだって俺自身だったはず。
  なのに、架と市太さんと親しくなってから、それが上手くいかない。

  『架』というお気に入りを見つけてようやく手に入れて、お楽しみはこれからだったはずなのに・・・

  何かを得るためにここまでしたのも初めてで、予期せぬところでそれを失ってしまうなんてことも初めてだ。





『そういえば、佐野くん今週末の飲み会に誘われてたみたい。先輩が強引で強制参加させられるらしい(友人談)』

市太が週末飲み会だと知り、一玖はすぐにカナに返信する。

『おいストーカー女。佐野市太が飲み会行く日、架はいつもどうしてる』

『架くんは飲み会なんか参加するようなタイプじゃないし、授業が終わったらまっすぐ自宅に帰ってる。そういう所がもう汚れを知らない王子って感じで~、他の男と違って清純で潔白で素敵よね♡』


  汚れを知らない、だって? めでたい女。架は俺に尻の穴を弄られてぐずっぐずになっちゃうようなイヤラシイ男なのに。まあチンコが汚れて無いから間違いでもないか。


『じゃあこれ、約束の報酬』

一玖は画像を張り付けてカナに送る。

『なによこれ!架くん浴衣着てないじゃない!』

一玖が送ったのは、旅館の宿泊客が使用した後の浴衣を大きなランドリーバスケットの中へ入れている写真。

『架がバイトで浴衣を回収してる姿。貴重だよ。架の初めてのバイトなんだから』

『架くんの貴重な初めてをありがとうございますぅぅぅ!』

架の初めて、という言葉にカナは満足したようだった。








木曜日。一玖はいつもの時間に駅へ行く。人混みの中で市太の頭頂部を見つけ、近付き架の姿を探すが見当たらない。

「おはようございます。・・・架は?」

「はよ。さあ。大学へは来てるけど、昨日も今日も起こしにも来ねーし早い時間の電車で行ってんじゃねーか?つか俺に聞くな」

「あんたに聞かなきゃ誰に聞くんです?」

そう言ってから一玖は、市太は架の事なら何でも知っていると認めているようで少し悔しい気持ちになった。

「架に避けられてるんですか?カワイソー」

「お前だって避けられてんだろ」

「う・・・それは、」

「いっそ付き合うか、俺たち。そうすれば架も・・・」

とんでもないことを言い出す市太に一玖は驚愕する。

「ありえないですよ!市太さんとなんて。絶対にお断りです」

「だよな。俺だってお前を好きなフリしてるだけで気分悪いのに。なんでそんなこと言ったのか自分でもわかんなくなったわ」

  架に避けられるなんて、今まで一度も無かった。どう対処していいかわからなくて、自分から行動できない。情ねーな、俺。

はあ、と市太は大きく溜息を吐く。



「俺を好きだって言ったこと、訂正したらどうです?それで架に気持ち伝えて、思いっきり玉砕でもしたらいいのに」

「それができねーからこうなったんだろ。生まれた時からほとんどの時間をあいつと一緒に過ごして来たんだ。自分から壊すなんて簡単にはできない。お前はそんな相手がいないからわかんねんだよ」

いつも強気な市太がなんだか弱々しく見える一玖。


  俺にだって幼馴染みくらいいる。そいつとは、言わばお互い離れたくても離れられない関係だ。もっとも架と市太さんのようなベタベタした関係じゃないけど。


「まあ、しばらく様子見たらどうです?寂しいのはわかりますけど、体質が改善してひとりでどこまでやれるか試してみたいだけかもしれないし」

一玖の言葉を、そうだな、とやけに素直に聞き入れる市太。

そんな市太の様子を見て「これはチャンスだ」と一玖は密かに口角を上げた。



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