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小学生編小話

修学旅行計画:美鈴小学六年の秋

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「はーい。それでは、一緒に行動するグループを決めて下さいね~。六人グループですよ~。いいですね~?」
先生の言葉と同時にガヤガヤと教室内が騒がしくなる。
クラス替えがないこの学校は六年間ずっと同じクラス。だからグループなんてもう決まってるも同然なんだけど…。
「美鈴ちゃんと、優兎くん、恭くんで四人…あと二人、どうしようか?」
華菜ちゃんの言葉に僕と恭平は一緒にうーんと唸りながら美鈴ちゃんを見た。
「で、出来れば、女子が、いいなぁ…とか?」
それはそうだよね。でもクラスの女子…。
僕と恭平が一緒に教室内を見渡すと…。グループはもう出来上がっている。
「無理そうじゃない?」
「だ、だよねー…。先生に四人じゃ駄目か、聞いてみても、いい?」
僕としては全然構わないんだけど…。
恭平の方を見ると、そっちも別に気にした様子はない。
じゃああとは華菜ちゃんだけど…。
「聞くのは構わないけど。ねぇ、美鈴ちゃん?」
「なぁに?華菜ちゃん」
「この学校ってさ?修学旅行の場所を選択出来るでしょ?」
「うん」
そう。華菜ちゃんの言う通り、この学校は修学旅行先を選択出来る。
今年の場所は、『ハワイ』か『松島』の二択。クラスの殆どの生徒はハワイを選択している。貴族派が多いからだと思う。
僕達も一応ハワイの方を選択してはいたんだけど…。
華菜ちゃんの言葉の続きを待つ。
「多分、このクラスで松島を選んでる人はいないと思うの。だからさ、松島を選択したら私達四人で行けるんじゃないかな?」
「そ、それは大丈夫だと思うけど。でもいいの?華菜ちゃんハワイに行けるって喜んでたじゃない」
「それはそうなんだけど…実はね?ハワイを選択すると修学旅行積み立て金とは別途にお金が必要なんだって。…正直家にそんな余裕ない」
「あぁー。そういや、家もそんな事言ってたな。どうにか工面するとか言ってたけど、結構しんどそうだったし」
二人が肩を落とす。僕は思わず美鈴ちゃんを見ると、美鈴ちゃんも僕の方を見ていた。
僕達は何気に裕福な家に生まれてるから、問題はない金額なのだけれど、確かに二人にはきついかもしれない。
だったら…。美鈴ちゃんと頷き合う。
「じゃあ、松島に行こうっ」
美鈴ちゃんが嬉しそうに華菜ちゃんの手を握った。
「恭平もそれなら問題ないだろう?」
「おうっ」
僕が同意を求めると恭平も嬉しそうに頷く。
「じゃあ、早速申請出しに行こうっ」
配られたプリントに四人で名前を記入して、修学旅行先を松島と記入する。
書き終わったそれを僕が代表して、先生へと持って行く。
すると、先生はそのプリントを見て目を丸くした。
「ちょっと、花島くんっ。行き先が松島になってるけどっ」
「はい。僕達は四人で松島を希望します」
にこり。
笑って頷くと先生は頭を抱えた。
「うちのクラスは全員ハワイ行きにすると思ってたのに。…ねぇ、花島くん?せめて、花島くんと白鳥さんはハワイにしない?」
「……先生、それはどう言う意味でしょう?」
隣から凛とした透る声が聞こえ、横を見ると美鈴ちゃんが立っていた。
「どうして私達二人だけでもと仰ったのですか?」
「し、白鳥さん…」
「そうやって教師が率先して貴族派と庶民派を分けてどうするんです?」
美鈴ちゃん、怒ってる…?
「このように修学旅行先を分けるもいかがなものかと思いますが。本来ならば裕福かそうでないかで分けることそのものがおかしい。子供は大人を見て育ちます。このように派閥だの下らない事を誘発、助長させているのは間違いなく貴方がた教師の所為です」
きっぱりと美鈴ちゃんは言い切った。
庶民派の誰もが思っていたであろう事を美鈴ちゃんは代弁してくれた。
でも…美鈴ちゃん。その言い方といい、立ち居振る舞いといい、佳織さんそっくりだよ?
「…白鳥。そこまでにしとけって」
「そうそう。先生だって所詮貴族派に媚を売ってる部類の人間なんだからそんな事言っても無駄だよ」
「……華菜。お前が一番酷い事言ってるぞ…」
うん。僕もそう思う。
どうやら美鈴ちゃんもそう思っていたらしく、華菜ちゃんに向かって苦笑した。
「他の二クラスにも数名でしょうが松島希望者がいると思いますので、私達はそちらと一緒に行動させて貰いますがよろしいですか?」
「い、いいでしょう。それでは花島くん、逢坂くん、白鳥さん、花崎さんは松島行きですね。他に松島に行きたい子はいますか?」
……先生。このタイミングでそれを聞くんですか?
本来ならば貴族派筆頭の美鈴ちゃんが松島に行くって今公言してしまった後にそれを言ったら…。
「白鳥さんと花島くんが松島に行くんですって」
「だったら俺達もそっちに行った方が」
「でも松島なら俺もう何度も行ったんだけど」
「それを言うならハワイだってもう何度も行っただろ」
「けど、白鳥さんと一緒に行動できるチャンスだろ」
「寝起きの姿とかもしかしたら見れるかもだぜ?」
ほら、迷う奴が出て来た。折角四人で楽しい旅行になると思ってたのに。
それにチラホラと聞き捨てならない言葉が耳に届く。
あわよくば美鈴ちゃんとお近づきになろうって?そんなの…許す訳ない。
「先生。僕達と違って皆は松島に行き飽きてると思いますよ。だから、僕達以外はハワイのままで良いと思います」
これ以上余計な茶々入れるな。
言葉の端々に怒りを含んでおく。
「そ、そうねっ。皆もそれでいいかしら?」
僕達以外の生徒がコクコクと必死に頷く。
それにホッと一息つくと、横にいた美鈴ちゃんが目を丸くして僕を見ていた。
え?何か変な事したかな?
素直に首を傾げる。
「優兎くんが怒ってる姿、久しぶりに見たなぁって思って…」
「そう?」
「うん。私が優兎くんが怒ってるのみたの、あの時以来だし…」
あの時って、…あぁ、あいつと対峙した時か…。父親だなんて、血が繋がってるだなんて思いたくもないあいつ。
確かにそうかもしれない。でもどちらかと言えばあの時は怒ってたと言うより、美鈴ちゃんを助けるのに必死だったの方が正しい気もする。
「…ねぇ、優兎くん」
「うん?何?華菜ちゃん」
「…怒り方、美鈴ちゃんのお兄さん達に似てきてない?」
「え…?」
結構予想外の事を言われて僕は驚いたのに、
「あぁー。確かにそうかもー」
「………まぁ、否定は出来ねぇな」
美鈴ちゃんと恭平までそれに同意する。
「でも、似てきて当然かもね。だって『兄弟』だもの」
「美鈴ちゃん……」
兄弟って言ってくれるのは嬉しい。
嬉しいけど、あの兄達に似てきたと言われるのはちょっと複雑だよ?
僕笑顔で人を刺すなんて出来ないよ?
「大丈夫、出来てるよ」
「……華菜ちゃん。人の心を読まないでくれる?」
がっくりと肩を落とすと三人が楽し気に笑う。
全く、人をネタにして笑うんだから…。
「ふふっ。さ、皆で修学旅行の自由行動の予定決めようよっ。楽しみだなぁ、松島っ。『松島や、あぁ松島や、松島や』だっけ?松尾さんが言葉を失う位綺麗な場所なんだよね」
「松尾さん?誰?」
「え?松尾芭蕉」
はしゃぐ美鈴ちゃんと隣で突っ込みをいれる華菜ちゃんが席へ戻るのを僕と恭平は慌てて追いかけた。

授業が終わり、帰宅して、リビングで双子の兄達と美鈴ちゃんでおやつを食べながら今日の出来事を話していると。
「鈴ちゃんが修学旅行っ!?」
「鈴の顔を四日も見る事が出来ないなんて…」
何か別の衝撃を受けていたのは、また別のお話…。
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