社畜モブの俺、異世界転移したら「Sub」っていわれたんだけど。え、「Sub」って何ですか?

鉾田 ほこ

文字の大きさ
27 / 179
1章

27 説明してくれる?

しおりを挟む
「二人とも、話し込んでいるところ悪いんだけど……、どっちか説明してくれる?」
 相変わらず頬に手をあてて、眉を寄せたゾイが首を傾げて尋ねる。
「あ、あの」
「失礼しました。おじさんとは違法奴隷商人に連れて行かれる時に会って、そこから一緒に助け出されました。僕はそのあと孤児院に入れられたので、おじさんとはそこで離れ離れになってしまって」
 どもる健介の代わりにウンシアがわかりやすく、簡潔にハキハキと答えた。そしてその目はキラキラと健介を見つめている。
 あんまりこちらを見つめないでほしい。
 この世界の人は元の世界でいうところの彫の深いコーカソイド系の顔だちをしている人が多い。いままでであった人たちは全員が濃い顔立ちをしている。もしかしたら、健介のような顔の凹凸おうとつが少ない人は見かけていなかった。もしかしたら、探したらいるのかもしれないが……。
 その中でもウンシアを初めとする獣人系の亜人種は顔立ちが整っている人が多いのだ。泥で顔を汚していたガラスのような薄い青の大きな目を持った男の子は、きらきらとした銀白の髪と琥珀色の宝石のような瞳をもつ、とりわけ美しく凛々しい青年へと成長している。
(そういえば、リアンも銀髪だったな……)
 ふと、昨日出会ったこれまた顔の良い男のことをふと思い出す。
 この世界でもそれほど一般的な髪色ではないのに、立て続けにそんな二人にあった偶然に健介は不思議なものを感じた。
 リアンと再び会うことは自分からあの屋敷を訪れ無い限りはあり得ない。もちろん、健介は訪ねていこうなどと思っていないので、もう二度と会わないだろう。お礼を伝えることもできずに帰ってきてしまったことだけが、申し訳なく悔やまれる。
 だが、リアンもいなくなった塩顔のモブ社畜おじさんのことをいつまでも気に掛けるとは思えない。
(ありがとう、あなたのおかげで体調はばっちりです)
 と、心の中で再度お礼をいって、忘れることにした。
 そんなことより、目の前のウンシアだ。
 もう二度と会うことはないだろうと思っていた少年は美しい青年の姿になって、再び目の前に現れた。まあ、別に自分に会いに来たとかでは無いと思うが……。

 そんなウンシアは、なにやらゾイからいろいろ質問されている。
「探していたんです。もう一度会いたくて」
「あらぁ、そうなの?」
「だから、ここで働かせてもらえませんか?」
 何やら変な言葉が聞こえた。
「この人にもう一度会うために、この人を守ってあげるために僕はここにきたんです。どんな仕事でもいいから、ここで雇ってください!」
 そう言ってゾイに向かって深く頭を下げる。
「そう……どうしようかしら……」
「お願いします」
 ウンシアは切実な声でゾイに懇願した。
「君はダイナミクスあるの?」
 シュナの明るい声が突然横から入ってくる。
「シュナ、それは聞いちゃいけないことでしょ?」
「でも、重要なことでしょ? それに、どうせゾイは知ってるくせに」
 健介はゾイの言葉でダイナミクスの有無を相手に聞くことは失礼なことだと知った。第二性というくらいなので、聞くことになにか問題があると思っていなかったため、ここで知ることができてよかったと思った。
 で、ウンシアはダイナミクスを持っているのか──。持っているなら、Domなのか、Subなのか──。
 窺うようにシュナとウンシアを見つめる。
「はい。Domです。ここでプレイヤーとして働くことも下男として、掃除や洗濯などして働くことも、どちらも出来ます!」
(Domかぁー)
 そっかそっか、と健介は一人うなずいた。
 見た目からしてDomっぽいとは思っていた。正直なところ、DomかSubかは見た目ではわからない。シュナは健介同様に小柄なSubではある。健介の魔力を見てくれたバーニーは身長がおそらく百八十センチほどの大柄な男性だ。だが、むっちりとした筋肉質で、大きな胸筋が特徴のSubだった。
「そうねぇ……でも、プレイヤーはいま足りてるのよ」
「でも、Domのプレイルームはケンに掃除をお願い出来ないよ。この子にお願いしようよ」
「うーん……。宿舎の部屋って空いていたかしら?」
「いいじゃん! ワイラーと一緒で」
 酷い。シュナさん。自分ではなく別の人の部屋割りを勝手に、しかも同居で提案してる。
「そういうわけにはいかないのよっ」
 自分勝手な言い分をするシュナの頭をゾイが小突く。
「ちぇっ」
 シュナはふてくされたように頬を膨らませる。
「じゃあ、Domのプレイルームの掃除とかはどうするの?」
「シュナ、ちょっと待ちなさいな」
 そう言って、ゾイは執務机まで歩いていき、引き出しから何か冊子の様なものを取り出す。それをぱらぱらと開いて、唇を人差し指で擦った。
 しばらく冊子をページを行きつ戻りつしながら眺めてから、ゾイが口を開く。
「ふむ。わかったわ」
 パタンと冊子を閉じて引き出しに再びしまうと、先ほどまでウンシアとともに座っていた応接セットのほうに歩いていって、ローテーブルに置かれた紙を持ち上げる。
「じゃあ、しばらくは見習いってことで、掃除洗濯とプレイヤーとしての準備をしてもらうわ。プレイヤーとして問題なくこなせそうだったら、新人プレイヤーとして雇うってことで……」
「ありがとうございます!」
 ゾイが言い切るより前にウンシアが大きな声でお礼を述べた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

バーベキュー合コンに雑用係で呼ばれた平凡が一番人気のイケメンにお持ち帰りされる話

ゆなな
BL
Xに掲載していたものに加筆修正したものになります。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

僕を嫌っていた幼馴染みが記憶喪失になったら溺愛してきた

無月陸兎
BL
魔力も顔も平凡な僕には、多才で美形な幼馴染みのユーリがいる。昔は仲が良かったものの、今は嫌われていた。そんな彼が授業中の事故でここ十年分の記憶を失い、僕を好きだと言ってきて──。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

処理中です...