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1カ月ぶりに会った夫は険しい表情をしていた。

金髪の髪に青い瞳の整った顔立ちの夫は、結婚しているにも関わらず社交界で未だに人気が高い。

夫のライル・オーガンジス侯爵は、妻のルナリーに一枚の書類を渡してきた。


それは、離婚届だった。

夫は言った。
「ルナリー。今までありがとう。」


その用紙には既に、ライル・オーガンジスの署名まで記入されている。


ルナリーは、以前から分かっていた事だが、酷くショックを受ける。


ルナリーは小刻みに震える手で書類を受け取り、夫へ言った。

「こちらこそ、ありがとうございました。お元気で。」


夫は、ルナリーを見ながら何か言いたそうにしている。


結局、ルナリーは夫へ伝える事ができなかった。


でも、その方が良かったのかもしれない。


夫と久しぶりに対面した応接室のドアの向こうに女性の人影が見える。その女性は聞き耳を立てているようだ。


夫の恋人のメリージェン。夫と同じ金髪で、緑色の瞳の彼女は、表情豊かでとても美しい。このオーガンジス侯爵家のほとんどの使用人達は、彼女の方が、侯爵夫人に相応しいと言っている。


オーガンジス侯爵家でのルナリーの味方は、実家から連れてきたメイドのアンナだけだった。


夫のライルは、ルナリーに言った。
「ルナリー、もし君さえよければ、、、、、」


その時、タイミングを見計らったかのように、応接室のドアが開き、メアリージェンが入ってくる。
「ライル。会いたかったわ。」

メアリージェンは、妻のルナリーの目の前で、ライルに抱き着き、広く逞しい胸板に顔を埋めた。


夫のライルは、少し罰が悪そうに、メアリージェンの肩を押し離そうとしている。


(もう、私に気を遣う必要な無いのに、、、、)


そんな二人に背を向けて、ルナリーは応接室から出て行った。


(愛していた。誰よりも愛していた。でも、もういいの。解放してあげる。さようならライル。)



私の瞳から一筋の涙が流れ落ちた。



その涙が誰にも気付かれないように、私は自室へ急いで戻った。






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