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アリス、猫の瞳に溺れる2

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「んッ……ふっ……んんッ……」

一人の男の甘い声が、静かな森に響き渡る

もう何度イった事だろう
アリスは猫の視姦を浴びながら、何度も絶頂を繰り返していた

しかしその妖しい視線にさえも、酷く興奮してしまう自分がいる

「スゲー、絶倫じゃん」

「……はっうッ!」

猫がちょんと先っぽに触れただけで、アリスは軽くイってしまい、快感の余韻に浸る

「うわ、手汚れちゃったじゃねーか。はい、綺麗にして」

猫はアリスの口に指を突っ込み、グチグチと掻き乱すが、アリスはそれを嫌がることもなく、自身が出した白濁を綺麗に舐めとった

「……ん……んむ……んぅっ……」


嫌なハズなのに……俺……なんでこんなに感じてんだよ……

口腔内を犯す指に、物欲しそうにしゃぶりつく

そんな淫らな自分の行為に、恍惚と顔を赤らめて、猫の鋭い目付きに釘付けになる


この目が……俺をそうさせているのか……?……

ままならない思考回路でアリスはふと疑問を抱いたが、それ以上の快感の波が押し寄せ、そんなことをいちいち考えるのも、もうどうでもいいくらいになってきていた

欲しい…………俺、コイツのが……

何度も何度も自分の手だけでイかされ続けて、遂にそれだけでは物足りなくなってしまった

お尻の穴がヒクヒクと切なく疼き、目の前の猫を求めてしまう

アリスは目でそう訴えたが、猫はニヤニヤと笑うだけで手を出さない


「…ハァッ…もッ…むり……おねが…い…」


アリスは遂に懇願してしまった

だけど、ニヤけ顔の猫は、知らぬふりして首を傾げる

「ん、何が?」

意地悪く笑う猫は、トントンと先走りの溢れている先端を、焦らすように触る

「……あッ…もっ…分かって、…くせにッ」

ビクビクと、焦れったそうに窄まりをヒクつかせる

「あ?わかんねーよ、ちゃんとハッキリ言ってみ?」

猫はアリスの顔に手を添え、その鋭く光った瞳で見つめる。
その瞬間アリスの心臓がバクバク跳ね上がった

「……ふ…ぁッ……欲しい…お前ッの…」

「“オマエ”じゃなくて、チェシャ猫ね」

「チェシャ猫……お願い……挿れて……きて…」

じわぁと涙ぐみ、チェシャ猫の肩に手を回す


こんな恥ずかしいことを、何で……俺は……

そんなことを思っているアリスの気持ちを汲んでいるのか、チェシャ猫は頭をポンポンと撫でた

「こんなところでするのもアレだし、移動しよっか」

そのままアリスをお姫様抱っこの形で抱え上げ、チェシャ猫は再び軽い足取りで木の上に登り、ピョンピョンと枝から枝へと飛び渡っていった


---


数分の浮遊の後で、チェシャ猫はやっと地に足を着ける

そして小さな小屋の中に、アリスを抱えたまま入って行く

「ここは……」

「俺のヒミツの場所」

狭い小屋の中にはベッドと冷蔵庫、テーブルといった家具しか置かれていなかった

チェシャ猫は壁際に備え付けられていたベッドに、アリスを優しくおろす

「酔わなかった?」

アリスの隣に腰かけ、額にスリスリと顔を擦り付けながら言った。まるで本当の猫のようだ

「……う、うん……大丈、夫……」

何故だか物凄くドキドキしてしまっている自分がいる

なんだよこの気持ち……

どぎまぎしているアリスを他所に、目の前の猫はそうとも知らずに優しく頬にキスをした

「……ッ!!」

かぁぁッと顔が熱くなる
心臓の動悸が止まらない


そうか……今までずっと乱暴に扱われていたから…こんなに優しくされて…俺……

それ以上の言葉が見つからず、いや、認めたくなかった
耳まで真っ赤に染めたアリスは自ら猫の手を引いた

「………は…早く…!」

自分のこの気持ちに気づいてしまう前に、めちゃくちゃにされてしまおうと思った

「そう犬みたいにガッツくなって、俺には俺のペースがあんだから」

そう言ってゆっくりアリスをベッドに横倒すと、優しく口づけた

「!!」


キス……俺……キスされてんの……?

体の中からぶわあと溢れてくる感情に、胸がいっぱいになる

小さな小屋の中に、短いリップ音が何度も響いた

「………も…やめ……」

あまりの気恥ずかしさに、自分の口を隠す

「なに、嫌だった?」


嫌じゃない……けど……こんな……

こんな風に壊れ物を優しく扱うような接し方をされているアリスは、胸のときめきを隠せずにいた

「……優しく……すんな…………」

乱暴にされると、何の感情も湧かない
ただ快楽に溺れるだけで、相手のことなんかどうでもいいのに

目の前の猫は、俺をそう扱わない

まるで愛おしそうに、優しく触れて…………

「俺、手荒くするのとか無理なんだよねー、お前のこと気に入っちゃったし」

チェシャ猫は優しくおでこにキスをする

「顔真っ赤、カワイイ」

心臓がバクバクとテンポを上げていくのを、チェシャ猫に気付かれてしまうのではという不安があるのにも関わらず、大嫌いだったはずの可愛いという言葉に、更に動悸を早まらせてしまう

ニヤニヤと笑う猫の心裏が見えない

「キス、させて?」

猫は口を覆うアリスの手の甲にそっとキスを落とす

心臓が、破裂しそうだった

猫の瞳に、俺の全てを持っていかれた





「んっ……ん……………ふッ………」


どれくらい時間がたっだろう
実際には数分もたっていないが、アリスはこの瞬間が永遠に感じた

舌を絡ませ、深いキスを何度も繰り返した

だけど、キスしかしてこないチェシャ猫にアリスはもどかしさも感じてしまう

「俺のが欲しい?」

ニヤリと猫は不適に笑う

心を読んでいるかのようにチェシャ猫に言われ、
顔を真っ赤に赤らめているアリスは、小さく頷いた

「じゃあ、挿れるよ」

もう既にグショグショに濡れているアリスの窪みに、ゆっくりとチェシャ猫はアリスの一番欲しかったものを与える

「……ぁ……あぁッ……」

ゆっくりと挿入れられたチェシャ猫の熱に、アリスは甘い声を漏らす

「全部入った…動かすよ……」

ゆっくりと深くアリスのイイトコロに何度も当たる。その度に襲いかかる快楽に、アリスは夢中で溺れた

「…あッ……んッ……そこ……」

コツンコツンと最奥に当たる感触が、激しさを増す

「んんッ……あっ…あぁ!……やッ……♡」

「嫌?やめる?」

猫は動かすのをやめる
もう少しの所でイけそうだったアリスは、目を潤わせ猫を物欲しそうに見つめる

「…も……イジワル……すんな……ンッ…」

涙で濡らしたアリスの目元に、猫は優しく口付けをする。

そして頬を伝う涙を舐めとるように舌を這わせ、また深いキスを始めた。そして再び腰を激しく動かし、キモチイイ所に何度も抽送する

アリスは猫の首に手を回し、チェシャ猫を強く抱きしめる

「………んんッ…あッ……あぅッ♡…や…気持ちイイッ♡…も、ダメ…い…イクッ……」

「俺も中に出すよ…受け止めて、アリス」

知らない筈の自分の名を呼ばれ、最後に深く奥を突いた時、アリスは絶頂してしまった


「あぁああッッ!!……なかっ♡…あついぃッ♡♡」

これまでとは比べ物にならない快感が、アリスを満たす

「………ハァ……気持ちよかったね…アリス」

チェシャ猫はアリスの頭を優しく撫でた

「何で……俺の名前……」

「俺は何でも知ってるよ」

ギラギラと金色に光る猫の瞳が、まるでアリスの心を見透かしているようだった




「そんなクサイ台詞がよく言えますね」

ふいに扉の方から声がした
チェシャ猫はニヤリと笑い、扉の方に振り向く

アリスも上半身だけを起こし、そちらを見やる

「なんだウサギ、いつからそこにいたんだ?」

扉に立っていたのは白ウサギだった

「勿論つい今ですよ。シラを切って、私が来るのも分かっていたくせに」

明らかに眉間にシワを寄せ不機嫌にしている白ウサギが続けさまに言う

「勝手に人の家に上がりこんで、人が目を付けた子に手を出すなんて、本当に貴方は悪どいですね」

「悪どい?笑わせるねェ…誘ってきたのはアリスからだぜ?」

猫はアリスの腕を引き、肩を抱き寄せる

アリスは特に嫌がる様子もなく呆然と二人の会話を傍聴していた

「アリス?その子の名前ですか?貴方はその卑怯な目を使って、そんなことまで分かるのですね」

ニヤニヤと笑うチェシャ猫は、その鋭い瞳で白ウサギを睨む

「産まれ持っての才能だ、悪く思うな?」

「貴方のそのニヤけた顔、最高にイライラします。その子から離れて出ていって下さい」

「なにいってんだよ?コイツはもう俺のモンだ」

恍惚と猫の顔に見とれているアリスの顔を見て、白ウサギは更に顔つきを歪める

「アリス、貴方は騙されています。その猫の目を見てはいけません、ソイツの目は厄介な事に人の心を見透かし、魅惑する能力があるんです」

「オイオイ、人聞き悪いなァ、俺からは何も手を出しちゃいねーよ?お前が盛った薬で、アリスは俺に欲情したんだから」


「よく言います。その薬を私に渡したのは貴方でしょう」


………え?

アリスは動揺して猫を見た。チェシャ猫はニヤリとしたままで、ウサギを睨み付けている

「しかも、濃度を五倍にまで高めたものを………ほら、アリス、しっかりして下さい」

白ウサギは俺の元へ寄ってきて、パチンと指を鳴らした

途端に、猫に対しての恋慕の感情が、一気に冷めていく

「あーぁ、せっかくラブラブだったのに、ざんねん……でもアリス、俺とのセックスは気持ちよかったでしょ?」

チェシャ猫が再び俺の顔を覗き込もうとした瞬間


「………う…うるせぇぇぇぇ!!!元はと言えば全部オマエのせいなんじゃねぇか!!!死ね!!」

猫の瞳をかわし、ゴンと顎に頭をぶつけ、猫の手から離れる

「………いてェ……この…石頭……」

「死ね!クソったれ!!俺のトキメキを返せばかぁ!!!」

「あ、アリスっ!どこへ行くのです!?」

うわぁぁあああと叫びながら白ウサギをも突き飛ばし、アリスは小屋から飛びだしていってしまった
 

なんのあてもなく、深い森をただひたすら走り続けた
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