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暴君と傍観者
8P
高遠の方が不利なはずなのに、彼はまだまだ強くなっている。斎藤の動きの先を読み、攻撃をかわして反撃に出る。
前に、前に。目もまともに見えずボロボロなのに、恐怖なんて彼からは感じない。
高遠は、自分には倒せないと周りから言われ自分でもそう思っていた斎藤を倒し、早くもっと強い土方に挑みたい。その思いが5割。
あとの5割は、ある人達への約束のため。
「俺様はぁ!この戦いに勝って生き残ったら、ちゃんと実家に帰る……くっ……帰って、あいつらを目一杯抱きしめてやるって約束してんだよぉッ!!」
それは、決別してしまった姉と妹達への約束。
望みが薄いのは最初からわかっている。だからこそ、守ると決めた約束のためにあがく。ここで死ぬわけにはいかない、死にたくない。
今までは尊敬する、し過ぎている夜鷹や黒鷹のためだった。だがあの時、屋敷の牢に姉と妹が来た時から高遠の考えは変わった。
組織として、長を尊敬し守るのは当たり前のことだろう。けれど組織の長よりも、もっと大切に思い命がけで守りたいもがあることに気が付いた。
何よりも愛する、守りたいもののために戦う。それが今の高遠の意地。
「はぁぁあぁぁ……今さらなんだよ、何もかも。今さらどんなにあがいたって、俺があんたを殺すことは変わらない。面倒だから、はぁ、早く死んで」
「俺様がてめぇを殺すか、てめぇが俺様に殺されるか、2つに1つだ!終わらせるぜぇッ!!」
「どっちも同じ意味だよッ!あーもう、やっぱりあんたは馬鹿だなッ!面倒くさいッ!!」
高遠も斎藤も、どんどん攻撃が激しくなってきている。もう避けることはしない。どちらも攻撃のみで、斎藤が刀を振るうたびに高遠の体から血しぶきが噴き出る。
高遠の刀も確実に斎藤を斬りつけてはいるが、意識がもうろうとしている高遠よりも斎藤の方が速いのだ。
そりゃあもうダントツで。だって斎藤一は新選組の三番隊の隊長で、剣の腕は一位二位を争うほどの剣豪だものな。
イライラが頂点に達し完全に本気になった斎藤は、けれど冷静で。その身に受ける攻撃は最小限にとどめ、かつ自ら繰り出す斬撃は的確。
高遠が突き出した刀を受け止めると滑らせるように払い、大きく1歩踏み出して首を、左目を狙う。
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