オッドアイを隠す公爵令息と城に囚われた王女

垣崎 奏

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 シルヴェストルはほぼ毎日、ベッドに寝たままのリーゼロッテに会いに来た。決まって夜の、皆が寝静まったころにひっそりやってくる。魔術師が城に残って起きている日など、リーゼロッテには分かりもしない危険な日は入ってこないが、樹の上にいてくれた。雨や風も、魔術で凌げるらしい。

 そうして顔を合わせていれば、だんだんと態度は砕けてくる。シルヴェストルの言うとおりなら、王家と公爵家で身分も近い。そもそもリーゼロッテはビューロー王家として扱われたことはなく、値する教育も受けていない。コンスリー公爵令息として暮らしていたシルヴェストルのほうが何もかも詳しく、リーゼロッテが尊敬するべきだ。

「シルヴィ」
「どうかした? お姫様」
「私に、愛称をつけて。貴方に呼ばれたい」
「『お姫様』は嫌?」
「『シルヴィ』に似たのがいい」
「……じゃあ、ロッティにしよう」
「ええ、お願いね」

 シルヴェストルは、リーゼロッテの質問にいつでも応えてくれた。ベッドのそばで膝をついて、嫌がることも怖がることもなく、リーゼロッテの姿勢に付き合ってくれた。

 魔力の釣り合いが取れるから、シルヴェストルはリーゼロッテと結婚しようとしている。彼がいなければ、リーゼロッテは一生このままだ。きっといい人なのだとも思う。そうでなければ、暑い日も寒い日も、樹の上からわざわざリーゼロッテに話しかけてくることはなかっただろう。

 リーゼロッテは、身体も細いままだ。侍女たちと比べても、リーゼロッテにはまったく膨らみがない。シルヴェストルはいわゆる男性らしく、ただ貴族というよりは騎士に近かった。他の男性を知る機会はなかったものの、シルヴェストルが記録魔術で家族や屋敷の護衛たちを見せてくれた。

「ロッティは王家、僕は公爵家出身で、蔑ろにするわけにもいかないだろうから、顔合わせくらいはさせてくれると思ってる。脅したっていいしね」
「おどっ……」

 リーゼロッテが戸惑って慌てると、シルヴェストルは柔らかく笑った。何かを企むような微笑みではなく、本当に楽しそうに破顔する。

「さすがに冗談だよ。それまで何度か来るから、ドレスと屋敷の好みを教えてくれると助かる。サイズも魔術で測れるから」
「ええ、特に思いつくものもないけれど……」
「しまった、女性物のカタログは見たことがない。今度持ってくるか、記録してくるよ」
「ありがとう。準備を任せてしまっても?」
「気にしないで。きっとどんな婚姻でも男側の役目だよ」

 手の甲にひとつキスを落として、シルヴェストルは姿を消した。


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