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第三章 水の都の双子姉妹

21話 レジーナ奪還作戦

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 エリンとリザにはアトランティカに残ってもらい、俺はクロナとの二人でデートと洒落込む。
 実際はデートなんて色気もクソもヘッタクレもないんだが。

 クロナの案内で、アトランティカから二時間ほど歩いた距離にある岸辺に、やけに物々しい建造物が見えた。
 櫓が立っている辺り見張りの目もあるようだが、俺とクロナは高台の崖の森林に身を潜めており、ちょうどこの位置は見張りからは死角になっている。

 地形を活かした正面門は外敵の侵入を拒み、なおかつあちらから一方的に攻撃を仕掛けられるのだろう。
 その正面門の反対側は海になっており、船はあそこから出入りするらしく、何隻かの小舟が巡回している。
 一朝一夕で出来る砦ではないな、かつてはどこかの国の砦だったんだろうか。

 砦に翻る旗には、髑髏に二本の剣を突き刺して交差させたような意匠。このデザインを考えた奴はよほど趣味が悪いと見える。

 破落戸の寄せ集めみたいな烏合の衆の割には、意外と組織やってるな。

 いいねいいね、潰 し 甲 斐 が あ る よ 。

 おっと、目的は奴らの殲滅じゃないぞ。

 メインターゲットはレジーナさんの救出。

 サブターゲットは……まぁ、いいか。

「アヤト様。気付かれずに中へ潜入するには、ここからしか道はありません。私はここでお待ちしております。……どうか、妹をお助けください」

「分かった、必ず助けてみせよう。……だが、これは少しばかり骨が折れそうだな。報酬は少し弾ませてもらうとしよう」 

 こちとら頼まれてやってる身だからな、さすがに無償とはいかんよ。
 それを聞いてか、クロナは何かを覚悟したかのように唇を噛みしめた。

「契約金として払えるものはありませんが……その、私の"身体"でよければ、手付けとして好きにしていただければ……」

 おいおいちょっと待ちなさい、そんなこと言うんじゃありません。
 よほど恥ずかしいのか、視線を逸らして頬を赤らめながらとか俺としては超萌えるし、しかもほのかにエロス漂わせて極めつけはそんな格好とかどう考えても誘ってんだろ分かってるなこんちくしょう。
 全く、こんなの普通の童貞なら一発で陥落だろうが。
 ……じゃなくてだな。

「なんかそれ受ける方向だと、俺とんでもない淫獣じゃね?いや、クロナに魅力が無いわけじゃ無くて、"そういうの"は報酬じゃなくて、お互い好き合う仲でこそだと思うわけで」

 確かにここは人気も無いから、今ここでクロナと"コト"を致しても他の目も無いだろうけど、屋外プレイはちょっとな。

「え……あ、あら、失礼致しました。私ったら何を……」

「まぁ……か。じゃ、行ってくる」

「ア、アヤト様?それは一体……」

 クロナがなんか言いかけたけどもう遅い、崖からぴょーーーーーん。



 音を立てずにネコのように着地。竜の巣から卵をいただく時は、このスキルが役に立つんだよ。

 さて、囚われのお姫様はどこにいるのやら。
 察知の範囲を広げて、魔力の固有周波を探る。
 クロナの妹さんなら、ごく近い波長をしているはずだ。
 有象無象のモブキャラな魔力周波を掻き分けて……

 ……一つだけ強い周波を確認、恐らくこれだ、かなり奥の方だな。

 気配遮断の魔法を上掛けし、足音を立てずに、息を殺して、通路を進む。

 少し進むと、曲がり角の向こうから足音が近付いて来た。
 そこで一度止まり、相手の姿を0.2秒で視認――あ、ただのモブキャラですね、用はありません。

「なっ、誰だ、ぉっ……」

 出会い頭に鳩尾に拳を打ち込んで気絶させる。

 最短距離を進みたいが気配が複数混在しているな、少し面倒だが遠回りしよう。

 最小最低限の動作でモブキャラどもをバッタバッタと気絶させ、いよいよクロナの妹さん(だろう)の気配が近くなってきたが、その彼女がいるらしき部屋には見張りがいる。

 だが関係無い、縮地で接近し、見張りの鼻っ面にハイキック。あ、鼻骨陥没しちゃったかも、ごめんね。
 鼻血ブーしながら気絶した見張りをその辺に放っておき、扉を開けようとする。
 が、扉には鍵が掛かっている。
 無理に開けてもいいが、大きな音を立てると気付かれるかもしれない、鍵を探さなくては。

 一旦その場を離れて、通気路の中へ潜り込む。

 ハリウッド映画のアクションスターばりに通気路の中をほふく前進しつつ、鍵のありそうな部屋を探す。

 ……さすがに食糧庫には無いか。酒庫の酒タルの中にも無さそうだし、薪の備蓄庫だと間違って燃やしかねないからこれも選択肢から除外。

 えっちらおっちら通気路を行ったり来たりしていると。

「――バカ野郎!」

「ひっ、ひぃっ!?」

 ふと、ドスの効いた野太い怒鳴り声と悲鳴のような声が聴こえた。
 通気口のフィルターに近付き、向こうからは見えないように覗き込む。

 ここだけやけに豪華な部屋だな、部屋中を金品や調度品で飾りまくっている。

「てめぇらが連れてきたのは妹の方じゃねぇか!水の精霊と話が出来るのは姉の方だって言っただろうが!」

「で、ですけどお頭、あの双子ほんとにそっくりなんですよ、まさかこっちが妹の方だとは思わなくて……」

 さっきから怒鳴り散らしているのは、ビール腹のおっさん海賊。バーロックスという組織からして、あいつが首領の『バーロック』か。
 同じ海賊でもガルチラとは大違いだな、長があれでは組織の程度などたかが知れる。
 しかしクロナとレジーナさんは双子姉妹で、その上見分けがつかないほどそっくりなのか。
 それに、水の精霊――ウィンディーネ様とお話が出来るのはクロナだけ、とな。

「まぁいい、妹の方を人質にして姉と交換すりゃいいだろう。あの変なウサ耳をつけたヤツの言うことが本当なら、水の霊殿に眠っているお宝を手に入れれば、俺たちは一生遊んで暮らせるんだ!だから万が一にも妹を逃すんじゃねぇぞ!」

「イエッサー!」

 変なウサ耳をつけたヤツ?
 アリスちゃんのことか?
 彼女がバーロックスを唆して、クロナの拉致を企てたのか。失敗してレジーナさんの方を拉致ったようだが。

 でも今の水の霊殿は危険地帯らしいよ?君らがそんなとこ入ったら一人残らず魔物のエサにされるんじゃね?

 いや……あるいは、それが狙いか?

 水の霊殿に巣食う魔物の力を強めるために、人間を向かわせてエサにしてやると。
 お宝の存在は嘘っぱちとして、やはりヨルムガンド湿地帯の神殿と同じで、アリスちゃんとマオークの目的はウィンディーネ様の力を弱らせることか。
 ……次に会ったら、アリスちゃんに直接問い質してみるのもアリだな。
 
 下っ端が退室し、一人になったところでバーロックはどふんと無駄に高級なソファーに肥満体を埋める。

 通気口のフィルターを開けて、そろりと着地。
 背後に回り込んで、

「ハロー、ご機嫌いかが?」

「へ?」

 間抜け面が振り向いたところで、喰らえ必殺、アヤトパーンチ!

「ブビッ」

 首を締められた豚のような生声を上げて、バーロックは白目を向いて気絶し、赤く濡れた歯がボロボロと口から溢れる。脆いなぁ、ちゃんと顎を使った食事をしてるのか?

 先に部屋の鍵を内側から閉じておく。

 バーロックをボディチェックして、鍵を持っていないことを確かめたら、金庫を力尽くで開け放つ。

 宝石とか金塊は要らないので、鍵を探して……と、これかな?

 他にも棚とか色々探ってみて、鍵らしい鍵を全部かき集める。これだけ集めりゃ十分だろうよ。

 ドアの隙間から周囲に誰もいないことを確認してから、そっと部屋を出て、さっきの部屋へ急ぐ。

 カチャカチャと鍵を試していると、声が聞こえてくる。

「お、おい、なんかあちこちで倒れてる奴がいるんだけど……」

「はぁ?なんだそりゃ、居眠りでもしてんじゃねぇか?」

「いや、そんな感じでも無くて……」

 む、少し時間を掛けすぎたか、気絶している人に気付き始めている。
 あ、開いた。
 すぐにドアを開けて入り、閉じる。

 木箱が積まれているところ、ここは倉庫だろうか。
 その倉庫の柱に、クロナにそっくりな黒髪ロングの美少女が縛られている。



 彼女がレジーナさんだな。

「!」

 俺の姿を認め、キッと眼力を強めて睨んでくる。
 こうしてみると、本当にそっくりだな。雰囲気とか眦の形が少し違う以外、まるで生き写しのようだ。
 ちょっと演技臭く、騎士のように畏まりつつ。

「麗しの姫君よ。俺はアヤト。あなたをお救いに参りました」

「……?」

 ちょっと胡散臭過ぎたかな、一瞬困惑したとはいえ、次の瞬間には視線で射殺せんくらいの勢いで睨み直してくる。

「実は、あなたの姉君から頼まれてのことなのです。あの海賊……バーロックスから妹を取り戻してほしいと、この砦の抜け道まで教えていただいて」

「姉上が……?」

「姉君は既に所定の位置で待ってくれています。俺があなたを救い出すまでは動くつもりはないと」

 そこまでは言ってなかったけど、「お姉さんからの頼み」というのをさり気なく強調しておく。

「失礼」

 レジーナさんに近付くと彼女は警戒を強めるが、構わずに懐からナイフを抜き、彼女を縛る縄を切る。

「立てますか?」

「……大丈夫です」

 よし、立って歩けるなら十分だ。
 あとはさっさとトンズラするだけ……

「おい、そこのお前!何してやがる!」

 ガチャリとドアが開けられれば、さっき俺が殴り倒した見張りの海賊が。やっぱり鼻が潰れてる。

「ありゃ、見つかったか」

 と言いつつも縮地。

「侵入者だ!侵にゅ、こっ……」

 遠心力を効かせた右のロシアンフックでこめかみに一撃。
 大丈夫、ちょっと意識が麻痺するだけだよ。

 レジーナさんの手を引いて、部屋から飛び出す。

「あ……」

「さぁ、急ぎましょう。これ以上騒ぎにされては脱出出来なくなる」

 脱出出来なくなったら力尽くで押し通るまでだけど。



「いたぞ!逃がすな!」

 正面から現れた奴は風の魔法を流用した空気砲で「バン!」と吹き飛ばして気絶させて、

「こっちだ!追い詰めろ!」

 背後から追ってくる奴は土の魔法で床をめくりあげて岩の障壁で足止めさせて、

「女の方は射つな!男を狙え!」

 弓矢を射ってくる奴は、矢を指で挟み止めて、逆に投げナイフのように投げ返して足を負傷させる。

 あ、これ全部片手でやってます。もう片方の手はレジーナさんの手を引いているので。

 さて、騒ぎも沈静化してきたし、追手は大体撒けたかな?

「……確か、バーロックスには強い傭兵がいるはずです」

 走りながら、レジーナさんが耳寄り情報を教えてくれる。

「ほぅ、強い傭兵とな?」

「はい、他の海賊と比べても一回り体躯の大きい……っ!?」

 そこでレジーナさんの声が止まる。
 前に向き直ると、もうすぐ正面門ってところで、やたらとデカくてゴツい奴が、閉じられた門の前に立ち塞がっている。
 ちょっと強そうだな。

「小僧、よくも好き勝手やってくれたな。だが、ここまでだ!」

 手にしたバスターソードをぶん回して、襲い掛かって来る。
 うむ、こいつは逃げ切れないな、排除するしか無い。

「少しお待ちを」

 レジーナさんから手を離し、ロングソードを抜いてバスターソードを受け止めると、ガギャィンッ!!と甲高い音が響く。

 ほーん、力だけはいっちょ前だな、ちょっと手が痺れたよ。 
 ギチギチギチギチと剣刃同士が擦れ合う。

「こいつっ……この俺様の一撃を!?」

「大したことないな。その辺のオークの方がまだ強い」

 興味なさげに煽ってやると、

「貴様ァ!」

 すぐに眉間に青筋立てて怒り、力任せに押し切ろうとしてくる。

「ぐぬぬぬっ、ぬうぅぅぅぅぅんっ……!」

 歯軋りと唸り声を上げる姿はなかなか迫力はあるが、オツムの方はちょっと残念なようだ。 

 ので、半歩ズラして受け流してやれば、バスターソードを空振りして重心を持っていかれていく。

「のぉっ!?」

 ロングソードを手放して奴の正面に軸足を踏み込み、

「ふっ!」

 必殺、タイガーシューーーーート!!

 それなりに力を入れて腹に打ち込んだシュートに、傭兵の巨体がまさにサッカーボールのようにぶっ飛び、閉じられた門をぶち抜く。
 うむ、フェンスにぶつかればサッカーボールが破裂するほどの破壊力を持ったシュートだからな。
 過去の異世界転生でサッカーマンガの世界に転生した時も、これで相手チームのゴールキーパーの選手を全員負傷させて勝ったことが何度もある。どこぞの青岩や青足の世界で付けられた渾名はGKKゴールキーパーキラーだ。

「な、なん、て、やつ、だ……ガハッ」

 鉄格子ぶち抜くくらいの勢いで激突したのに、よく生きてたな?今ので息の根止まったかもしれんけど。
 出来れば死ぬなよ、

「姉君はあの高台の森にいます、急ぎましょう」

 ロングソードを拾って鞘に納め、すぐにまたレジーナさんの手を引いて走る。

「逃がすな、射て射てぇ!」

 残り僅かの追手が、弓矢を構えながら追ってくる。しつっこいなー。
 ぱひゅんぱひゅんと、数撃ちゃ当たるの要領で矢が飛んでくる。
 あっぶねーな、レジーナさんが怪我したらどうすんだ。治療費と慰謝料と手数料を一括払いで毟り取ってやろうか。
 しかしこのままではまずい、気まぐれのような流れ矢でも、俺はともかく、レジーナさんを怪我させてはクロナに申し訳ない。

 しゃーない、ビンタ一発くらいはいただくとしようか。

「失礼」

 引いていたレジーナさんの手を強引に引き寄せて、そのままひょいっとお姫様抱っこに抱き上げる。

「きゃっ!?」

「口を閉じてください、舌を噛みますよ」

 レジーナさんを抱えながら、最初にネコ着地したところまで駆け抜けて、長距離ジャンプぴょーーーーーん。

「ッーーーーー!?」

 地面から高台までの高さはざっと50mほどだが、問題ない。

 俺、着地。
 そのままクロナが待っている地点まで急ぐ。



 崖の下からは見えにくい位置に、クロナは待ってくれていた。

「レジーナ!」

 俺にお姫様抱っこにされているレジーナの姿を見て、クロナはすぐに駆け寄ってくる。

「良かった……怪我はない?」

「わ、私は大丈夫です、姉上……」

 姉妹の感動の再会だと言うのに、レジーナさんは反応が薄い……というか、なんか恥ずかしがってる?

「アヤト様、レジーナが恥ずかしがっているので、そろそろ降ろしてあげてくださいな?」

「あぁ、そう言えばそうか」

 レジーナさんをお姫様抱っこしたままだったな。素知らぬ男に抱き上げられながら姉の元へ馳せ参じるのだから、恥ずかしいだろう。
 そっとレジーナさんを降ろしてやり、片膝を着いて跪く。

「致し方無かったとは言え、断りもなく抱き上げるような真似をしてしまったこと、お許しください」

「い、いえ、あの……ありがとうございました」

 レジーナさんもペコペコと頭を下げてくださる。
 
「それより、左足のお怪我の手当てをしなければ」

「左足?」

 彼女にそう言われて左足を見てみると、脹脛に矢が刺さって血が流れていた。

「あぁ、最後の追撃の時に一矢報いられていたのか」

 気付かなかったな、と矢を引き抜く。イテテ、こりゃエリンとリザを心配させてしまうな。

「アヤト様、私にお任せくださいませ」

 クロナが俺の左足にしゃがみ込み、そっと御手を添えると、淡い緑色のルーンが顕現される。

「――『キュア』」

 回復魔法のようだが、エリンの唱えるヒーリングよりも強力なものらしい、瞬く間に傷口が塞がり、瘡蓋も固められる。
 痛みらしい痛みも感じられない、なんなら少しくらい動かしても問題ないくらいだ。

「ありがとう、クロナ」

「どういたしまして。これでも法術は得意なもので」

 ほほぅ、クロナは法術士なのか。(バーロックが言うには)精霊と交信出来るくらいだし、海巫女の聖なる力とかがあるのだろう。

「レジーナも、怪我は大丈夫なのね?」

「はい、私は問題ありません」

 こくりと頷いて応えるレジーナ。
 うんうん、バーロックスにアンなことやコンなことをサれたわけではないようで何よりだ。

「なら、早いところアトランティカに戻ろうか。……あ、その前に」

 アトランティカに戻る前に、ひとつやることを思いついたので、崖の縁まで移動する。

「アヤト様?どうなされたのですか?」

「ちょっとだけ待っていてくれ」

 目下に広がるバーロックスの砦。
 えーっと……確か、あの辺りだったかな。

 火属性のルーンを顕現させてーの、

「――フレイムランス」

 それなりに出力を高めたフレイムランスを放つ。
 屋上を突き破って内部へ着弾、炸裂――炎上。

「これでよし、と」

 あの辺りにあるのは、確か食糧庫と、併設された酒庫、それと薪の備蓄庫だったはずだ。そこへフレイムランスを撃ち込めば、あっという間に燃え広がる。
 そして、奴らバーロックスは大規模な集団。
 組織の規模が大きければ大きいほど、より多くの食糧を抱えなくてはならない。人員を食べさせなくちゃならないからな。

 戦国時代で言うところの、『兵糧攻め』だ。
 どれだけの大軍を擁していようとも、兵糧が無くなったら負けは決まったも同然だ。

 もしあの食糧庫に飲食物が集中していたなら、バーロックスはこれだけで組織が保てなくなる。
 食糧庫が複数あるかどうかまでは確かめていなかったが、それでも台所へのダメージは避けられまい。
 そうなってしまえば、組織の運営を立て直そうと、頭が冷静でも手足は止まるまい、食糧難に焦って末端が好き勝手に動き始めるだろうからな。
 
 最悪、内ゲバを起こして勝手に自滅するだろう、俺が(極力)死人を出さずに事を終わらせようとしたのはこの狙いもある。

 あとは頃合いを見てギルドが討伐隊を差し向ければ、痩せ細ったバーロックスは大した抵抗も出来ずに壊滅だろう。

 食べ物を粗末にするということに多少の良心の呵責はある (なおその二次被害による餓死者数については度外視)が、しょせん反社会集団の手に落ちた食べ物だ、いっそ焼き払ってしまった方が食料生産者の方々のためになる。
 そんな風に自分に言い訳しつつ、クロナとレジーナが待ってくれているので、さっさと踵を返す。

 さて、帰るとしようか。
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