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6.元聖女は魔法都市でエルフに会いました。
162.
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耳がくっついたところのむずむずした痒みのピークはその日の夜で、ステファンにこまめに回復魔法かけてもらってたら次の日の夜にはだいぶましになって、3日目にはほとんど違和感がなくなってた。
また治療院に行って、糸を抜いてもらう。また薬飲んで、寝てる間に抜いてもらったので全然痛くなかった。起きたら縫い目もなくて、耳はもとからあったみたいに顔の横にくっついていた。
それと同時に、今まで聞こえていなかった音――小さな音もよく聞こえるようになって、精霊の動く音も普通の音とは違う響きではっきり聞こえるようになった。
「これが水の精霊、こっちが風の精霊だ。水の精霊が近づくと火の精霊は逃げていく。風の精霊が近づくと活発になる。わかるか」
それから数日はエドラさんがこんな感じで精霊の動きについて教えてくれた。
前にテオドールさんが生命の精霊に働きかけてたって言っていた言葉の意味がようやくわかった。
耳がくっついてから7日ほどして、私の体調が落ち着いたので、私たちは荷物をまとめてステファンの実家に向かって出発することになった。
「オリヴァーさん、本当にお世話になりました!」
頭を下げると、おじいちゃんは白い髭を揺らして笑った。
「いやいや、賑やかで楽しかったぞ。エドラヒル、あまり迷惑をかけんようにの」
エドラさんは白銀の長い髪を掻いて、眉間に皺を寄せた。
「迷惑などかけん」
オリヴァーさんはまた笑って、私たちに呼びかけた。
「では、また帰りにでも寄ってくれ」
「ありがとうございます!」
私たちは一斉にお辞儀をしてオリヴァーさんのお屋敷を出発した。
***
「これから、どうやってステファンのお家に行くんですか?」
街のレストランでご飯を食べながら相談する。
ステファンは大きな地図を机の上に広げた。
「街を出たら街道をずっと進んで、まずアスガルドに入国するよ。そこからさらに北にずーっと行くんだ」
「結構遠いよなぁ。普通に歩きで行くと1月かかるか?」
「歩きはきついな。馬車でも買おうか。お金に余裕あるし」
ステファンの提案に私はふと思い立った。
お金……。そういえば、私の耳の治療費ってエドラさんにお支払いしましたっけ。
エイダン様がたくさんくれた金貨は、まだ私の持ち物の袋にずっしり入ったままだ。
「エドラさん、お金! ……そういえばまだ、お支払いしてなかったですね」
思い出して荷物から袋を取り出すと、エドラさんは顔をしかめた。
「いらん」
「でも……」
「同族のよしみだ。金は何か別のことに使え」
同族……。その言葉に私は胸がいっぱいになった。
「同族……、同族って言ってくれるんですね! ありがとうございます!」
思わず胸の前で手を組んでそう言うと、エドラさんは「礼を言われるようなことではない」と気まずそうに肩をすくめた。
街で馬車を買って、ステファンが走らせてくれて、私とエドラさんが荷台に乗って、私たちは魔法都市ロンバルドを出発した。
また治療院に行って、糸を抜いてもらう。また薬飲んで、寝てる間に抜いてもらったので全然痛くなかった。起きたら縫い目もなくて、耳はもとからあったみたいに顔の横にくっついていた。
それと同時に、今まで聞こえていなかった音――小さな音もよく聞こえるようになって、精霊の動く音も普通の音とは違う響きではっきり聞こえるようになった。
「これが水の精霊、こっちが風の精霊だ。水の精霊が近づくと火の精霊は逃げていく。風の精霊が近づくと活発になる。わかるか」
それから数日はエドラさんがこんな感じで精霊の動きについて教えてくれた。
前にテオドールさんが生命の精霊に働きかけてたって言っていた言葉の意味がようやくわかった。
耳がくっついてから7日ほどして、私の体調が落ち着いたので、私たちは荷物をまとめてステファンの実家に向かって出発することになった。
「オリヴァーさん、本当にお世話になりました!」
頭を下げると、おじいちゃんは白い髭を揺らして笑った。
「いやいや、賑やかで楽しかったぞ。エドラヒル、あまり迷惑をかけんようにの」
エドラさんは白銀の長い髪を掻いて、眉間に皺を寄せた。
「迷惑などかけん」
オリヴァーさんはまた笑って、私たちに呼びかけた。
「では、また帰りにでも寄ってくれ」
「ありがとうございます!」
私たちは一斉にお辞儀をしてオリヴァーさんのお屋敷を出発した。
***
「これから、どうやってステファンのお家に行くんですか?」
街のレストランでご飯を食べながら相談する。
ステファンは大きな地図を机の上に広げた。
「街を出たら街道をずっと進んで、まずアスガルドに入国するよ。そこからさらに北にずーっと行くんだ」
「結構遠いよなぁ。普通に歩きで行くと1月かかるか?」
「歩きはきついな。馬車でも買おうか。お金に余裕あるし」
ステファンの提案に私はふと思い立った。
お金……。そういえば、私の耳の治療費ってエドラさんにお支払いしましたっけ。
エイダン様がたくさんくれた金貨は、まだ私の持ち物の袋にずっしり入ったままだ。
「エドラさん、お金! ……そういえばまだ、お支払いしてなかったですね」
思い出して荷物から袋を取り出すと、エドラさんは顔をしかめた。
「いらん」
「でも……」
「同族のよしみだ。金は何か別のことに使え」
同族……。その言葉に私は胸がいっぱいになった。
「同族……、同族って言ってくれるんですね! ありがとうございます!」
思わず胸の前で手を組んでそう言うと、エドラさんは「礼を言われるようなことではない」と気まずそうに肩をすくめた。
街で馬車を買って、ステファンが走らせてくれて、私とエドラさんが荷台に乗って、私たちは魔法都市ロンバルドを出発した。
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