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中学生編小話

愛奈とお昼

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今日は美鈴ちゃんと愛奈ちゃんと僕、三人でお昼。
他の三人は、円ちゃんはクラスで何かあるらしい。夢子ちゃんは先生に呼び出しを受け…って言うか多分補習の相談。桃ちゃんは神薙杏子と話があるそうだ。
生徒会室で三人で美鈴ちゃんが作ったお弁当を食べていると。
愛奈ちゃんが何かを取り出して読み始めた。
「何か見ながら食べるのは消化に悪いよ?」
一応突っ込んでみたけれど。
「うっさいよ、従者」
あっさり切り返された。
「でも実際お行儀が悪いよ?って言うか何見てるの?」
美鈴ちゃんに窘められて、愛奈ちゃんは渋々本を閉じてお弁当の横に置いた。
表紙も何もない本。厚さとしては雑誌よりも薄い?
大きさはB5サイズ、かな?
「……………ねぇ、愛奈?何かすっごく嫌な予感がするんだけど、ちょっとそれ見ても良い?」
「うん。いいよ。これはもう読んだから。読み直してただけだし」
許可を得た美鈴ちゃんはその本を恐る恐る手に取って中をパラパラと見て…静かに本を閉じた。
そんな風にされると中に何が書いてあるのか気になって仕方ないんだけど…。
「愛奈。これは一体誰発行?愛奈じゃないよね?だって愛奈の文章ではないもんね?」
「うん。私じゃないよ。これ発行してるのは文芸部」
「文っ!?…はぁ。おかしいとは思ってたんだよね。文芸部ってそこまで予算ないのにいっつも懐潤ってたし。…これの所為か」
うぅ…気になる…。
「ねぇ、美鈴ちゃん。私にも見せてくれない?」
「………優ちゃん。後悔しないならいいけど…」
「そんな後悔するような内容なの…?」
こくりと美鈴ちゃんが頷く。
一瞬どうしようか迷ったけれど。
それでも好奇心が勝ってしまって、それでもいいから見たいと言うと美鈴ちゃんがその本を渡してくれた。
ペラっと表紙を開くと。

『従者×王子 13』

と書いていた。
更に一枚頁を送る。

『「私だって、守りたいのっ!貴女を守りたいのよっ」
「必要ない。分かって。王子…。私は貴女を守るためにここにいるの。この命はその為にあるのよ」
「そんなの嫌よっ!嫌っ!行かないでっ!優兎っ!」』

…………ん?
ど、どう言う事かな?
一旦本を閉じて、目をごしごしと擦ってもう一度表紙をめくる。

『「そんなの嫌よっ!嫌っ!行かないでっ!優兎っ!」
「王子…」
「どうして貴女はそうやって距離をとるのっ?昔みたいに美鈴ちゃんって呼んでよっ!貴女は私の親友で、私の最愛の人、ぅんっ!?」
王子の唇が従者の唇によって塞がれた。好きだとすら言わせて貰えないの?
王子の心は愛しい人からのキスよりも、言葉を受け入れてすら貰えない苦しみで傷つき、その瞳からは涙が零れた…。』

………僕は一体どう言う反応をしたらいいんだろう…?
今考え着く反応は三つ。

1、なんで僕と美鈴ちゃんがこういう本の題材になっているのかと驚くべきだろうか?
2、本の中ですら女っぽく描かれて、僕はそこまで男らしくないって事かと怒るべきだろうか?
3、美鈴ちゃんにキス出来るなんて羨ましくて仕方ないと肩を落とすべきだろうか…?

どれを選ぶべきか…。
正直な本心を言うなら、勿論3だ。
羨ましい…。
美鈴ちゃんとキス…。
ふと美鈴ちゃんの姿を脳内に思い浮かべる。
例えば恋人同士になって…夕日の見える海岸で。
ベンチに隣合って座っていて…。
恥ずかしそうな美鈴ちゃんの肩を抱いて、その髪を撫でていると。
『優兎くん、大好きっ。ねぇ…キス、しよう?』
っておねだりを…。
……うっ…。
か、可愛い…っ。
って、ダメだっ!
ぶんぶんと頭を振って煩悩を振り払う。
「……従者。何想像したの?顔真っ赤なんだけど?」
「?、優ちゃん?ほんとだ。どうしたの?そんな過激なシーンあった?」
過激なシーン?
キスシーンで既に過激な気がするんだけど…。
「ッ!?」
気付けば横に来て一緒に本を覗き込んでいる美鈴ちゃんに驚き、息を飲む。
驚きに手から力が抜けて、数ページ捲られて、

『~~~ッ!?』

その捲られたページを見て僕と美鈴ちゃんは羞恥に息を飲んだ。
そこには美鈴ちゃんと僕がベッドの中で語らっている姿が挿絵であったから。
これは、所謂、そう言う事のあとって事で…。
「うわぁっ!!」
バンッと音が響く程の勢いで本を閉じた。
「ちょっと、従者っ。私の本なんだから乱暴に扱わないでよっ」
「あ、あ、ご、ごめっ…」
「ちょっと優ちゃん、失礼っ」
美鈴ちゃんが僕の手から本を奪い取りパラパラパラと本を流し読みして行く。
「~~~ッ!!愛奈っ!!これ、年齢制限ギリの本じゃないっ!!」
「うん。だから販売になんの問題もないよ?」
「問題しかないわよっ!そ、そもそもっ、な、なんでこんな絵っ!?」
バッと開いて愛奈ちゃんに見せた美鈴ちゃん。
そこには…あ、もう駄目かも…。
美鈴ちゃんの裸の絵が脳内に焼き付いてしまった。
「ど、どうして私の肩にある青痣まで知ってるのっ!?これ私だって昨日発見したばかりなのにっ!?」
「そんなの、決まってるじゃん。昨日王子が大浴場の方を使ったからでしょ?」
え?って事は…あの絵は美鈴ちゃんを忠実に再現してる訳で…。
もう、限界…。
脳内が美鈴ちゃんの裸の絵に支配されて、僕は羞恥やら葛藤やら欲やらで脳内沸騰。
ぷしゅーと湯気が出る音を感じて、体が後方へ倒れて行く。
「ちょ、従者っ!?」
「優ちゃんっ!?」
焦る二人の声は聞こえてはいたものの、僕は素直に訪れる闇に意識をプレゼントした。

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