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6.元聖女は魔法都市でエルフに会いました。
144.(ステファン視点)
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「――王都の冒険者ギルドの所長? アタシが?」
「そうそう。グレンダさんがレイヴィスと繋がっていたのがわかって、国王から魔術師ギルドがお叱り受けちゃってね。調べてみたら、彼女は多額の金をもらう見返りに魔物の養殖の手助けをしたり、ベルリクとか――レイヴィスの関係者が王都領内で人さらいだの、恐喝だの国の違法行為やるのを見逃してたって話がザクザク出て来ちったわけだ。魔術師ギルド関係者じゃない人外から連れてきて王都冒険者ギルドの所長にしろって話でさ。――それで君の評判が良いから、推薦したいんだけど」
ナターシャさんは驚いたように瞳を大きくした。
マルコフ王国国内には、全部で4つ冒険者ギルドがある。
――その中でも、王都冒険者ギルドは、国王や貴族から直接依頼を受けることもあり、他のギルドの上位組織として位置づけられている。給料も当然上がるし、出世だ。
「――アタシを推薦してくれるっていうのは、有難い話だけど……、家族もいるしね――今度新しく二人加わったし……この街での暮らしは落ち着いてるから――」
「テオドールのことなら、王都の教会に口を利くよ。広い家も用意する」
「いったん――家族に相談させて」
「当分竜の世話でこの街にいるから、返事はいつでも。良い返事を期待してるよ」
サミュエルさんは「じゃあ餌をやらないと」と、僕らのところから去って行った。
「ナターシャさん! すごいですね! あの大きいギルドの所長さんになるんですか?」
「出世じゃねぇか!」
「そう、そうなんだけどね」
レイラとライガがわいわいナターシャさんを取り囲むと、少し考え込むように、彼女は呟いた。
「――ノアのことですか?」
「そう。ほら、あの子親方んとこに奉公させてるだろ、だからさ、王都に行くなら連れてくわけに行かないし――またね、目の届かないところで何かあったらって思うとね。――心配し過ぎだと思う?」
僕は「いえ」と呟くと、レイラを見た。
キアーラの大神殿に到着した時、大司教に襟首を掴まれるこの子を見て、心臓が締めつけられて止まるような気がした。
――いや、別に僕はレイラの親じゃないけど。
自分が守りたいと思っている存在が、自分の知らないところで、もし嫌な目にあったらどうしようと思う意味では、たぶん一緒だと思う。
「いえ、心配ですよね」
「そうなんだよ」
ナターシャさんは大きく息を吐くと、顔を上げた。
「でも、あの子ももう一人前になりかけてるしね。相談してみるよ」
「話を受ける気はあるんですか?」
「――そりゃあね。マナやガイみたいな子たちの様子を知っちゃうとね。ホッブズさんの領地では、もうああいう獣人の孤児は見なくなったけどさ。王都はまだ――まだね」
ホッブズ辺境伯領、この西端の街を含む領地は、獣人にとって住みやすい土地だと思う。
それはナターシャさんたちがここの冒険者ギルドでずっと頑張って来たことにもよるんだろう。
「アンタたち、すぐ行っちゃうの? 発つ前に、教会に寄ってってね。ノアや他の子らも会いたがってるから。レイラ、アンタがくれた服、マナまだ着てないんだよ。アンタ出て行っちゃったのが気になってるみたいで」
「……もちろん行きます!」
「今日の夜でもいいですか?」
僕が聞くと、ナターシャさんは笑った。
「テオドールに伝えとくよ。美味しいもの作っとけって」
「おう。じゃあ、俺、煮込みシチューがいいな」
ライガはすかさず自分の要望を伝えた。
「そうそう。グレンダさんがレイヴィスと繋がっていたのがわかって、国王から魔術師ギルドがお叱り受けちゃってね。調べてみたら、彼女は多額の金をもらう見返りに魔物の養殖の手助けをしたり、ベルリクとか――レイヴィスの関係者が王都領内で人さらいだの、恐喝だの国の違法行為やるのを見逃してたって話がザクザク出て来ちったわけだ。魔術師ギルド関係者じゃない人外から連れてきて王都冒険者ギルドの所長にしろって話でさ。――それで君の評判が良いから、推薦したいんだけど」
ナターシャさんは驚いたように瞳を大きくした。
マルコフ王国国内には、全部で4つ冒険者ギルドがある。
――その中でも、王都冒険者ギルドは、国王や貴族から直接依頼を受けることもあり、他のギルドの上位組織として位置づけられている。給料も当然上がるし、出世だ。
「――アタシを推薦してくれるっていうのは、有難い話だけど……、家族もいるしね――今度新しく二人加わったし……この街での暮らしは落ち着いてるから――」
「テオドールのことなら、王都の教会に口を利くよ。広い家も用意する」
「いったん――家族に相談させて」
「当分竜の世話でこの街にいるから、返事はいつでも。良い返事を期待してるよ」
サミュエルさんは「じゃあ餌をやらないと」と、僕らのところから去って行った。
「ナターシャさん! すごいですね! あの大きいギルドの所長さんになるんですか?」
「出世じゃねぇか!」
「そう、そうなんだけどね」
レイラとライガがわいわいナターシャさんを取り囲むと、少し考え込むように、彼女は呟いた。
「――ノアのことですか?」
「そう。ほら、あの子親方んとこに奉公させてるだろ、だからさ、王都に行くなら連れてくわけに行かないし――またね、目の届かないところで何かあったらって思うとね。――心配し過ぎだと思う?」
僕は「いえ」と呟くと、レイラを見た。
キアーラの大神殿に到着した時、大司教に襟首を掴まれるこの子を見て、心臓が締めつけられて止まるような気がした。
――いや、別に僕はレイラの親じゃないけど。
自分が守りたいと思っている存在が、自分の知らないところで、もし嫌な目にあったらどうしようと思う意味では、たぶん一緒だと思う。
「いえ、心配ですよね」
「そうなんだよ」
ナターシャさんは大きく息を吐くと、顔を上げた。
「でも、あの子ももう一人前になりかけてるしね。相談してみるよ」
「話を受ける気はあるんですか?」
「――そりゃあね。マナやガイみたいな子たちの様子を知っちゃうとね。ホッブズさんの領地では、もうああいう獣人の孤児は見なくなったけどさ。王都はまだ――まだね」
ホッブズ辺境伯領、この西端の街を含む領地は、獣人にとって住みやすい土地だと思う。
それはナターシャさんたちがここの冒険者ギルドでずっと頑張って来たことにもよるんだろう。
「アンタたち、すぐ行っちゃうの? 発つ前に、教会に寄ってってね。ノアや他の子らも会いたがってるから。レイラ、アンタがくれた服、マナまだ着てないんだよ。アンタ出て行っちゃったのが気になってるみたいで」
「……もちろん行きます!」
「今日の夜でもいいですか?」
僕が聞くと、ナターシャさんは笑った。
「テオドールに伝えとくよ。美味しいもの作っとけって」
「おう。じゃあ、俺、煮込みシチューがいいな」
ライガはすかさず自分の要望を伝えた。
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