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1章
27 説明してくれる?
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「二人とも、話し込んでいるところ悪いんだけど……、どっちか説明してくれる?」
相変わらず頬に手をあてて、眉を寄せたゾイが首を傾げて尋ねる。
「あ、あの」
「失礼しました。おじさんとは違法奴隷商人に連れて行かれる時に会って、そこから一緒に助け出されました。僕はそのあと孤児院に入れられたので、おじさんとはそこで離れ離れになってしまって」
どもる健介の代わりにウンシアがわかりやすく、簡潔にハキハキと答えた。そしてその目はキラキラと健介を見つめている。
あんまりこちらを見つめないでほしい。
この世界の人は元の世界でいうところの彫の深いコーカソイド系の顔だちをしている人が多い。いままでであった人たちは全員が濃い顔立ちをしている。もしかしたら、健介のような顔の凹凸が少ない人は見かけていなかった。もしかしたら、探したらいるのかもしれないが……。
その中でもウンシアを初めとする獣人系の亜人種は顔立ちが整っている人が多いのだ。泥で顔を汚していたガラスのような薄い青の大きな目を持った男の子は、きらきらとした銀白の髪と琥珀色の宝石のような瞳をもつ、とりわけ美しく凛々しい青年へと成長している。
(そういえば、リアンも銀髪だったな……)
ふと、昨日出会ったこれまた顔の良い男のことをふと思い出す。
この世界でもそれほど一般的な髪色ではないのに、立て続けにそんな二人にあった偶然に健介は不思議なものを感じた。
リアンと再び会うことは自分からあの屋敷を訪れ無い限りはあり得ない。もちろん、健介は訪ねていこうなどと思っていないので、もう二度と会わないだろう。お礼を伝えることもできずに帰ってきてしまったことだけが、申し訳なく悔やまれる。
だが、リアンもいなくなった塩顔のモブ社畜おじさんのことをいつまでも気に掛けるとは思えない。
(ありがとう、あなたのおかげで体調はばっちりです)
と、心の中で再度お礼をいって、忘れることにした。
そんなことより、目の前のウンシアだ。
もう二度と会うことはないだろうと思っていた少年は美しい青年の姿になって、再び目の前に現れた。まあ、別に自分に会いに来たとかでは無いと思うが……。
そんなウンシアは、なにやらゾイからいろいろ質問されている。
「探していたんです。もう一度会いたくて」
「あらぁ、そうなの?」
「だから、ここで働かせてもらえませんか?」
何やら変な言葉が聞こえた。
「この人にもう一度会うために、この人を守ってあげるために僕はここにきたんです。どんな仕事でもいいから、ここで雇ってください!」
そう言ってゾイに向かって深く頭を下げる。
「そう……どうしようかしら……」
「お願いします」
ウンシアは切実な声でゾイに懇願した。
「君はダイナミクスあるの?」
シュナの明るい声が突然横から入ってくる。
「シュナ、それは聞いちゃいけないことでしょ?」
「でも、重要なことでしょ? それに、どうせゾイは知ってるくせに」
健介はゾイの言葉でダイナミクスの有無を相手に聞くことは失礼なことだと知った。第二性というくらいなので、聞くことになにか問題があると思っていなかったため、ここで知ることができてよかったと思った。
で、ウンシアはダイナミクスを持っているのか──。持っているなら、Domなのか、Subなのか──。
窺うようにシュナとウンシアを見つめる。
「はい。Domです。ここでプレイヤーとして働くことも下男として、掃除や洗濯などして働くことも、どちらも出来ます!」
(Domかぁー)
そっかそっか、と健介は一人うなずいた。
見た目からしてDomっぽいとは思っていた。正直なところ、DomかSubかは見た目ではわからない。シュナは健介同様に小柄なSubではある。健介の魔力を見てくれたバーニーは身長がおそらく百八十センチほどの大柄な男性だ。だが、むっちりとした筋肉質で、大きな胸筋が特徴のSubだった。
「そうねぇ……でも、プレイヤーはいま足りてるのよ」
「でも、Domのプレイルームはケンに掃除をお願い出来ないよ。この子にお願いしようよ」
「うーん……。宿舎の部屋って空いていたかしら?」
「いいじゃん! ワイラーと一緒で」
酷い。シュナさん。自分ではなく別の人の部屋割りを勝手に、しかも同居で提案してる。
「そういうわけにはいかないのよっ」
自分勝手な言い分をするシュナの頭をゾイが小突く。
「ちぇっ」
シュナはふてくされたように頬を膨らませる。
「じゃあ、Domのプレイルームの掃除とかはどうするの?」
「シュナ、ちょっと待ちなさいな」
そう言って、ゾイは執務机まで歩いていき、引き出しから何か冊子の様なものを取り出す。それをぱらぱらと開いて、唇を人差し指で擦った。
しばらく冊子をページを行きつ戻りつしながら眺めてから、ゾイが口を開く。
「ふむ。わかったわ」
パタンと冊子を閉じて引き出しに再びしまうと、先ほどまでウンシアとともに座っていた応接セットのほうに歩いていって、ローテーブルに置かれた紙を持ち上げる。
「じゃあ、しばらくは見習いってことで、掃除洗濯とプレイヤーとしての準備をしてもらうわ。プレイヤーとして問題なくこなせそうだったら、新人プレイヤーとして雇うってことで……」
「ありがとうございます!」
ゾイが言い切るより前にウンシアが大きな声でお礼を述べた。
相変わらず頬に手をあてて、眉を寄せたゾイが首を傾げて尋ねる。
「あ、あの」
「失礼しました。おじさんとは違法奴隷商人に連れて行かれる時に会って、そこから一緒に助け出されました。僕はそのあと孤児院に入れられたので、おじさんとはそこで離れ離れになってしまって」
どもる健介の代わりにウンシアがわかりやすく、簡潔にハキハキと答えた。そしてその目はキラキラと健介を見つめている。
あんまりこちらを見つめないでほしい。
この世界の人は元の世界でいうところの彫の深いコーカソイド系の顔だちをしている人が多い。いままでであった人たちは全員が濃い顔立ちをしている。もしかしたら、健介のような顔の凹凸が少ない人は見かけていなかった。もしかしたら、探したらいるのかもしれないが……。
その中でもウンシアを初めとする獣人系の亜人種は顔立ちが整っている人が多いのだ。泥で顔を汚していたガラスのような薄い青の大きな目を持った男の子は、きらきらとした銀白の髪と琥珀色の宝石のような瞳をもつ、とりわけ美しく凛々しい青年へと成長している。
(そういえば、リアンも銀髪だったな……)
ふと、昨日出会ったこれまた顔の良い男のことをふと思い出す。
この世界でもそれほど一般的な髪色ではないのに、立て続けにそんな二人にあった偶然に健介は不思議なものを感じた。
リアンと再び会うことは自分からあの屋敷を訪れ無い限りはあり得ない。もちろん、健介は訪ねていこうなどと思っていないので、もう二度と会わないだろう。お礼を伝えることもできずに帰ってきてしまったことだけが、申し訳なく悔やまれる。
だが、リアンもいなくなった塩顔のモブ社畜おじさんのことをいつまでも気に掛けるとは思えない。
(ありがとう、あなたのおかげで体調はばっちりです)
と、心の中で再度お礼をいって、忘れることにした。
そんなことより、目の前のウンシアだ。
もう二度と会うことはないだろうと思っていた少年は美しい青年の姿になって、再び目の前に現れた。まあ、別に自分に会いに来たとかでは無いと思うが……。
そんなウンシアは、なにやらゾイからいろいろ質問されている。
「探していたんです。もう一度会いたくて」
「あらぁ、そうなの?」
「だから、ここで働かせてもらえませんか?」
何やら変な言葉が聞こえた。
「この人にもう一度会うために、この人を守ってあげるために僕はここにきたんです。どんな仕事でもいいから、ここで雇ってください!」
そう言ってゾイに向かって深く頭を下げる。
「そう……どうしようかしら……」
「お願いします」
ウンシアは切実な声でゾイに懇願した。
「君はダイナミクスあるの?」
シュナの明るい声が突然横から入ってくる。
「シュナ、それは聞いちゃいけないことでしょ?」
「でも、重要なことでしょ? それに、どうせゾイは知ってるくせに」
健介はゾイの言葉でダイナミクスの有無を相手に聞くことは失礼なことだと知った。第二性というくらいなので、聞くことになにか問題があると思っていなかったため、ここで知ることができてよかったと思った。
で、ウンシアはダイナミクスを持っているのか──。持っているなら、Domなのか、Subなのか──。
窺うようにシュナとウンシアを見つめる。
「はい。Domです。ここでプレイヤーとして働くことも下男として、掃除や洗濯などして働くことも、どちらも出来ます!」
(Domかぁー)
そっかそっか、と健介は一人うなずいた。
見た目からしてDomっぽいとは思っていた。正直なところ、DomかSubかは見た目ではわからない。シュナは健介同様に小柄なSubではある。健介の魔力を見てくれたバーニーは身長がおそらく百八十センチほどの大柄な男性だ。だが、むっちりとした筋肉質で、大きな胸筋が特徴のSubだった。
「そうねぇ……でも、プレイヤーはいま足りてるのよ」
「でも、Domのプレイルームはケンに掃除をお願い出来ないよ。この子にお願いしようよ」
「うーん……。宿舎の部屋って空いていたかしら?」
「いいじゃん! ワイラーと一緒で」
酷い。シュナさん。自分ではなく別の人の部屋割りを勝手に、しかも同居で提案してる。
「そういうわけにはいかないのよっ」
自分勝手な言い分をするシュナの頭をゾイが小突く。
「ちぇっ」
シュナはふてくされたように頬を膨らませる。
「じゃあ、Domのプレイルームの掃除とかはどうするの?」
「シュナ、ちょっと待ちなさいな」
そう言って、ゾイは執務机まで歩いていき、引き出しから何か冊子の様なものを取り出す。それをぱらぱらと開いて、唇を人差し指で擦った。
しばらく冊子をページを行きつ戻りつしながら眺めてから、ゾイが口を開く。
「ふむ。わかったわ」
パタンと冊子を閉じて引き出しに再びしまうと、先ほどまでウンシアとともに座っていた応接セットのほうに歩いていって、ローテーブルに置かれた紙を持ち上げる。
「じゃあ、しばらくは見習いってことで、掃除洗濯とプレイヤーとしての準備をしてもらうわ。プレイヤーとして問題なくこなせそうだったら、新人プレイヤーとして雇うってことで……」
「ありがとうございます!」
ゾイが言い切るより前にウンシアが大きな声でお礼を述べた。
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