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チャラ騎士?の登場

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この逃亡生活で初めてゆっくりと町を散策して楽しむ事が出来た私達はテンションが上がって記念に2人でお揃いのブレスレットまで買っていた。

あれはワインの店で買い物をした後、近くの店を散策していた時、雰囲気の良い雑貨屋さんを見つけて店に入った時だった。

そこはワイン染めで作った材料で小物を作って販売している店だった。ワイン染めをしている為か、店内はほのかに葡萄の匂いが漂っていた。品物は洋服や髪留めやアクセサリーなどが売っていた。雑貨には秀逸な刺繍が施されており、王都での製品と比べても見劣りしない立派な品であった。

そんな中、私達はワインで糸を染めて作ったブレスレットに目をとめた。

黒から紫色にグラデーションになっている綺麗でシックな品。赤から薄ピンクに染まっている可愛らしい品。他にも単色の物だったり、ミサンガみたいに編み込んで作っている品もあった。

だが私は何故だか初めに見た、黒から紫へのグラデーションのブレスレットから目が離せず、無意識に手に取っていた。すると横にいたラルフがギョっとしたように私と商品を見ながら「え・・・それがいいの?」と聞いてきた。

「何だかラルフの色みたいで綺麗ですよね。」

私はそう言いながら柔らかな笑みを浮かべてラルフへと笑いかけた。

「な、な、え、お、俺みたいで綺麗?・・・」

ラルフは顔を真っ赤にしながらブレスレットをまじまじと見つめていた。

「はい。この黒色に紫がかった所なんか、ラルフの瞳色にそっくりだと思います。」

「・・ッ・・・・・・」

かなり恥ずかしい事を言っていたのだが、私はそういった事に無頓着で平然とした態度で「私はこれ買いますね。」と言っていた。

するとラルフも何故だか「お、俺も同じの買う。」と言い出し、気がついたらお揃いのブレスレットを購入していた。

しかも購入時に店員さんから「お客さん珍しいですね。この色を選ぶなんて・・・・」と言われたので、私は「綺麗な色だと思いますよ?発色が良くて何だか夜空のブレスレットみたいに見えます。」と微笑んで伝えた。

「夜空のブレスレット・・・良いですね!その言葉!今度からそれを売り文句にします!」

店員さんはかなり興奮した様子でそう言うと私達を見送って慌てて店の中へと戻って行った。

ラルフはブレスレットを身につけた自分の腕と私の腕を見比べながら「お揃いの物なんて初めてだな・・・。」とニヤニヤと笑っていた。



あ、そういえば私も前世含めて異性とのお揃いの物を持つなんて初めてだ・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして私達はまた乗合馬車に乗って新しい町へとやって来た。この町は町全体が牧場のような所であり、畜産が有名で牛、豚、羊を場所ごとに育てているらしい。

有名製品なのはチーズやベーコン等が評判高いと乗り合い馬車で老夫婦から教わった。

馬車から降りて私達はまた町を散策しようと計画していた。だがその時、目の前からいきなり「あ!みーつけたッ!」と言いながらキラキラと微笑むハニーブラウン色の髪をした男性が近づいてきた。

明らかに私を見ながら近づいてくる見覚えのない男性に緊張感が走った。ラルフが私の顔を見て知ってる人か目線で聞いてくるので、私も小さく首を左右に振り、あんな男は知らないと主張した。

だがそんな私達の態度などお構い無しといった感じでズンズンと私の目の前にやって来て、凄い笑顔で「オリヴィアで良いんだっけ?」と聞いてきた。

私はその瞬間ピシリと体が固まったのがわかった。

何でこの人母上が付けてくれた私の名前を知ってるの?・・・それに今の私は茶髪の地味な男なのに何で?

私の中でいろんな考えが飛び交っていたが、男性はかなりマイペースなのか、いきなり私のほっぺに触れてきて「おお!流石若いよね!肌モチモチィ~」と言いながらヘラヘラと笑っていた。何が何だかわからず身動きが取れずにいると・・・ラルフが横から凄まじい殺気を飛ばしながら私をさわっていた男性の腕をひねり上げて地面へと叩きつけた。

「誰だ。お前・・・薄汚い手でリヴィに触りやがって・・・」

「・・・グハッ・・・い、痛ってぇぇぇッ!!」

男性は叩きつけられた身体が痛むのか、転げ回るようにして身体を擦っていた。その間に逃げた方がいいのかと考えたがだが名前を知られていた事が気になった。

しばらくして男性は身体を押さえながらゆっくりとこちらを見て私に話しかけてきた。

「痛たたたッ・・・全く~。緊張を解そうとふざけた俺が悪かったけどちょっと乱暴過ぎない?
えっとオリヴィアちゃんは怪我してない?その人は一体誰かな?」

ふざけた態度の中にこちらを伺うような見透かそうとするような視線を感じた。

「ちゃんは止めて下さい。私は男です。貴方こそいきなり何ですか。」

強い視線で私は男性を睨みつけ毅然とした態度をとった。するとそんな私に向かって・・・
「ふーん。男ね・・・まあ、逃亡中の身なら男の方が逃げやすいよね。オ・リ・ヴ・ィ・ア・ちゃんッ!」と馬鹿にした態度を取りながらまた何故か私の情報が知られていた。

明らかに私が逃亡中の第1王子オーウェンだという事がバレている。だがオリヴィアの名前を知っているという事は味方なのかも?いや、それで判断するのは危険すぎる。ここで母上や叔父上達の名前を出して関係性がバレたら皆が王都でしている計画が台無しになってしまう。

そう判断した私はここはこの男が味方であったとしても名を明かさない事を選んだ。

「貴方が一体何の話をされているのかわかりませんが、私はリヴィ。只の旅行者です。誰かと勘違いされているようですね・・・」

そしてこの場をさっさと離れようと私は動き出した。隣でずっと暴れようとしていたラルフを引き連れて・・・

だが私達が男性に背を向けた瞬間何かが飛んで来たのがわかった。ラルフが何かしようとしたのを感じたので動くのを止めてもらおうと腕に力を込めて動きを制した。そして私は光魔法で防壁を築き男性からの攻撃を交わした。

今の甘過ぎる攻撃は何。
それによく考えてみると・・・

オーウェンが変身魔道具を使って姿を変えているのは本当に一部の人間しか知らない。だがこの男性は私の姿を見抜いて尚且つオリヴィアの名前も知っていた。その事からやっぱりこの男性は母上か叔父上が私の様子を知る為に送ってきた者なのではと判断した。

「どなたの命令かはわかりませんが、私はこの者と2人で旅を続けます。決して死にませんので、ご心配なく・・・そうお伝え下さい。」

心配してくれるのは有り難いけどいきなり知らない人が来られても不安になるから!

今度こそ私達はこの場を去ろうとすると・・・

「ははははははッ・・・
守られてるだけのボンボンかと思ったら結構考えて動いてるんだね。ま、生まれてからずっと死に物狂いで男を演じてきたんだもんね。そりゃ只の甘ちゃんな訳ないかぁ・・・クククッ」

男性は一人で何かを納得したようにブツブツと呟いていた。そしてさっきとは表情を一変させて真剣な態度で「じゃあ、そいつが誰なのかだけ確認したら引き下がるよ。」と言ってきた。

うっ・・・それは困るッ。
だってラルフは私を殺す任務を請け負っていた国王からの追っ手だもの・・・

表情には焦りを出さないように必死で取り繕ったが何と説明すれば今の状況に納得してもらえるか考えあぐねていると、男性が若干イラッとするしたり顔で噂を一つ教えてくれた。

「これは俺の主の近辺だけ出回ってる噂なんだけどね。何か逃げた王子を追ってた奴が手紙一つで任務放棄したんだってさ・・・。今そのせいで城の中で働いてる裏の連中は休む暇もなく、王子とそいつを探し回ってるらしいよ?」

・・ッ・・・まずいな・・・。
この人も私達を簡単には見つけられたんだから追っ手もすぐ来る?

私の中で不安が広がっているとラルフが私の手をギュッと握りしめてきた。

「大丈夫。彼奴等じゃ俺達は見つけられない。こうやって会いに来れる奴を尾行しない限り・・・」

ラルフは私を安心させるように笑いかけた後、男性に向かって鋭い視線を向けた。だがそんな視線など関係ないと言わんばかりに男性はラルフに挑発的な態度を取りまくっていた。

「いやぁー。光栄だな・・・あんたが裏で有名な化け物さんなの?城凄い事になってるらしいよ?裏の仕事で随一だった化け物が任務放棄をした上で暗殺対象者に寝返ったってさ。どうなの?実際は・・・可愛いお姫様にクラっときちゃった?あ、違うか王子様だったか・・。じゃあそっちが趣味だった?・・・今も仲良さげに手を繋いじゃってるもんね。」

かなり腹立たしい男性の態度だったが、ラルフは始終無表情で話を聞いていた。

「言いたい事はそれだけか?・・・俺はリヴィが男でも、女でもどっちでもいい。ただ側にいて守ると決めただけだ。だからリヴィが殺される事は絶対にない。」

「ふーん・・・そうなんだぁ・・・」

2人がそんな会話をしていた時、私はこの男性の身元について考えていた。

多分母上か叔父上の知り合いなんだよね・・・見た目は容姿が整い過ぎてる所から貴族かもしれない。だけど服装や作法が平民そのものだ。考えられるのは貴族が平民の振りをしているか、貴族の落とし子で平民として生きてきたかとかかな・・・。

でも足捌きを見ていると剣を嗜んではいそうだ。後はあの笑い方・・・あれ何処かで見た事ある気がするんだよね・・・

あの人を見透かしながら小馬鹿にした態度。
誰だったかな・・・







あ、・・・思い出した。
昔私が剣術習い始めた時に私を馬鹿にした態度をとっていた騎士に似てるんだ。
確か名前は・・・

「エルバート・グランディール・・・」





                                                                                                                         
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