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幼児編小話

乙女再来(日常:長)

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何事も、調査と言うのは必要不可欠な物。
あの人の事を知りたければ、自分の足で動かなきゃっ☆
そう。その為に私は今ここに、エイト学園にいるのだからっ!
もうっ、聞いてよっ。ほんっとうに大変だったのよっ。ここの制服手に入れるのっ。何でも愛しの鴇様が入学してからエイト学園の制服を手に入れて不法侵入する輩が増えてんですってっ!だから、正規の生徒手帳がないと店では売ってくれないのらしいのっ!おかげでオークションで愛しの鴇様の制服を落札する為に30万も使っちゃったわっ!!こつこつと貯めてた手術代がパーよ、パーっ!
ほんっとうに大変だったわぁ。不法侵入とかそう言う輩がいるから、最近の日本は犯罪者が増えて来てるのよっ!節度って大事よねっ!
さ、てと。
今は怒りを横に置いといて。
愛しの鴇様には顔がわれてるから、バッチリ化粧と髪も染め上げて来たわ。これで絶対バレないは・ずっ☆
まずは愛しの鴇様が登校してくるのを発見しないとっ☆待ってて、愛しの鴇様~☆
校門の前で愛しの鴇様が来るのを待機。勿論、物陰から観察よっ。真正面からなんて恥ずかしくて出来ないわっ、きゃっ☆

「なぁ、鴇。今日、姫に会いに行っていいか?」
「あ、オレも行くー」
「なら、俺も便乗させて貰うわ」
「…お前らなぁ。そう言いながら毎日家にくるな、鬱陶しい」

きゃあああああああっ!!!!
なになになんなのっ!?あの神々しい集団はっ!!
愛しの鴇様の周りにも神の御使いが三人もっ!!やだっ!!素敵ぃーっ!!
校門側の大木の影に隠れていた私の所まで光を放つなんてっ!?
目に焼き付けるのよっ!!この美しさを忘れないうちにっ!!
ふー…ふー…。
素敵…素敵よぉ…。愛しの鴇様が呆れながらも小さな笑みを浮かべてるわぁ。
あぁ、愛しの鴇様の隣にいる紫髪の彼。彼もまたいいわぁ。着崩してる制服から見えるシルバーが溜まらないわ。
その後ろを付いてくる、体育会系の彼。彼もいいっ。茶色の短髪も男臭くて堪らないけれど、それよりも体っ!体よっ!肉体美っ!美しい筋肉っ!あぁ、堪らないっ!
更にその体育会系の彼の横にいる、繊細な美人もいいわっ!男の子なのに色白でその青い髪が更にそれを際立たせて、眼鏡がまた似合ってるのよっ!知的美人最高ねっ!
むふー…むふー…。

「おい、鴇…」
「目に入れるな」
「ゆーても、あの視線は鳥肌もんやで?」
「殴るー?」

何かこっちにオラクルを授けてるわ。でもこの距離だと分からないの。ごめんなさい、愛しの鴇様っ!
でもやっぱり愛しの鴇様が一番だわっ!
蘇芳色の髪も素敵っ!鞄を肩から下げてるその姿も素敵っ!制服越しでも分かる筋肉も素敵っ!その顔から滲み出る色気と知性も素敵っ!
あぁんっ!抱いてっ!むしろ、踏んでっ!!
がふー…がふー…。

「後で警備に連絡しておく。行くぞ、お前ら」

冷めた一瞥を私に贈呈してくれると彼らは校舎内へ入っていった。
ふふっ。今日はどこまでも追うわよっ!!その為の制服っ、その為の30万よっ!!
授業?そんなの受けてる暇ねぇっ!
行くわよーっ!!
彼らが行く場所へ付いて行く。
ついでに情報も収集よっ!

「相変わらず、鴇様はかっこいいよなぁ」
「あぁ。あの丑而摩さんと対等に渡り合えるってすげーよな」
「そういや、この間のバスケの試合、みたか?」
「見た見た。俺マジでラッキーって思ったぜ。あんなすげー試合初めてみた。鴇様の3ポイントシュート、マジかっけーの」
「互いに一歩も譲らねぇんだもんなっ。同じ班の奴ら付いて行くだけで精一杯って言ってたぜ?」
「そりゃ言い過ぎだろ」
「そうかぁ?」
「そうだって。考えても見ろよ。俺達一般生徒が、鴇様達に付いてなんて行ける訳ねーもん」
「そっちの意味かよっ」
「確かにっ」

あははははっ。笑い声が聞こえる。
なるほど。多分体育会系の彼の事ね。丑而摩、ね。うん。覚えたわっ。
そんなに素晴らしい体育姿なら是非拝みに行かなくちゃっ!あわよくば、体操着の一枚や二枚や三枚や四枚くらい手に入れられたら最高ねっ☆

「おい、聞いたか?この間の模試の結果」
「模試の結果?」
「そうそう。何でも鴇様、全国トップだったらしいぞ?」
「全国トップ?鴇様が?」
「あれ?でも鴇様って模試では手を抜いてるって聞いたけど?」
「おれもそう聞いてる。模試でトップとると面倒だからいつも二番手になるように計算してるって話だったよな」
「そうなんだけど。何でも噂によると天川さんが勝負を挑んだ、とか」
「勝負?天川さんが?ならきっと負けられない理由があったんだろうな」

うんうんと神妙に頷いている。
天川…どっちの事かしら?でも紫髪の彼はどちらかと言えば私よりの人間の気がするのよ。だとしたら、あの眼鏡美人の彼の方かしら?
でも流石愛しの鴇様ねっ!勉強も出来るのは知っていたけれど、全国でトップなんて素敵ぃーっ!!

「なぁ、嵯峨子さん見なかったか?」
「嵯峨子さん?さっき鴇様と一緒にクラスへ行ったぜ?」
「あー…マジかー…。クラス行く前に聞いておきたかったんだけどなぁ。この英訳」
「おま、嵯峨子さんに聞きに行くとかどんだけチャレンジャーだよっ」
「え?嵯峨子さん、聞けばなんでも教えてくれるぜ?ただ一度だけしか説明してくれないから、一言一句を間違えずノートに写して後でじっくりそれを読み解くんだ」
「一言一句って無理だろ」
「いや、そうでもない。ゆっくり話してくれるからな。下手に教師に聞くより内容が面白いし分かりやすい」
「へぇ…。見た目は冷たそーなイメージあるのにな」
「あー、まぁな。眼鏡がそれを増長させてるよな」
「眼鏡だけか?あの綺麗な顔も、じゃねぇ?」
「あぁ、確かに。でも俺的にはあの人が女でも出来れば友達になりたいタイプだな」
「へぇー。今度俺も話しかけてみよ」
「あぁ、そうすればいいよ。んじゃ、俺行くなー」

だだだっと駆け抜けて行ったのを数人が見送る。
成程。眼鏡の彼は嵯峨子って言うのね。じゃああの紫髪の子が天川?まっ!?だとしたらあの子も賢いってことっ!?
はぁん、素晴らしいわぁ。人は見かけによらないのねぇっ!
さ、てと。愛しの鴇様のクラスはどこかしらー?
あ、発ー見っ☆
えーっと一時間目は何かしら………体育っ!?
なんてことなのっ!?早速愛しの鴇様の体育姿が見れるなんてっ!!
流れる汗を拭う愛しの鴇様っ!やばいっ!やばいわっ!!
どふー…どふー…。
愛しの鴇様は早速移動するのかしらっ!?それとも男子校だし、教室で着替えるかしらっ!?
ドアの隙間から覗いちゃうわっ!!
って、あら?愛しの鴇様がこちらに気付いたわ。目が合ったっ!?
いやぁん、ドキドキしちゃうわっ☆
あら?あらら?
こっちに来るっ!?もしかして私の愛に気付いて…!?
そのまま、私の目の前に現れた愛しの鴇様。
私と視線がもう一度重なって…逸らされた。
あら?あらら?照れ屋なのかしら?
「……邪魔だ。どけ」
あ、そゆこと?通りたかっただけなのね。体を退くとあっさりと愛しの鴇様は出て行ってしまう。
制服のまま出て行ったわよね?着替えないのかしら?
後を追うべき?追うべきなの?でも待って。教室の中はそのクラスの人達が着替えてる訳よね?これは一度覗いておくべきじゃないかしらっ!?
いいえっ、覗きなんて駄目よっ!ここは堂々と中へ入りましょうっ!堂々とドアを開けてっ!!
……あら?誰もいないじゃない。何時の間に…?
キョロキョロと中を見回すと、私が立っている教室の入り口の後方にもう一つドアがあった。あらあら。皆そっちから出て行ったのね。
…と言う事は、もしかしてもしかするとっ!!
愛しの鴇様から、使用済みタオルを貰うチャンスかしらっ!!
これはもう、行くしかないっ!!
愛しの鴇様の机は窓側の前から二番目っ!!
近寄り、早速鞄を開ける。教科書に辞書…これでは無さそうね。
なら教室の後ろにあるロッカーはどうかしらっ!?
名前を発見っ!急いでかけよりドアを開ける。あったわっ!!お宝発見よっ!!
体操服っ!タオルっ!替えのシャツまであるじゃないっ!!
まずは匂いよっ!匂いを堪能してっ!

「わー…きもー…。クラスの連中教室から出しといて良かったー」
「こんなド変態。お姫さんの方、向いてなくてほんま良かったわ」
「全くだ。姫にこんな奴見せたら気絶しちまうぜ」

あら?神の御使い様が揃って入口の所に立っているわ。

「っつーか。何時まで俺の服を抱きしめてやがる」

あらーっ!?愛しの鴇様まで登場したわーっ!!
つかつかとその長い足で優雅に近寄り、そして私の腰へ愛の一撃が喰らわされた。
あぁん…幸せっ…。
倒れ込んで床とキスしても私は幸せよーっ!
「…ぐっ。……てめぇの恍惚気な顔を見せられると、俺の中の何かが擦り減っていく」
え?なに?なにが減っていくのっ!?
「言っとくが、お前が俺の弟や妹にした事、忘れた訳じゃねぇから、なっ!」
あら?また目の前に足の裏がっ。
今度こそ、その薫りを確かめねばっ。

―――ゲシッ。

確かめたかったのに、力の限り顔を踏みつけられた私の目の前は、真っ暗になった。
暗闇から解放されるとそこは、エイト学園の校門の外で。
目の前には眼鏡美人。
「二度とくんなや」
ぽいっとバナナが投げられた。あら、優しい。
まぁ、今回はこの位で勘弁しといてあげるわ。
でもまた絶対会いに来るわっ!!
愛しの鴇様っ!!待っててねーっ!!
私は愛の結晶である顔の足跡に手を触れながら、愛しの鴇様がいる校舎を見上げた。
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